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第1章 僕は君を守りたかった
3. -女剣士レイラ①-
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街道脇の湖。
おそらく霧の湖だ。
理由はわからないが、通年を通して濃い霧に包まれている不思議な湖だ。
この町から直線距離はそれ程離れてはいないが・・・街道を通って向かうには森を迂回する必要がありそれなりに距離はある。
おそらくこの男は仲間の危機を伝えるため最短距離を相当無理してここまで来たんだろうな。
ただ、相手が・・・俺の知っている黒いローブの男だとすると既にこいつの仲間は・・・
いや、霧を上手く味方に付けれていればまだ生きている可能性はある。
・・・そんなことはどうでもいいか。
"あいつだけは許せない"
俺は男の傍らに落ちていた剣を拾った。
両刃のロングソード。
名剣とまではいかないが、よく手入れのされたいい剣だ。
「この剣借りるぞ」
「え?ちょ ちょっとアレク!どうしたの!まさかこの人の仲間を助けに?」
「ああ」
「・・・で でも冒険者さんが大怪我するような相手にアレクが行ったって・・・そ そうだ!私も行くよ!私だって!」
「駄目だ!奴は・・・俺が知っている奴なら・・・並みの魔獣じゃない。
それにこの人も早く治療をしないと命にかかわる。
ユズハはこの人の事を頼む」
「でも・・・」
「もし・・・そいつが俺の知っている魔獣なら・・・この町も危険に晒されるかもしれない」
「え?」
「みんなはこの人を連れて教会に避難を。あそこには結界が張られているはずだし最悪王都の大聖堂に転位する魔法陣があるはずだ。いざとなったら神父様に説明して王都に脱出しろ!」
アジュールと同じようにはさせない。
それに・・・もう故郷も大事な仲間を失いたくない。
あいつは・・・敵なんだ。俺の大切なものを奪った・・・・
「頼んだぞ!」
「ア アレク!!」
「おい!アレク!一人では無茶だ!」
ユズハとジークの静止を振り切り俺は霧の泉へと向かった。
------------------------
脚への身体強化と疲労軽減の魔法を使い移動速度を上げつつ、街道を外れて森の中を走り最短距離で泉に到着した俺の目の前には、無残に殺害された商隊の人達の姿があった。
"やはり 間に合わなかったか・・・"
酷いな・・・魔法によって焼かれた者も居れば体を食いちぎられた遺体もある。
冒険者風の遺体もあるが・・・もしかしたらさっきの男の仲間だろうか。
"後でちゃんと弔ってやるからな・・・"
俺は亡骸に手を合わせつつ周囲の調査を行った。
魔獣の気配は近くに感じられないし、生存者も居ない様に見える。
商隊の荷馬車は無傷のものも残っているけど牽引していた馬は逃げたのか辺りには居ない。
それにさっきの剣士の言っていた団長さんとやらはどうなったんだろうか。
さっきの冒険者の遺体がやはり・・・
と俺が思案していると
[バーーーン!]
湖の対岸、霧の広がる森の奥で大きな爆発音と共に土煙が上がった。
"まだ戦っている!?"
俺は一縷の望みを賭け音の方へと走り出した。
土煙が上がった場所へ向け、湖の畔を迂回し更に森の奥へと進むと少し開けた場所にそいつは居た。
トロルだ。それも通常のものより大型だ。
"こいつがあの男が言っていたトロルの亜種か?"
大きな体を鎧で覆い剣をもった獰猛な魔獣。
俺も何度か戦ったことはあるが、スピードは無いもの多少の傷なら自己再生してしまうタフさは厄介だ。
それに魔獣化していることでおそらく魔法耐性も強くなっているはず。
それに"あいつ"も居るはずだ。
しかし辺りを見渡すも黒いローブの男の姿は見えない。
”何処にいるんだあいつは?”
とトロルの視線の先、岩陰から冒険者らしき影が飛び出し攻撃を仕掛けた。
「あ~!!もうさっきからしつこいのよ!!
あんまりしつこいと女の子に嫌われるよ!!
これでも食らいなさい!!ファイヤーブラスト!!!」
冒険者の力強い声と共に振り下ろされた剣の先端から炎の渦がトロルに向かって放たれる。
炎の渦はトロルを巻き込み巨大な火柱を起こす。
"火属性の中級魔法だ"
しかし、魔法耐性が強いのか火柱の中から冒険者を捕まえようとトロルが手を伸ばす。
「あ~もう全然効かないんだから!!
