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二章 サバゲー
十六話 同人誌即売会①
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三日後、俺は青山君と同人誌即売会に来ていた。オンリーイベントというやつで、限定したテーマのみの作品が集まる即売会である。今回青山君が参加したのは、某有名漫画の美少年キャラクター(脇役)のイベントだった。
ビルのワンフロアで開催された会場には、せいぜい百程度の販売スペースしかない。小規模なイベントだから青山君のような個人サークルも多かった。
意外にも男のサークル参加者が多いことに驚く。いや、ほとんど男なのだ。八割方……
「ショタ好きって、男ばっかなんだね。意外……」
驚きを隠せない俺に青山君は口を尖らせる。女の子がやったら可愛い動作だが、虫系男子の青山君がやっても全然かわいくない。
「まえも言ったじゃん。僕の大好きな美山太平君のイベントに行った時も、最前列はみんな男だったって」
美山太平というのは、今人気の美少年子役らしい。俺はドラマとか見ないのでよくわからないが。青山君はこの美山太平のせいで、ショタ愛に目覚めてしまったという。
「俺のなかでは、ショタコンはBLとかヤオイと同じ種類だと思ってたわ」
「ちがうよ。ちがう、ちがう! 全然ちがうんだからねっ! 今日で偏見捨てて貰わないと」
ややプリプリした動作で憤慨して見せる青山君だが、別に怒っているわけではない。こういった掛け合いをまあ楽しんでいるわけだ。
青山君が用意したのは百部。値札やポップもイラスト付きで凝っている。昨日、ほとんど寝ずに青山君一人で作ったとのこと。俺も手伝うとは言ったが、バイトが休めず結局当日になってしまった。
青山君の作品は……全然エロくなかった。絵はすごく上手い。この萌え絵を完成させるには、とてつもない苦労があったという。
かわいらしい少年キャラの初めてのお使い的な流れで、話は進んでいく。人々に助けられながら手紙を届ける任務を達成させるというストーリーだ。
途中、おじさんキャラに助けられて頬を赤くしたり、お姉さんキャラたちにイジられて泣きそうになったりはあるものの、性的な要素は皆無だ。
エロエロなのだとばかり思っていたから予想外だった。でも、さっき他のスペースもチラッと見たけど結構エロかったような……少年なのに乳が出ている絵とかもあったし……
「青山君、これ全然エロくないけど大丈夫かな?」
なにか 不安を感じて聞いてしまった。
「もう、田守君たらエッチなんだから……」
とヘラヘラした調子で返すものの、やはり売れるか不安なのだろう。青山君の瞳に暗い影が落ちる。余計なことを聞いてしまった。
だが、思いのほか、青山君の本は売れた。交代で店番をして、他のスペースを回ることにしていたのだが……俺が一通り見て戻ると、本は数冊しか残ってなかったのだ。
「すごいじゃん! 青山君、もしかして完売するかも?」
「そうなんだよ」
青山君もここまで売れ行きがいいとは思ってなかったようだ。いつものおしゃべりは影を潜め、呆けた顔をしている。
確かに他の作品と比べると、絵の上手さはダントツだった。ショタコンの萌え絵の基準はよくわからないが、表紙絵が人目を引いたのかもしれない。むしろ百部じゃ足りなかった。人ごとながら、俺は悔しくなった。
その時だった。チャイムが流れ、くぐもった声のアナウンスが流れた。
「えー。只今、当ビル内でゾンビの発生が確認されました。ゾンビの数は十頭……速やかに避難してください。ゾンビの数は十頭……さらに増えていく可能性もあります。えー、只今、当ビル内でゾンビの発生が確認されました。速やかに避難をお願いいたします……」
アナウンスの途中で、ゴスロリファッションの女の子が悲鳴を上げた。
どこにでもいるよな。何かあった時、過剰な 反応する奴。当然ながら、冷ややかな視線を集める。
その女の子は同じくゴスロリ系の友達と「ヤバいよ! ヤバいよ!! 怖い!!」などと騒ぎながら会場を出て行った。
それ以外は皆、冷静だった。店じまいを始める人や一般参加の人はゾロゾロと出口へ向かって行く。慌てて走ったりする人はいない。何事もなかったかのように、買い物を続ける人もいるし。
「どうする?」
俺は青山君の顔を見た。青山君は少しも動揺していなかった。
「全部売り切ってからここを出ようよ。まだ買い物続けてる人もいるし」
