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54.ならではの
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国境付近にあるエレナック村。かつて魔物の大群がこの国に押し寄せた時、この村が防衛ラインだったらしい。
で、見事魔物の進撃を防ぎ切った記念日に、毎年バザーを開催するのだとか。
ゲーム本編ではそんな話出て来なかったので初耳だ。魔物という化物が存在するのは知っていたけれど、ゲームの中では比較的空気な扱いだったと思う。
人間の愛憎パワーの方が数百倍ヤバすぎて、「はあ……魔物すか。それで?」な感じだったのだ。
「バザーには国中の修道院も参加するの。ナヴィア修道院は今まで不参加だったそうだけれど」
「え? 何でうちだけ?」
「アデーレ元院長があれこれ理由をつけて断っていたみたいねぇ……」
「ああ……」
そういう慈善活動とか嫌いそうだしな、あの鞭おばさん。と納得してしまった。
それで今回初参加となると。いい傾向ではないだろうか。私は大賛成である。
ただまあ、一つ疑問がありましてね、
「ですが、バザーと言っても私たちは何を出すんですか?」
「そこなのよ~」
ふぅ、と院長は溜め息をついた。
「私の国では修道院がバザーに参加するって風習がなかったから、私も何をすればいいのか分からなくて」
「他の修道院ではどんなものを出しているんですか?」
「手作りのお菓子とか刺繍細工だったかしらねぇ……それもその修道院らしさのあるものを出品するみたい」
「はぁ」
修道院らしさって何だ、らしさって。神様クッキーとかそういうものでも作っているのか。
「例えばヤレイユ修道院はナッツ類が多く採れるから、ナッツをたっぷり使ったフロランタン。リヨネール修道院にはスリジエの木がたくさん植えられているから、スリジエをイメージした刺繍細工ね」
「風呂……ランタン?」
私の脳内で湯船に浸かったランタンが右から左へ、どんぶらこどんぶらこと流れていく。
けれど何となくリグレットの記憶の中にそんな名前があったような。
「フロランタンというのはキャラメリぜ……キャラメルを纏わせたナッツを載せたお菓子ね。カリカリサクサクしていてとっても美味しいのよ。……食べたことない?」
「いえ……」
美味しそうだ。けれど、私としても、リグレットとしても、そんなの食べた記憶がなかった。
リグレットの場合、食べたくても食べられないとかではなくて、単純に甘い食べ物が苦手だったらしい。
あの家で出されるお菓子は砂糖やら蜂蜜をドバドバ入れているせいで、猛烈に甘かったっぽいのだ。
まあ、それだけ砂糖を使うことができる=金持ちであることをアピールする目的もあるそうだけれど。
しかし他の修道院がそんな感じなら、うちもナヴィア修道院ならでは! というものを出すべきなのかもしれない。
「バザーはいつなんですか?」
「三週間後なの。時間はまだあるのだけれど、いい案が浮かばなくって。だから、ここはシスターリグレットの力を借りようと思ったの」
「うーーーーーん」
院長の期待を裏切るようで申し訳ないのだが、私もこういうイベント系でアイディアを出すのは苦手なのだ。
文化祭の出し物を決める時もぼーっとしていたらいつの間にか演劇をすることになっていて、私は体を引っくり返されてじたばたともがくだけの亀を演じた。それによって首を痛めた。
そんな私にアドバイザーが務まるはずがない。多分、他の修道女にお願いした方がいいと思うのだけれど、
「ちょっと考えてみます……」
こういうことが得意そうな子がパッと浮かばないので、やっぱり私が何とかするしかないと思う。
で、見事魔物の進撃を防ぎ切った記念日に、毎年バザーを開催するのだとか。
ゲーム本編ではそんな話出て来なかったので初耳だ。魔物という化物が存在するのは知っていたけれど、ゲームの中では比較的空気な扱いだったと思う。
人間の愛憎パワーの方が数百倍ヤバすぎて、「はあ……魔物すか。それで?」な感じだったのだ。
「バザーには国中の修道院も参加するの。ナヴィア修道院は今まで不参加だったそうだけれど」
「え? 何でうちだけ?」
「アデーレ元院長があれこれ理由をつけて断っていたみたいねぇ……」
「ああ……」
そういう慈善活動とか嫌いそうだしな、あの鞭おばさん。と納得してしまった。
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修道院らしさって何だ、らしさって。神様クッキーとかそういうものでも作っているのか。
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「風呂……ランタン?」
私の脳内で湯船に浸かったランタンが右から左へ、どんぶらこどんぶらこと流れていく。
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「フロランタンというのはキャラメリぜ……キャラメルを纏わせたナッツを載せたお菓子ね。カリカリサクサクしていてとっても美味しいのよ。……食べたことない?」
「いえ……」
美味しそうだ。けれど、私としても、リグレットとしても、そんなの食べた記憶がなかった。
リグレットの場合、食べたくても食べられないとかではなくて、単純に甘い食べ物が苦手だったらしい。
あの家で出されるお菓子は砂糖やら蜂蜜をドバドバ入れているせいで、猛烈に甘かったっぽいのだ。
まあ、それだけ砂糖を使うことができる=金持ちであることをアピールする目的もあるそうだけれど。
しかし他の修道院がそんな感じなら、うちもナヴィア修道院ならでは! というものを出すべきなのかもしれない。
「バザーはいつなんですか?」
「三週間後なの。時間はまだあるのだけれど、いい案が浮かばなくって。だから、ここはシスターリグレットの力を借りようと思ったの」
「うーーーーーん」
院長の期待を裏切るようで申し訳ないのだが、私もこういうイベント系でアイディアを出すのは苦手なのだ。
文化祭の出し物を決める時もぼーっとしていたらいつの間にか演劇をすることになっていて、私は体を引っくり返されてじたばたともがくだけの亀を演じた。それによって首を痛めた。
そんな私にアドバイザーが務まるはずがない。多分、他の修道女にお願いした方がいいと思うのだけれど、
「ちょっと考えてみます……」
こういうことが得意そうな子がパッと浮かばないので、やっぱり私が何とかするしかないと思う。
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