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29.聖鐘祭
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「申し訳ありません、父の言うお礼とは、リグレット様の『名誉回復』だったようです」
「やっぱりそうでしたか……」
数時間後、私が食事係でもないのにレイスがやって来た。しかも今まで見たことがないくらい、気まずそうな顔をしていた。
流石、公爵。私たちにできないことをやってのける。そこに痺れはするが、憧れない。
「お気持ちはありがたいですけれど、私は今のところ修道院から出るつもりはありませんので、あまり意味がないといいますか……」
「……それはたとえ一時的なものであってもですか?」
「はい?」
何が言いたいのだ、この子は。
「こうなってしまったのは予想外ですが、せっかくなので。リグレット様、久しぶりに外の世界に出るつもりはありませんか?」
真面目な顔でそんなことを言い出したレイスに身構える。
「聖鐘祭。リグレット様も参加したことがあるでしょう? 建国日を記念して、城のホールで二日間開催されるパーティーのことです。僕の協力者であり、修道院と仲間たちを救った救世主として、あなたの参加を希望する声がちらほらと挙がっていたんです」
聖鐘祭。ゲーム序盤でも発生するイベントの一つだ。
まあ舞踏会とあまり変わらないのだが、攻略キャラの好感度を上げるための、大事な作業があったはず。
それに聖鐘祭が始まるということは、ゲーム本編の世界軸に突入してある程度経っているようだ。
ただ、問題が一つ。
「お誘いのお言葉は嬉しいですけれど……聖鐘祭は貴族しか参加できません。世俗から離れた私が参加するというのは……」
「僕の友人として参加すればいいんです」
「そんなこと可能ですか?」
「公爵子息の特権を使いますので。それに父上も大歓迎だと思いますよ。どうもあなたのことを随分と気に入っているようなので」
そこまで言われてしまうと、何か行きたくなってきた。
それにチャンスかもしれない。聖鐘祭にはヒロインも光魔法を使えるという理由で参加を許される。
更には攻略キャラも全員参加。彼らの一人と仲良くなった場合、後にそのキャラの個別ルートに入る可能性が非常に高くなるのだ。
その相手が誰か分かれば、この先の展開がある程度分かるかもしれない。
「……やっぱり参加してみます。たまには新聞以外で世の中の動きを知ることも大事でしょうし」
「ありがとうございます。そう仰っていただけると、僕も嬉しいです」
ヒロインの動向を観察し、誰とフラグを立てるか見届ける……!
「やっぱりそうでしたか……」
数時間後、私が食事係でもないのにレイスがやって来た。しかも今まで見たことがないくらい、気まずそうな顔をしていた。
流石、公爵。私たちにできないことをやってのける。そこに痺れはするが、憧れない。
「お気持ちはありがたいですけれど、私は今のところ修道院から出るつもりはありませんので、あまり意味がないといいますか……」
「……それはたとえ一時的なものであってもですか?」
「はい?」
何が言いたいのだ、この子は。
「こうなってしまったのは予想外ですが、せっかくなので。リグレット様、久しぶりに外の世界に出るつもりはありませんか?」
真面目な顔でそんなことを言い出したレイスに身構える。
「聖鐘祭。リグレット様も参加したことがあるでしょう? 建国日を記念して、城のホールで二日間開催されるパーティーのことです。僕の協力者であり、修道院と仲間たちを救った救世主として、あなたの参加を希望する声がちらほらと挙がっていたんです」
聖鐘祭。ゲーム序盤でも発生するイベントの一つだ。
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それに聖鐘祭が始まるということは、ゲーム本編の世界軸に突入してある程度経っているようだ。
ただ、問題が一つ。
「お誘いのお言葉は嬉しいですけれど……聖鐘祭は貴族しか参加できません。世俗から離れた私が参加するというのは……」
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「そんなこと可能ですか?」
「公爵子息の特権を使いますので。それに父上も大歓迎だと思いますよ。どうもあなたのことを随分と気に入っているようなので」
そこまで言われてしまうと、何か行きたくなってきた。
それにチャンスかもしれない。聖鐘祭にはヒロインも光魔法を使えるという理由で参加を許される。
更には攻略キャラも全員参加。彼らの一人と仲良くなった場合、後にそのキャラの個別ルートに入る可能性が非常に高くなるのだ。
その相手が誰か分かれば、この先の展開がある程度分かるかもしれない。
「……やっぱり参加してみます。たまには新聞以外で世の中の動きを知ることも大事でしょうし」
「ありがとうございます。そう仰っていただけると、僕も嬉しいです」
ヒロインの動向を観察し、誰とフラグを立てるか見届ける……!
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