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38.誓約のベル
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レイスの言葉に困惑しつつ、誓約のベルがどういうものか思い返す。
魔力を練って作り上げたアイテムで、この国の人間であれば魔法が使えなくても作ることができる。
さらにレイスのように魔法が使える者が作ったベルには、特殊な力が宿っている。
レイス作なら、ベルのある場所に瞬時に移動できるといった感じらしい。
で、これは全てのベル共通なのだが、自分の魔力を辿ってベルが今どこにあるのか、ある程度なら探知も可能。
レイスが言い当てたのもこれのおかげだ。
ゲーム内だと結構重要なアイテムと見せかけて、この聖鐘祭後は存在が抹消してしまう。シナリオにベルを絡ませるのが面倒になったのだろう。なので私も、完全に忘却の彼方に追いやられていた。
しかもお守り代わりに持って来て、レイスを喜ばせる結果となってしまった。恨むぞ、GPS機能。
「あの……深い意味があって持参したわけではないので……」
「ええ、分かっていますよ」
その笑顔は分かっていないだろうに。レイスのバックに大輪の花が咲いている幻覚が見える。
「実のところ、あなたに好意を寄せているのは本当ですが、結ばれたいとは毛頭考えていませんし」
「……え!? あ、いえ、私は修道女ですからね」
「それもありますが、あなたを早々と未亡人にしてしまうかもしれないですから」
「未亡人?」
まさか自分の未来を予知している? と一瞬ドキッとしてしまった。
レイスはそんな私と視線を合わせて、
「二度も毒殺されかかっていますからね。三度目も近い将来訪れるかもしれない」
「……それは」
「あ、少しここで待っていてくれますか? 父親のご友人がいらっしゃるので、ご挨拶に行ってきます」
「は、はい」
私が返事すると、「では、失礼」と行ってしまう。
……私より年下なのに、自分が死ぬのを当たり前のように受け入れている。最初からそうじゃなくて、誰に狙われているか分からず、死の恐怖に怯えていた時期もあったろうに。
溜め息をついていると、ホールの入口から甲高い声がした。
「うわぁぁ……! すごい、すごい! お城の中ってこんなに広いんだぁ……!」
ショートボブにしたピンク色の髪と、若葉色の大きな瞳。
可愛らしさをアピールするようなスカート丈が膝の辺りまでしかないドレス。
興奮で頬を紅潮させながら、パーティー会場を見渡す少女を私はよく知っている。
このゲームのヒロイン、リーゼ(デフォルトネーム)。
ついに姿を見せた主役に、私の掌に汗が滲む。
何だ、あのいかにもぶりっ子そうな小娘……。
ゲームをプレイしていた時は可愛い女の子だなぁと思っていたけれど、第三者の目線から見るとこうも印象変わるとは。
呆れ半分感心半分でリーゼの動向を見守る。
ゲーム通りであれば、攻略キャラの誰かと会話をしてその流れで誓約のベルを渡すのだ。
平民のリーゼは勉強不足でベルについての知識が足りない。そのため友人に「制約のベルは仲良くなりたい人に渡すんだよ」とアドバイスされ、仲良くなる=友達になることだと勘違いしたためである。
さて誰に話しかける……? と観察していると、リーゼはホールを見回してからテオドールの下に向かった。
まあ、リーゼをパーティーに招待したのは彼なので自然な流れだろう。
やはりテオドールルートになるのか。
そうすると、山火事ならぬ国火事フラグが立ってしまうと冷や汗を掻いていると、
「あの……リグレット様、ですよね……?」
大人しそうな少女に声をかけられた。
「そうですが、私に何かご用ですか?」
「さっきレイス様とお話しているのが聞こえてきたんですけれど、あの方からベルをいただいたんですよね?」
「まあ、友人の証のような形ではありますが」
「で、でしたら……そのベル、私に譲ってもらえますか!?」
