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44.ソラウ公爵家
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馬車を使って超特急で向かったのは、ソラウ公爵家の屋敷だ。
こっちもグライン邸に負けず劣らずの豪華さ。その屋敷の前では数人ほど集まっていた。
その中にはレイスの姿もあるのだが、これから帰ろうとしている雰囲気がある。
食事会、普通に何事もなく終わって今から解散……?
まあ私は無駄足になってしまったけれど、無事に終了したならそれでいいかと、ホッと胸を撫で下ろしている時だった。
「レイス様!」
見覚えのある人物が屋敷から出てきて、レイスを引き留めた。
パーティー会場でレイスのベル欲しさに、私から強奪しようとした少女だ。もしやフラウ家のご令嬢?
その手には、ピンクのリボンで可愛くラッピングされた小袋があった。
「先程は大変失礼いたしました。……もう、二度とレイス様には近づきません。ですが、せめてこのクッキーを受け取って、一枚だけでもいいので今この場で食べて欲しいんです! そしたら、もうあなたのことは諦めますから……!」
今にも泣きそうな顔の少女を前にして、レイスは真顔だった。彼女の言葉が本心であるか探っていたのか、やがて笑みを見せながら、
「……その言葉、信じてみましょうか」
と袋を受け取って、しゅるりとリボンを解いた。それを見た少女も嬉しそうにはにかむ。
「ありがとうございます。そのクッキー、サセラン粉を練り込んでいて、とってもいい風味なんですよ」
何だと!?
「そうですか。それは楽しみですね」
待て待て。
私は赤いマントを見せられた闘牛のように、袋からクッキーを取り出そうとするレイスへと突進していった。
「ストップ!!」
そしてレイスから、クッキーの袋を奪い取ることに成功した。
こっちもグライン邸に負けず劣らずの豪華さ。その屋敷の前では数人ほど集まっていた。
その中にはレイスの姿もあるのだが、これから帰ろうとしている雰囲気がある。
食事会、普通に何事もなく終わって今から解散……?
まあ私は無駄足になってしまったけれど、無事に終了したならそれでいいかと、ホッと胸を撫で下ろしている時だった。
「レイス様!」
見覚えのある人物が屋敷から出てきて、レイスを引き留めた。
パーティー会場でレイスのベル欲しさに、私から強奪しようとした少女だ。もしやフラウ家のご令嬢?
その手には、ピンクのリボンで可愛くラッピングされた小袋があった。
「先程は大変失礼いたしました。……もう、二度とレイス様には近づきません。ですが、せめてこのクッキーを受け取って、一枚だけでもいいので今この場で食べて欲しいんです! そしたら、もうあなたのことは諦めますから……!」
今にも泣きそうな顔の少女を前にして、レイスは真顔だった。彼女の言葉が本心であるか探っていたのか、やがて笑みを見せながら、
「……その言葉、信じてみましょうか」
と袋を受け取って、しゅるりとリボンを解いた。それを見た少女も嬉しそうにはにかむ。
「ありがとうございます。そのクッキー、サセラン粉を練り込んでいて、とってもいい風味なんですよ」
何だと!?
「そうですか。それは楽しみですね」
待て待て。
私は赤いマントを見せられた闘牛のように、袋からクッキーを取り出そうとするレイスへと突進していった。
「ストップ!!」
そしてレイスから、クッキーの袋を奪い取ることに成功した。
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