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55.葡萄
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刺繍細工……は駄目だなと、すぐに結論を出した。
クラリス以外にまともに針仕事ができる修道女が多分いない。私だって裁縫関係は苦手だ。血染めの布が量産されてしまう。
今から練習をしていたら間に合わない。
そうなると、やっぱり食べ物系でいくしかないか。
それもナヴィア修道院で多めに収穫できるものを使ったお菓子が理想的だろう。
「……ということですけれど、どうでしょう」
畑仕事の休憩時間、私は早速三人娘に相談してみることにした。
「わぁっ、お菓子いっぱい作りましょう!」と嬉しそうなクラリス。自分も食べる気満々と見た。
「菓子作りなら、きちんと作り方と分量さえ守れば私たちでもどうにか作れそうですね」と冷静なメロディ。そう、作るのは私たちなので、ものすごく凝ったものは作れない。
さてアントワネットはと言えば。
「……今年はナヴィア修道院もバザーに参加するのですか」
バザーへの参加そのものにあまり積極的ではないご様子。意外な反応を見せる彼女に、私だけではなくクラリスも首を傾げた。
「アントワネット様はバザーが嫌なのですか?」
「い、いえ。ですけれど、こういうことは初めてなので緊張してしまって」
そう答えたアントワネットの笑みはどうもぎこちなく見える。
まあ、クラリスとメロディ以外の修道女もバザーの参加にノリノリみたいだけれど、「あんまり……」という子もいると思う。
文化祭に乗り気じゃなかった私のようなものだ。
「しかし、ナヴィア修道院で採れるものと言えば、これくらいです。あまり菓子の材料には向いていないような気がします」
アントワネットを気遣ってか、メロディが別の話題を持ち出した。
彼女の視線の先には、籠に山ほど積まれた葡萄。
うちの修道院では葡萄が多めに栽培されている。
しかも品種も多い。七種類くらいか。我が家でも葡萄作りまではしていなかったので、新鮮さがある。ご近所の農家が趣味がてら栽培していて、我が家にたくさんおすそ分けしてもらっていたけれど。
ただ葡萄かぁ……と頭を抱えてしまう。
これが林檎とかオレンジとかだったら、色々レシピが思いつくものだけど葡萄って案外難しい。
生で食べるのが一番美味しいのではないだろうか。そんなものを無理矢理お菓子に加工してしまうのは勿体ない。
どうしよう。
「無難にタルトとかなぁ……上にばーっと敷き詰めるやつ」
「お待ちください、リグレット様。バザーで出される菓子は、保存しづらいものは推奨されていないと聞きました」
「それはそうですね……」
タルトも駄目となると、選択肢も結構狭まってしまう。
「そもそも葡萄の加工品と言えば、すぐに思いつくのってワインかレーズンだからな……」
「「「え?」」」
私の独り言を聞いた三人娘がきょとんと目を丸くする。
あれ、私変なことを言ってしまった?
私も思わず固まっていると、クラリスにこんなことを質問された。
「リグレット様、『レーズン』って何ですか?」
「え? 葡萄を干したものですけれど……」
「「「葡萄を干す!?」」」
何だ何だ。すごくびっくりされてしまった。
クラリス以外にまともに針仕事ができる修道女が多分いない。私だって裁縫関係は苦手だ。血染めの布が量産されてしまう。
今から練習をしていたら間に合わない。
そうなると、やっぱり食べ物系でいくしかないか。
それもナヴィア修道院で多めに収穫できるものを使ったお菓子が理想的だろう。
「……ということですけれど、どうでしょう」
畑仕事の休憩時間、私は早速三人娘に相談してみることにした。
「わぁっ、お菓子いっぱい作りましょう!」と嬉しそうなクラリス。自分も食べる気満々と見た。
「菓子作りなら、きちんと作り方と分量さえ守れば私たちでもどうにか作れそうですね」と冷静なメロディ。そう、作るのは私たちなので、ものすごく凝ったものは作れない。
さてアントワネットはと言えば。
「……今年はナヴィア修道院もバザーに参加するのですか」
バザーへの参加そのものにあまり積極的ではないご様子。意外な反応を見せる彼女に、私だけではなくクラリスも首を傾げた。
「アントワネット様はバザーが嫌なのですか?」
「い、いえ。ですけれど、こういうことは初めてなので緊張してしまって」
そう答えたアントワネットの笑みはどうもぎこちなく見える。
まあ、クラリスとメロディ以外の修道女もバザーの参加にノリノリみたいだけれど、「あんまり……」という子もいると思う。
文化祭に乗り気じゃなかった私のようなものだ。
「しかし、ナヴィア修道院で採れるものと言えば、これくらいです。あまり菓子の材料には向いていないような気がします」
アントワネットを気遣ってか、メロディが別の話題を持ち出した。
彼女の視線の先には、籠に山ほど積まれた葡萄。
うちの修道院では葡萄が多めに栽培されている。
しかも品種も多い。七種類くらいか。我が家でも葡萄作りまではしていなかったので、新鮮さがある。ご近所の農家が趣味がてら栽培していて、我が家にたくさんおすそ分けしてもらっていたけれど。
ただ葡萄かぁ……と頭を抱えてしまう。
これが林檎とかオレンジとかだったら、色々レシピが思いつくものだけど葡萄って案外難しい。
生で食べるのが一番美味しいのではないだろうか。そんなものを無理矢理お菓子に加工してしまうのは勿体ない。
どうしよう。
「無難にタルトとかなぁ……上にばーっと敷き詰めるやつ」
「お待ちください、リグレット様。バザーで出される菓子は、保存しづらいものは推奨されていないと聞きました」
「それはそうですね……」
タルトも駄目となると、選択肢も結構狭まってしまう。
「そもそも葡萄の加工品と言えば、すぐに思いつくのってワインかレーズンだからな……」
「「「え?」」」
私の独り言を聞いた三人娘がきょとんと目を丸くする。
あれ、私変なことを言ってしまった?
私も思わず固まっていると、クラリスにこんなことを質問された。
「リグレット様、『レーズン』って何ですか?」
「え? 葡萄を干したものですけれど……」
「「「葡萄を干す!?」」」
何だ何だ。すごくびっくりされてしまった。
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