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徒然
父①
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それはサプライズのあった晩秋のこと。慎一郎の祖父、次郎は、隠居へ千晶の両親を招いた。
「手打ちですか」
「贔屓の店がなくなってしまってね。それから80の手習いですよ」
次郎と千晶の父、馨とが台所へ顔を出すと、紺色のエプロンに手ぬぐいを被った初老の男がいた。
「ああ、いらしてたんですか」
「……」
「息子もやってみたいというもんでね」
次郎の息子にして慎一郎の父、慧一は軽く頷き、父親に目で蕎麦の具合を問う。
「うん、いいんじゃないか。昔は臼挽が子供の仕事で――」
こういう御仁らでも年をとると蕎麦打ちなのか。雑談混じりに千晶の父親も蕎麦切りに初挑戦。
「年に数回ですから許せますけどね、ほら」
「片付けまでなさるならいいじゃありませんか」
祖母と千晶の母とお手伝いさんもやってきて、がやがやと手を出し口を出し、蕎麦御前はできあがり。
「お蕎麦ってこんなに美味しいものだったんですね、ほんのり甘味があってのど越しがよくて」
「今まで一番じゃないかしら、張り切った甲斐がありましたわね」
ご婦人方がおしゃべりする横で、殿方は蕎麦をつまみに日本酒が進む。
「これは、おつなもので」
「つまりは粉と水ですよ、今年は井戸水を――」
「…打ち立て茹でたて、これなら皆にも馳走できるな」
見える、あの藤堂邸で作務衣をきて蕎麦を打つ男の姿が。そして困惑する人々の顔が浮かぶ。慧一の自画自賛な呟きに、千晶の両親と、慎一郎の祖母、そしてお手伝いさんまでが、あーあ(目覚めちゃったよ)と目を見合わせた。
「その前におもちが食べたいわ。私搗き立てのおもちだけは甘くて好きなの」
「ふむ、久しぶりにやるか、30…29日だな、高遠さん、息子さんらもぜひ」
話はどんどん進んでいく。誰も慧一の都合を確かめない。
「…若いものは蕎麦を喜ばないか」
「私も蕎麦の旨さがわかるようになったのは40を過ぎてからでしょうか、ああ、娘は更科が好きですよ」
「うん、外一の更科は……さすがあの若さで腹芸が身についているだけのことはありますな」
「娘もいらぬ苦労ばかり背負い込んでしまって、蝶よ花よと育てたつもりなんですがね――」
慧一と馨は初対面こそ慇懃にやりあったが、交渉の余地がないと確認すると態度を取り繕わなくった。
慎一郎は『ぼくちゃん何も間違ってない、仕事はやってるだろ』と反省の色もなく、千晶は千晶で『後継者がご乱心とはお気の毒に』となんの言質もとらせない。
波の始点がそよ風であるように、台風の中心が無風であるように、当人らは至ってのらりくらり。そして、近いものほど二人を説得するのが難しいとわかっていた。
千晶の両親は娘に衣装を着せたいと持ち掛けられただけだった。会場が藤堂邸であんなことに――まぁ、そこまでは乗りかかった船、喜びをわかちあう人々が多いのはいいものだ、と、嬉しいサプライズだったのに。
娘に嫁が務まるとは思えないし、娘が望まないからここまで一人で来たのだ。娘の意思を無視した不法行為に譲歩はできない。と同時に、孫が成人するまでは両親が、どうせ別れるなら有利な条件を引き出したい、とも思わないでもないのだが。
慧一は慧一で、おままごとを続けるのなら口出しはしないつもりだったのだ。息子も千晶も何も言ってこない上に、千晶らに何としても排除したいような瑕疵も見当たらない。解消するには藤堂が身を切らねばならない。
こうなったのは千晶が、高遠家が慎一郎を丸め込んだと思いたいが、事実は息子の独断だろうことにも気づいている、が、まだ認めたくはない。
「慎一郎は嫌いだったかしら、まぁいいわね」
「バター餅なら召し上がってましたよ」
「…お嬢さんが果たして私の蕎麦を食べてくれるかどうか」
「あなたと息子さんが食べたら食べないわけにいかないでしょう」
