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40.立食

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 リーゼの動きを怪訝に思いながらも、レイスと共にホールと隣接している食堂に向かう。そこでは白いクロスが敷かれたテーブルの上に、様々な料理が並べられていた。
 隅には小皿とカトラリーが用意されている。どうやら立食式ビュッフェのようだ。
 修学旅行でホテルに泊まった時以来の食事スタイルに、テンションも上がるし腹も減る。

 一番のお目当ては肉料理だが、農家として野菜も食べておきたい。魚料理も美味しそうだし、パンも柔らかそうだ。とりあえず全部食べたい。
 欲望の赴くまま皿に料理を載せていると、その様子を見ていたレイスが口を開いた。

「全種類制覇するおつもりですか?」
「こんな機会、当分なさそうなので……レイス様こそ、それで足りるんですか?」

 レイスの皿には葉野菜とフルーツだけが盛られていた。ウサギか。

「今夜はこのパーティーの後に公爵家同士での食事会があるので、お腹を空かせておかなければならないんです」

 羨ましいような、大変なような。
 レイスの胃袋を案じながら、盛りつけた料理を食べていく。分かりきっていたけれど全部美味い。今度食事係になった時にでも再現してみるかと、味を記憶に焼きつける。
 すると、隣にいたグループが深刻な表情で話し込んでいた。

「好き嫌い病ですか……俺もそのような患者を見たことがあります」

 そのうちの一人は軍医レイモンドだった。
 いや待て、何だ好き嫌い病って子供の絵本に出てくるような病名は?

「ううむ、レイモンド様も経験がありますか。私の患者は卵を食べた子供でした。何度食べても克服せず、途中で断念してしまいました」
「俺の患者は果実でした。治そうと努力していましたが、呼吸困難を起こして命を落としています」
「まったく……医者を困らせる患者たちだな」

 レイモンド以外も医者のようだ。皆、パーティーの場なのに眉間に皺を寄せている。
 もう少し詳しい話が聞けないかと耳をそばだてていると、

「レイモンド様……少しだけお時間よろしいでしょうか?」

 リーゼがレイモンドに声をかけてきた。
 WHY? 騎士団長はどうした……。
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