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七章 この世の終わり

六十三話 この世の終わり③

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 大型スーパーリオンは、最寄り駅から一駅の所にある。自転車で駅まで。それから電車で向かった。所要時間二十分。ゾンビ発生の予報が出ているため、リオンはがら空きだった。

 三、四階が駐車場で一階は食料品や化粧品売り場、二階にフードコートと専門店街……といっても立地が住宅密集地のため小規模だ。

 そしてゲームセンターがある。

 目的はトゥインクルハニーのアーケードゲームだ。俺達は二階へ続くエスカレーターに乗った。途中、食料品売場を通った時、スカスカの棚が目に入る。ゾンビ関連の報道のせいで買い溜めする人がいるのだろう。

 そうだ、帰る前に何か食い物でも買おう。確か家にはほとんど備蓄がなかったはず

 ゲームセンターには親子連れが一組いるだけだった。時計は夜の九時を指している。平日のこの時間はいつもこんな感じだ。

 神野君はリュックからカード専用のファイルを取り出した。ゲームに使うカードを選び始める。俺もたまにアーケードゲームはやるが、ここまでやり込んでいない。こういう所が「師匠」と呼ばれる所以ゆえんなのかもしれない。ファイルもキャラ別、ポイント順に細かく整理されている。大体、千枚くらいだろうか……

 神野君、さすが──

 トゥインクルハニーの筐体は二機だけだった。一機は親子連れが使用していたため、交代で遊ぶことにする。隣で母親と遊んでいた女児は、神野君のファイルを凝視した。丁度ゲームが終わり、得点が出るのを待っていたようだ。


「すごい……キラキラカードがいっぱい……」

「駄目よ。ジロジロ見てはいけません」


 小学校低学年くらいのその子に母親が注意する。俺達が来たために、母親は筐体の上に並べたカードをしまい、帰る準備を始めた。

 そりゃそうだ。夜中に大人の男二人が子供向けゲームの前にいたら、怖いだろう。けどな、昼間はお前らが陣取っているために夜しか遊べねぇんだよ。
 
 神野君はメダルカップに数千円分の百円を入れていた。見せつけるようにカップ内のコインをかき混ぜる。大人はこうやって遊ぶんだ。一度に数千円使うんだよ。


「やだぁ。まだ遊ぶーーー」


 帰ろうとする母親に反抗する女児。女児よ、帰りな。ここからは俺達アダルトの時間だ。


「せっかく空いてるから来たのに……やだ、絶対帰らない! だってまだ千円分遊んでないもん」

「ダメよ。もう遅いし帰りましょう。ゾンビだって出て来るかもしれないし……」

「やだやだやだぁーー! キラキラカード出るまでやるんだぁーーー」


 結構、我が儘な子だな。三次元のガキ、可愛くねぇ……

 早くどいて欲しい俺は親子のやり取りに聞き耳を立てる。神野君はスキャンするカードを選び終えると、ゲームをスタートさせた。

 ゲーム自体は幼児でも出来る簡単なリズムゲームだ。簡単、普通、難しいの三段階から一応選べるようになっている。

 まず、ゲームに使用するカードを四枚スキャンする。(無くても出来る)カードにはキャラが様々な衣装を着ている絵が印刷されている。スキャンするのはトップス、ボトムス、靴、アクセサリーの四種類である。
 スキャンによって下着姿だったキャラに服を着せていくのだ。カードに表記されたポイントが加算され、組み合わせ次第ではボーナスポイントがもらえる。キャラと衣装が決まったら、今度はステージだ。ステージに相応しい衣装を合わせるのも重要である。更にポイントが加算される。

 ステージを決めて、いよいよリズムゲームがスタート。ゲーム終了後、高得点を出せれば、より高ポイントのカードをゲットできるという仕組みだ。
 
 母親にお菓子を買うことを約束させ、何とか女児は筐体から離れた。
 
 さあ、俺達の時間だ。俺と神野君は並んでゲームを始めた。

 大人の場合はゲームよりカードが目的だ。アニメでメガトゥインクルスターライトトランスフォームという変身の二次形態が公開されたため、イベントをやっている。メガトゥインクルスターライトトランスフォームというのは……まあいい。

 ゲームすること、十五分……。一ゲーム大体五分くらいだ。四回目に突入した頃……


「グググググ……」

 何か痰の絡んだような変な声が聞こえた。
 

「神野君、何?」

「……は? ガシュピン、何か言った?」


 神野君は筐体の画面を睨み付けたまま、手元のボタンを連打している。気のせいか……いや、んな訳ねぇ!!

 嫌な予感がして俺が振り向くと、案の定……
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