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30.ドレス

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 聖鐘祭への参加を決めたはいいが、一つの問題がある。
 ずばりドレスがない。修道院に入る時に来ていたドレスは捨ててしまい、今持っているのはモノクロカラーの修道服数着と、畑仕事用の作業着、それと寝間着くらいである。

 ただまあ修道女なんだから、修道服でパーティーに参加しても何らおかしくはない。毎日洗濯はしているし、汚れやほつれもないので。
 なので私はこのままでいいと思っていたのだが、そうは問屋が卸さない。いや仲間が許してくれない。

「そ、その格好で参加!? いけませんよ、リグレット様! せっかくパーティーにご参加されるのですから、お洒落をなさってください!」

 私とレイスが何かを話していたのか、報告を待ちわびていた修道女たちに話すと、ぎょっとした顔をされた。目を大きく見開いたアントワネットに肩を揺さぶられながら叱られてしまった。
 最初は「いいなぁ」とか「私もまた参加したいですわ~」と羨望の声も上がっていたものの、私がこの格好で行くと発言した途端に流れが変わったのである。

「……レイス子息は何と仰っているのですか?」

 困惑した様子でメロディが私に聞く。心なしか顔色が悪い。

「『ドレスや装飾品の手配は僕に任せてください。カタログをお渡ししますので、好みのドレスを選んでいただければ』と」
「でしたら、その通りにすればよろしいかと……」
「でもたった一回きりしか着ないドレスのために、お金をかけるのはちょっと」

 自分で買うとかなら全然いいのだが、金を払うのは公爵家だ。
 レイスに渡されたカタログには、お洒落なドレスのイラストがたくさん載っており、その値段は六桁超えばかり。
 何かこう、レンタルみたいなものはやっていないだろうか……。そうすれば買うよりは安いはず。
 そう思っていた時だった。

「あ、あの~。つまりドレスにあまりお金をかけなければいいんですよねぇ?」

 挙手しながら恐る恐るといった様子で聞いて来たのはクラリスだった。
 私が頷くと、「でしたら!」と両手をぐっと握り締めて、

「リグレット様のドレス、私に作らせてください! それなら結構安く済みますので!」

 ええ!?
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