それにしつこいって言ってるでしょ!!」
そう言いながら伸ばされたトロルの腕を足場にして後方跳ぶ冒険者。
「女性?」
赤毛の長い髪を後ろで1つに結びミスリルの鎧を身に着けた女性冒険者。
飛び上がった瞬間一瞬だけ顔も見えた。
「まさか・・・リーフ」
おそらく霧の湖だ。
理由はわからないが、通年を通して濃い霧に包まれている不思議な湖だ。
この町から直線距離はそれ程離れてはいないが・・・街道を通って向かうには森を迂回する必要がありそれなりに距離はある。
おそらくこの男は仲間の危機を伝えるため最短距離を相当無理してここまで来たんだろうな。
ただ、相手が・・・俺の知っている黒いローブの男だとすると既にこいつの仲間は・・・
いや、霧を上手く味方に付けれていればまだ生きている可能性はある。
・・・そんなことはどうでもいいか。
"あいつだけは許せない"
俺は男の傍らに落ちていた剣を拾った。
両刃のロングソード。
名剣とまではいかないが、よく手入れのされたいい剣だ。
「この剣借りるぞ」
「え?ちょ ちょっとアレク!どうしたの!まさかこの人の仲間を助けに?」
「ああ」
「・・・で でも冒険者さんが大怪我するような相手にアレクが行ったって・・・そ そうだ!私も行くよ!私だって!」
「駄目だ!奴は・・・俺が知っている奴なら・・・並みの魔獣じゃない。
それにこの人も早く治療をしないと命にかかわる。
ユズハはこの人の事を頼む」
「でも・・・」
「もし・・・そいつが俺の知っている魔獣なら・・・この町も危険に晒されるかもしれない」
「え?」
「みんなはこの人を連れて教会に避難を。あそこには結界が張られているはずだし最悪王都の大聖堂に転位する魔法陣があるはずだ。いざとなったら神父様に説明して王都に脱出しろ!」
アジュールと同じようにはさせない。
それに・・・もう故郷も大事な仲間を失いたくない。
あいつは・・・敵なんだ。俺の大切なものを奪った・・・・
「頼んだぞ!」
「ア アレク!!」
「おい!アレク!一人では無茶だ!」
ユズハとジークの静止を振り切り俺は霧の泉へと向かった。
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脚への身体強化と疲労軽減の魔法を使い移動速度を上げつつ、街道を外れて森の中を走り最短距離で泉に到着した俺の目の前には、無残に殺害された商隊の人達の姿があった。
"やはり 間に合わなかったか・・・"
酷いな・・・魔法によって焼かれた者も居れば体を食いちぎられた遺体もある。
冒険者風の遺体もあるが・・・もしかしたらさっきの男の仲間だろうか。
"後でちゃんと弔ってやるからな・・・"
俺は亡骸に手を合わせつつ周囲の調査を行った。
魔獣の気配は近くに感じられないし、生存者も居ない様に見える。
商隊の荷馬車は無傷のものも残っているけど牽引していた馬は逃げたのか辺りには居ない。
それにさっきの剣士の言っていた団長さんとやらはどうなったんだろうか。
さっきの冒険者の遺体がやはり・・・
と俺が思案していると
[バーーーン!]
湖の対岸、霧の広がる森の奥で大きな爆発音と共に土煙が上がった。
"まだ戦っている!?"
俺は一縷の望みを賭け音の方へと走り出した。
土煙が上がった場所へ向け、湖の畔を迂回し更に森の奥へと進むと少し開けた場所にそいつは居た。
トロルだ。それも通常のものより大型だ。
"こいつがあの男が言っていたトロルの亜種か?"
大きな体を鎧で覆い剣をもった獰猛な魔獣。
俺も何度か戦ったことはあるが、スピードは無いもの多少の傷なら自己再生してしまうタフさは厄介だ。
それに魔獣化していることでおそらく魔法耐性も強くなっているはず。
それに"あいつ"も居るはずだ。
しかし辺りを見渡すも黒いローブの男の姿は見えない。
”何処にいるんだあいつは?”
とトロルの視線の先、岩陰から冒険者らしき影が飛び出し攻撃を仕掛けた。
「あ~!!もうさっきからしつこいのよ!!
あんまりしつこいと女の子に嫌われるよ!!
これでも食らいなさい!!ファイヤーブラスト!!!」
冒険者の力強い声と共に振り下ろされた剣の先端から炎の渦がトロルに向かって放たれる。
炎の渦はトロルを巻き込み巨大な火柱を起こす。
"火属性の中級魔法だ"
しかし、魔法耐性が強いのか火柱の中から冒険者を捕まえようとトロルが手を伸ばす。
「あ~もう全然効かないんだから!!
それにしつこいって言ってるでしょ!!」
そう言いながら伸ばされたトロルの腕を足場にして後方跳ぶ冒険者。
「女性?」
赤毛の長い髪を後ろで1つに結びミスリルの鎧を身に着けた女性冒険者。
飛び上がった瞬間一瞬だけ顔も見えた。
「まさか・・・リーフ」
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