膠着状態の父親二人は置いて、ご婦人方は餅のレシピをあれこれ、次郎も息子らを止めるわけでもなく、懐かしむように話はじめた。
「私の父も餅に目がなくてね。毒見だと言っては搗いたそばから手を伸ばし。祖父は仕方のないやつだと笑っていたが、卑しい餓鬼のようで私は厭だった。あれで餅を喉に詰まらせて逝ってくれていたら笑い話にもなったんだが――」
次郎の祖父も健在だったころ、家長より先に子が箸をつけるなどあってはならぬ時代の話だ。餅つきには大勢が集まった。年配者に遠慮し、年若い者に譲り、次郎がゆっくりたべられるのは日も暮れ、好みの味もほぼ食べつくされた後だった。
「もっとひどいのが母親たちだ。もう終いだといった甘味は台所に残してあって、こっそり自分らだけで食っていた。私が外で駄菓子でも買うて帰ってくれば、引き売りのものは口にするんじゃないと取り上げて、――」
「いつの時代も女性は逞しいですね」
もっとも、母親らに見つからずとも、次郎には十指を超える弟妹がいた。彼らに一口ずつ分け与えれば次郎の分はごくわずか。
「一度、私の祖父と叔父貴がね、屋敷にポン菓子屋を呼んでくれまして、あの時は皆で腹いっぱい食べられた。米に大麦に豆に――」(※クリスプをその場で作る移動販売)
楽しい思い出だったのだろう、次郎の声色が弾んで聞こえた。自分らは食べるには事欠かなかったが、と馨も、父親からきいた話を思い出しながら困ったように笑った。当時を知るものにしか分からないことがある。
「お義父様は団子もお好きでしたわね、三方を三台用意しても足りずに。お義母様はクッキーの缶をベッドの下に隠してらして」
食べるに事欠かないどころか、いただきものに溢れていた家だ。記憶の祖父母らとは違う印象に慧一が首を傾げると、母親も困ったように笑った。
「孫たちにはいいとこ見せてましたものねぇ」
「……厳しかったですよ」
「親父様は生涯現役だったからな。私は次郎の名のとおり、二番目でしてね。五代目ということになっておりますが、実質は父から慧一に引き継がれたようなもので――」
藤堂は初代――家としては更に二代遡る――がご維新のごたごたで宮仕えから小商いへ転向、生来の勤勉さと時流に乗り二代目と共に事業は拡大。富はいろいろなものを引き寄せる。うまく立ち回ったのが三代目四代目で、閨閥を巡らせ、戦後の動乱も乗り切った。
五代目が次郎、長兄の急逝で御鉢が回ってきた。やりたいことあった弟らと違い、次郎はいずれ兄の手伝いをする心つもりでいたため気負いすぎることなく受け入れた。弟妹は好きな道を行きつつ、事業を起こしたものは、その後統廃合されたり、勝手をしながらもゆるい結束をもってやってきた。
次郎は四代目が長く取り仕切ったなかで、常に一歩引き、そして冷静だった。その次、六代目が慧一で、新しい物好きで技術革新を取り込んで決断と切り換えが早かった。四代目から薫陶をうけたのは慧一といえる。さすがに近年の流れには付いていけきれないのがリタイヤしたい理由のひとつでもある。
「適任という意味なら弟らのほうが適任だった、才能もあった」
「功史郎叔父さんは結局独身だ、悟郎叔父さんとこの息子は渡仏したきりでしょう。それにお爺様をうまく抑えるのは貴方以外いませんでしたよ」
「兄上はすごかったんだ、俺らを合わせても比べ物にならん位にね。親父様も惜しかったんだろう」
死んだ者には敵わない。次郎の父は豪傑な人で親子仲が悪かったわけではない。だが、彼は子供より孫たちの教育に力を入れていたように見えた。
「……、お爺様は『次郎はよく見ている、そして纏めるのがうまい』と」
「…そうか」
次郎は照れ隠しのように蕎麦を食べ、ゆっくりと猪口を口に持っていった。
「お嬢さんの息子さんは『藤堂くんが決まるまで元気でいてね』だと、なぁ?」
「……ふふっ、私には加えて子供を作れと無茶なことを」
『しらないおじさん』――慎一郎のパパだと名乗ったが相手にされなかった――はきちんと慎一郎から紹介されると、女児から毟ってごめんなさい、と薄い頭髪を撫でられ、男児から上記のようなことを耳打ちされると仏頂面のまま二人の頭を撫で返した。内心喜んでいたのは皆気づいていた。
