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57.熱風
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アントワネットが魔法を使えるというのなら、それを活かさない手はない。
早速レーズンに向いている葡萄を選ぶことに。
すると二種類ほど良さそうなものがあった。
巨峰のようなタイプと、マスカットのような翡翠色のタイプ。
どちらも皮が薄くて、果実の中に種が入っていない。味は前者は甘みと酸味のバランスがよくて、後者はほんのりと甘い感じ。味の区別化ができそうだ。
「では、アントワネット様。お願いします」
「……はい」
作業場は祈りの間となった。アントワネットが魔法を使うところを見てみたいということで、修道女が大集合したのだ。何かの見世物のようになっている。
皆に囲まれて少し気まずそうにしつつ、アントワネットは耐熱皿に載せた葡萄に手を翳しながら瞼を閉じた。集中しているのだろうか。一分経たないしないうちに、アントワネットの手が赤と緑と、二色の光を帯びた。
その途端、掌から熱い風が流れ出した。
「すごい、本当に魔法だわ……」
「まさかアントワネット様が魔法を使えるなんて……」
「髪を乾かすのにすごい便利じゃない……」
修道女たちもびっくりしている。
皆、アントワネットが魔法を使えることを知らなかったらしい。
そして急速に萎びていく葡萄たち。
水分が抜けて小さくなるにつれて、甘い香りが漂い始めていた。修道女の中からも美味しそう、いい香りという声が上がる。
「アントワネット様、この辺りでいいと思います」
あんまりやりすぎると、果肉が駄目になってしまうので一旦止めてみよう。
丸々と太っていた葡萄は、短時間で水分を奪い取られてカラッカラになっている。マスカットっぽいものも変色して、綺麗な翡翠色から薄茶色にカラーチェンジを果たした。
亭主関白を掲げて偉そうにしていたのに、愛想を尽かした奥さんに逃げられて以降、生気が抜けてヨボヨボになった近所のじいさんを思い出す。
「リ、リグレット様、食べてみてください」
緊張した面持ちでアントワネットに促されて、いざ実食。
「うっま!」
美味しかった。
巨峰タイプの方は濃い甘みの中にも酸っぱさがあって、マスカットタイプはすっきりとした甘さがある。
水分の抜け具合もベストで、ねっとりとした食感だ。
もう一粒ずつ……と思って手を伸ばそうとして、修道女たちの視線がレーズンに注がれていることに気付く。
「……皆様も召し上がってみますか?」
私が聞いてみると、皆仲良く首を縦に振った。
早速レーズンに向いている葡萄を選ぶことに。
すると二種類ほど良さそうなものがあった。
巨峰のようなタイプと、マスカットのような翡翠色のタイプ。
どちらも皮が薄くて、果実の中に種が入っていない。味は前者は甘みと酸味のバランスがよくて、後者はほんのりと甘い感じ。味の区別化ができそうだ。
「では、アントワネット様。お願いします」
「……はい」
作業場は祈りの間となった。アントワネットが魔法を使うところを見てみたいということで、修道女が大集合したのだ。何かの見世物のようになっている。
皆に囲まれて少し気まずそうにしつつ、アントワネットは耐熱皿に載せた葡萄に手を翳しながら瞼を閉じた。集中しているのだろうか。一分経たないしないうちに、アントワネットの手が赤と緑と、二色の光を帯びた。
その途端、掌から熱い風が流れ出した。
「すごい、本当に魔法だわ……」
「まさかアントワネット様が魔法を使えるなんて……」
「髪を乾かすのにすごい便利じゃない……」
修道女たちもびっくりしている。
皆、アントワネットが魔法を使えることを知らなかったらしい。
そして急速に萎びていく葡萄たち。
水分が抜けて小さくなるにつれて、甘い香りが漂い始めていた。修道女の中からも美味しそう、いい香りという声が上がる。
「アントワネット様、この辺りでいいと思います」
あんまりやりすぎると、果肉が駄目になってしまうので一旦止めてみよう。
丸々と太っていた葡萄は、短時間で水分を奪い取られてカラッカラになっている。マスカットっぽいものも変色して、綺麗な翡翠色から薄茶色にカラーチェンジを果たした。
亭主関白を掲げて偉そうにしていたのに、愛想を尽かした奥さんに逃げられて以降、生気が抜けてヨボヨボになった近所のじいさんを思い出す。
「リ、リグレット様、食べてみてください」
緊張した面持ちでアントワネットに促されて、いざ実食。
「うっま!」
美味しかった。
巨峰タイプの方は濃い甘みの中にも酸っぱさがあって、マスカットタイプはすっきりとした甘さがある。
水分の抜け具合もベストで、ねっとりとした食感だ。
もう一粒ずつ……と思って手を伸ばそうとして、修道女たちの視線がレーズンに注がれていることに気付く。
「……皆様も召し上がってみますか?」
私が聞いてみると、皆仲良く首を縦に振った。
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