深々と頭を下げながら両手を突き出して来た。
既にもらえる気でいる少女に、思わず引いてしまった。
魔力を練って作り上げたアイテムで、この国の人間であれば魔法が使えなくても作ることができる。
さらにレイスのように魔法が使える者が作ったベルには、特殊な力が宿っている。
レイス作なら、ベルのある場所に瞬時に移動できるといった感じらしい。
で、これは全てのベル共通なのだが、自分の魔力を辿ってベルが今どこにあるのか、ある程度なら探知も可能。
レイスが言い当てたのもこれのおかげだ。
ゲーム内だと結構重要なアイテムと見せかけて、この聖鐘祭後は存在が抹消してしまう。シナリオにベルを絡ませるのが面倒になったのだろう。なので私も、完全に忘却の彼方に追いやられていた。
しかもお守り代わりに持って来て、レイスを喜ばせる結果となってしまった。恨むぞ、GPS機能。
「あの……深い意味があって持参したわけではないので……」
「ええ、分かっていますよ」
その笑顔は分かっていないだろうに。レイスのバックに大輪の花が咲いている幻覚が見える。
「実のところ、あなたに好意を寄せているのは本当ですが、結ばれたいとは毛頭考えていませんし」
「……え!? あ、いえ、私は修道女ですからね」
「それもありますが、あなたを早々と未亡人にしてしまうかもしれないですから」
「未亡人?」
まさか自分の未来を予知している? と一瞬ドキッとしてしまった。
レイスはそんな私と視線を合わせて、
「二度も毒殺されかかっていますからね。三度目も近い将来訪れるかもしれない」
「……それは」
「あ、少しここで待っていてくれますか? 父親のご友人がいらっしゃるので、ご挨拶に行ってきます」
「は、はい」
私が返事すると、「では、失礼」と行ってしまう。
……私より年下なのに、自分が死ぬのを当たり前のように受け入れている。最初からそうじゃなくて、誰に狙われているか分からず、死の恐怖に怯えていた時期もあったろうに。
溜め息をついていると、ホールの入口から甲高い声がした。
「うわぁぁ……! すごい、すごい! お城の中ってこんなに広いんだぁ……!」
ショートボブにしたピンク色の髪と、若葉色の大きな瞳。
可愛らしさをアピールするようなスカート丈が膝の辺りまでしかないドレス。
興奮で頬を紅潮させながら、パーティー会場を見渡す少女を私はよく知っている。
このゲームのヒロイン、リーゼ(デフォルトネーム)。
ついに姿を見せた主役に、私の掌に汗が滲む。
何だ、あのいかにもぶりっ子そうな小娘……。
ゲームをプレイしていた時は可愛い女の子だなぁと思っていたけれど、第三者の目線から見るとこうも印象変わるとは。
呆れ半分感心半分でリーゼの動向を見守る。
ゲーム通りであれば、攻略キャラの誰かと会話をしてその流れで誓約のベルを渡すのだ。
平民のリーゼは勉強不足でベルについての知識が足りない。そのため友人に「制約のベルは仲良くなりたい人に渡すんだよ」とアドバイスされ、仲良くなる=友達になることだと勘違いしたためである。
さて誰に話しかける……? と観察していると、リーゼはホールを見回してからテオドールの下に向かった。
まあ、リーゼをパーティーに招待したのは彼なので自然な流れだろう。
やはりテオドールルートになるのか。
そうすると、山火事ならぬ国火事フラグが立ってしまうと冷や汗を掻いていると、
「あの……リグレット様、ですよね……?」
大人しそうな少女に声をかけられた。
「そうですが、私に何かご用ですか?」
「さっきレイス様とお話しているのが聞こえてきたんですけれど、あの方からベルをいただいたんですよね?」
「まあ、友人の証のような形ではありますが」
「で、でしたら……そのベル、私に譲ってもらえますか!?」
深々と頭を下げながら両手を突き出して来た。
既にもらえる気でいる少女に、思わず引いてしまった。
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