確かに人は減った。だが、そこまでガラガラにはなっていない。出口のほうへ行ってから、また戻って来る人もいる。まあ、ゾンビ十頭程度なら大丈夫だろ。俺はうなずいた。
ビルのワンフロアで開催された会場には、せいぜい百程度の販売スペースしかない。小規模なイベントだから青山君のような個人サークルも多かった。
意外にも男のサークル参加者が多いことに驚く。いや、ほとんど男なのだ。八割方……
「ショタ好きって、男ばっかなんだね。意外……」
驚きを隠せない俺に青山君は口を尖らせる。女の子がやったら可愛い動作だが、虫系男子の青山君がやっても全然かわいくない。
「まえも言ったじゃん。僕の大好きな美山太平君のイベントに行った時も、最前列はみんな男だったって」
美山太平というのは、今人気の美少年子役らしい。俺はドラマとか見ないのでよくわからないが。青山君はこの美山太平のせいで、ショタ愛に目覚めてしまったという。
「俺のなかでは、ショタコンはBLとかヤオイと同じ種類だと思ってたわ」
「ちがうよ。ちがう、ちがう! 全然ちがうんだからねっ! 今日で偏見捨てて貰わないと」
ややプリプリした動作で憤慨して見せる青山君だが、別に怒っているわけではない。こういった掛け合いをまあ楽しんでいるわけだ。
青山君が用意したのは百部。値札やポップもイラスト付きで凝っている。昨日、ほとんど寝ずに青山君一人で作ったとのこと。俺も手伝うとは言ったが、バイトが休めず結局当日になってしまった。
青山君の作品は……全然エロくなかった。絵はすごく上手い。この萌え絵を完成させるには、とてつもない苦労があったという。
かわいらしい少年キャラの初めてのお使い的な流れで、話は進んでいく。人々に助けられながら手紙を届ける任務を達成させるというストーリーだ。
途中、おじさんキャラに助けられて頬を赤くしたり、お姉さんキャラたちにイジられて泣きそうになったりはあるものの、性的な要素は皆無だ。
エロエロなのだとばかり思っていたから予想外だった。でも、さっき他のスペースもチラッと見たけど結構エロかったような……少年なのに乳が出ている絵とかもあったし……
「青山君、これ全然エロくないけど大丈夫かな?」
なにか 不安を感じて聞いてしまった。
「もう、田守君たらエッチなんだから……」
とヘラヘラした調子で返すものの、やはり売れるか不安なのだろう。青山君の瞳に暗い影が落ちる。余計なことを聞いてしまった。
だが、思いのほか、青山君の本は売れた。交代で店番をして、他のスペースを回ることにしていたのだが……俺が一通り見て戻ると、本は数冊しか残ってなかったのだ。
「すごいじゃん! 青山君、もしかして完売するかも?」
「そうなんだよ」
青山君もここまで売れ行きがいいとは思ってなかったようだ。いつものおしゃべりは影を潜め、呆けた顔をしている。
確かに他の作品と比べると、絵の上手さはダントツだった。ショタコンの萌え絵の基準はよくわからないが、表紙絵が人目を引いたのかもしれない。むしろ百部じゃ足りなかった。人ごとながら、俺は悔しくなった。
その時だった。チャイムが流れ、くぐもった声のアナウンスが流れた。
「えー。只今、当ビル内でゾンビの発生が確認されました。ゾンビの数は十頭……速やかに避難してください。ゾンビの数は十頭……さらに増えていく可能性もあります。えー、只今、当ビル内でゾンビの発生が確認されました。速やかに避難をお願いいたします……」
アナウンスの途中で、ゴスロリファッションの女の子が悲鳴を上げた。
どこにでもいるよな。何かあった時、過剰な 反応する奴。当然ながら、冷ややかな視線を集める。
その女の子は同じくゴスロリ系の友達と「ヤバいよ! ヤバいよ!! 怖い!!」などと騒ぎながら会場を出て行った。
それ以外は皆、冷静だった。店じまいを始める人や一般参加の人はゾロゾロと出口へ向かって行く。慌てて走ったりする人はいない。何事もなかったかのように、買い物を続ける人もいるし。
「どうする?」
俺は青山君の顔を見た。青山君は少しも動揺していなかった。
「全部売り切ってからここを出ようよ。まだ買い物続けてる人もいるし」
確かに人は減った。だが、そこまでガラガラにはなっていない。出口のほうへ行ってから、また戻って来る人もいる。まあ、ゾンビ十頭程度なら大丈夫だろ。俺はうなずいた。
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