千晶の両親は孫の舌先三寸に目を合わせ苦笑する。彼らは彼らなりに企んでいるようで、千晶も手に負えないと時々ため息をついている。
「手打ちですか」
「贔屓の店がなくなってしまってね。それから80の手習いですよ」
次郎と千晶の父、馨とが台所へ顔を出すと、紺色のエプロンに手ぬぐいを被った初老の男がいた。
「ああ、いらしてたんですか」
「……」
「息子もやってみたいというもんでね」
次郎の息子にして慎一郎の父、慧一は軽く頷き、父親に目で蕎麦の具合を問う。
「うん、いいんじゃないか。昔は臼挽が子供の仕事で――」
こういう御仁らでも年をとると蕎麦打ちなのか。雑談混じりに千晶の父親も蕎麦切りに初挑戦。
「年に数回ですから許せますけどね、ほら」
「片付けまでなさるならいいじゃありませんか」
祖母と千晶の母とお手伝いさんもやってきて、がやがやと手を出し口を出し、蕎麦御前はできあがり。
「お蕎麦ってこんなに美味しいものだったんですね、ほんのり甘味があってのど越しがよくて」
「今まで一番じゃないかしら、張り切った甲斐がありましたわね」
ご婦人方がおしゃべりする横で、殿方は蕎麦をつまみに日本酒が進む。
「これは、おつなもので」
「つまりは粉と水ですよ、今年は井戸水を――」
「…打ち立て茹でたて、これなら皆にも馳走できるな」
見える、あの藤堂邸で作務衣をきて蕎麦を打つ男の姿が。そして困惑する人々の顔が浮かぶ。慧一の自画自賛な呟きに、千晶の両親と、慎一郎の祖母、そしてお手伝いさんまでが、あーあ(目覚めちゃったよ)と目を見合わせた。
「その前におもちが食べたいわ。私搗き立てのおもちだけは甘くて好きなの」
「ふむ、久しぶりにやるか、30…29日だな、高遠さん、息子さんらもぜひ」
話はどんどん進んでいく。誰も慧一の都合を確かめない。
「…若いものは蕎麦を喜ばないか」
「私も蕎麦の旨さがわかるようになったのは40を過ぎてからでしょうか、ああ、娘は更科が好きですよ」
「うん、外一の更科は……さすがあの若さで腹芸が身についているだけのことはありますな」
「娘もいらぬ苦労ばかり背負い込んでしまって、蝶よ花よと育てたつもりなんですがね――」
慧一と馨は初対面こそ慇懃にやりあったが、交渉の余地がないと確認すると態度を取り繕わなくった。
慎一郎は『ぼくちゃん何も間違ってない、仕事はやってるだろ』と反省の色もなく、千晶は千晶で『後継者がご乱心とはお気の毒に』となんの言質もとらせない。
波の始点がそよ風であるように、台風の中心が無風であるように、当人らは至ってのらりくらり。そして、近いものほど二人を説得するのが難しいとわかっていた。
千晶の両親は娘に衣装を着せたいと持ち掛けられただけだった。会場が藤堂邸であんなことに――まぁ、そこまでは乗りかかった船、喜びをわかちあう人々が多いのはいいものだ、と、嬉しいサプライズだったのに。
娘に嫁が務まるとは思えないし、娘が望まないからここまで一人で来たのだ。娘の意思を無視した不法行為に譲歩はできない。と同時に、孫が成人するまでは両親が、どうせ別れるなら有利な条件を引き出したい、とも思わないでもないのだが。
慧一は慧一で、おままごとを続けるのなら口出しはしないつもりだったのだ。息子も千晶も何も言ってこない上に、千晶らに何としても排除したいような瑕疵も見当たらない。解消するには藤堂が身を切らねばならない。
こうなったのは千晶が、高遠家が慎一郎を丸め込んだと思いたいが、事実は息子の独断だろうことにも気づいている、が、まだ認めたくはない。
「慎一郎は嫌いだったかしら、まぁいいわね」
「バター餅なら召し上がってましたよ」
「…お嬢さんが果たして私の蕎麦を食べてくれるかどうか」
「あなたと息子さんが食べたら食べないわけにいかないでしょう」
膠着状態の父親二人は置いて、ご婦人方は餅のレシピをあれこれ、次郎も息子らを止めるわけでもなく、懐かしむように話はじめた。
