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41.好き嫌い病

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 私が訝しむ中、レイモンドはリーゼと話をするために医者の輪から離れていった。
 まあいいか。リーゼの割り込みで会話が止まったこのすきに質問しよう。

「あなた方はお医者様ですか? 今お話されていた好き嫌い病について、詳しくお聞きしたいのですけれど」
「ああ、構いませんよ。……好き嫌い病とは精神病の一種なんです」

 医者の一人が嘆息混じりに語り始める。

「苦手な食べ物を食べると、心に大きな負担が生じて様々な身体的症状を引き起こすんです。呼吸障害や発疹など……場合によっては死に至るケースもあります。その食べ物を食べ続けて苦手意識を克服するしか治療法はないのですが、完治する者は少なくて。皆、それを食べない道を選ぶんです」
「幼稚な病だ。いや、こんなもの病ですらない。嫌いな食べ物を食べたくらいで異常をきたすなど、繊細にも程がある」
「子供の頃はまだいい。だが、大人になってまで食べる度に症状が出るなんて、どれだけ親に甘やかされてきたんだか」

 彼らの言葉に違和感を覚える。
 精神の病……?

「あの、それはもしかすると……」

 私が口を開こうとすると、後ろから肩を叩かれた。

「君たちが二度も騒ぎを起こしたと聞いた。これ以上、パーティーの和を乱さないよう、早急に出て行って欲しいのだが」

 テオドールだった。好きで騒ぎを起こしたわけではないのだが、悪目立ちしたことは確かなので反論はできない。
 リーゼの奇行が気にはなるが、テオドールと揉めて三度目の騒ぎを起こさないうちに撤退しよう。

「レイス様、もう今晩はもう満足しましたので、帰りましょう」
「……よろしいのですか? これから運ばれてくる料理もあるそうですが」
「ええ。テオドール様に心労をかけたくありませんので。お騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした」

 テオドールに一礼してから食堂、ホールを抜ける。
 その最中、樹液に群がる虫の如く王太子ジュリアンに集まる令嬢たちを見かけた。
 流石は作中一のモテ男、とぼんやり眺めていると、

「王太子殿下! 私のベルも受け取ってくださぁい!」

 見覚えのあるピンク頭が、ジュリアンに自分のベルを渡そうとする瞬間を見てしまった。
 ああヒロインよ、一体何人とフラグ立てる気だ。ゲームでは一人にしか選択できなかったはずだというのに。
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