「私の父も餅に目がなくてね。毒見だと言っては搗いたそばから手を伸ばし。祖父は仕方のないやつだと笑っていたが、卑しい餓鬼のようで私は厭だった。あれで餅を喉に詰まらせて逝ってくれていたら笑い話にもなったんだが――」
次郎の祖父も健在だったころ、家長より先に子が箸をつけるなどあってはならぬ時代の話だ。餅つきには大勢が集まった。年配者に遠慮し、年若い者に譲り、次郎がゆっくりたべられるのは日も暮れ、好みの味もほぼ食べつくされた後だった。
「もっとひどいのが母親たちだ。もう終いだといった甘味は台所に残してあって、こっそり自分らだけで食っていた。私が外で駄菓子でも買うて帰ってくれば、引き売りのものは口にするんじゃないと取り上げて、――」
「いつの時代も女性は逞しいですね」
もっとも、母親らに見つからずとも、次郎には十指を超える弟妹がいた。彼らに一口ずつ分け与えれば次郎の分はごくわずか。
「一度、私の祖父と叔父貴がね、屋敷にポン菓子屋を呼んでくれまして、あの時は皆で腹いっぱい食べられた。米に大麦に豆に――」(※クリスプをその場で作る移動販売)
楽しい思い出だったのだろう、次郎の声色が弾んで聞こえた。自分らは食べるには事欠かなかったが、と馨も、父親からきいた話を思い出しながら困ったように笑った。当時を知るものにしか分からないことがある。
「お義父様は団子もお好きでしたわね、三方を三台用意しても足りずに。お義母様はクッキーの缶をベッドの下に隠してらして」
食べるに事欠かないどころか、いただきものに溢れていた家だ。記憶の祖父母らとは違う印象に慧一が首を傾げると、母親も困ったように笑った。
「孫たちにはいいとこ見せてましたものねぇ」
「……厳しかったですよ」
「親父様は生涯現役だったからな。私は次郎の名のとおり、二番目でしてね。五代目ということになっておりますが、実質は父から慧一に引き継がれたようなもので――」
藤堂は初代――家としては更に二代遡る――がご維新のごたごたで宮仕えから小商いへ転向、生来の勤勉さと時流に乗り二代目と共に事業は拡大。富はいろいろなものを引き寄せる。うまく立ち回ったのが三代目四代目で、閨閥を巡らせ、戦後の動乱も乗り切った。
五代目が次郎、長兄の急逝で御鉢が回ってきた。やりたいことあった弟らと違い、次郎はいずれ兄の手伝いをする心つもりでいたため気負いすぎることなく受け入れた。弟妹は好きな道を行きつつ、事業を起こしたものは、その後統廃合されたり、勝手をしながらもゆるい結束をもってやってきた。
次郎は四代目が長く取り仕切ったなかで、常に一歩引き、そして冷静だった。その次、六代目が慧一で、新しい物好きで技術革新を取り込んで決断と切り換えが早かった。四代目から薫陶をうけたのは慧一といえる。さすがに近年の流れには付いていけきれないのがリタイヤしたい理由のひとつでもある。
「適任という意味なら弟らのほうが適任だった、才能もあった」
「功史郎叔父さんは結局独身だ、悟郎叔父さんとこの息子は渡仏したきりでしょう。それにお爺様をうまく抑えるのは貴方以外いませんでしたよ」
「兄上はすごかったんだ、俺らを合わせても比べ物にならん位にね。親父様も惜しかったんだろう」
死んだ者には敵わない。次郎の父は豪傑な人で親子仲が悪かったわけではない。だが、彼は子供より孫たちの教育に力を入れていたように見えた。
「……、お爺様は『次郎はよく見ている、そして纏めるのがうまい』と」
「…そうか」
次郎は照れ隠しのように蕎麦を食べ、ゆっくりと猪口を口に持っていった。
「お嬢さんの息子さんは『藤堂くんが決まるまで元気でいてね』だと、なぁ?」
「……ふふっ、私には加えて子供を作れと無茶なことを」
『しらないおじさん』――慎一郎のパパだと名乗ったが相手にされなかった――はきちんと慎一郎から紹介されると、女児から毟ってごめんなさい、と薄い頭髪を撫でられ、男児から上記のようなことを耳打ちされると仏頂面のまま二人の頭を撫で返した。内心喜んでいたのは皆気づいていた。
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