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指定撃爆雷電砲

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【指定撃爆雷電砲 発射】

「魔術部隊防御魔法展開ッッッ!! 急いで!」

 カペルに言われて撤退の指示をしてすぐに……。あのシャルリエールの面影の残るあの男の声が当たりに響き渡ったと同時に……。戦の高揚で冴え渡った本能が咄嗟に最善の指示を全体に広めた。カペルがそれとなく風魔法の補助で全体にしっかり声が聞こえるようにしてくれたお陰で、戦で血が上っていた兵士が目が覚めそれぞれのやるべき事に奔放した。

 咄嗟に嫌な予感がする方向に向けて防御魔法障壁を展開して待ち構えた。けど……なにかが違う。危険なんだけど、何か別の物が危険にさらされる事態だと本能が訴えかけてくるのにそれがわからない。どうしよう、どうしようと、防御魔法を展開したまま、いつ何時何が来てもいいように備えた中で考える。

 この違和感は、最善の筈なのに失敗したようなこの感覚はなんなんだろう……?

「来ませんね」

 兵士の一人がポロリと言った。それにより、ざわりと兵士の気が抜けるがソレを正すために固い声で場を制した。

「油断しないで、もし、こちらの動揺を誘う言葉だとしても……。けど、これじゃ拉致が開かないから私が一度でる」

「行けません、貴方は戦場に立つことを約束されているとはいえ……王なのですよ!」

「だからよ。もしもの指揮はカペルの指示を聞いて」

 兵士が声を上げて、カペルが首を振るのをお構いなしに私は障壁を抜けて……。敵のワジェライ王国の中に一人で進んだ。なにかが、おかしい。なにかが違う……。そんな違和感を携えて様子を見に行った。

「お待ち下さい!」

「待って下さい我が君」

 背中に兵士達やカペルの静止の声が聞こえるけど、連れて行ったらいけないような気がして。違和感を胸に携えたままに、先に進むと……。違和感の一つがわかった。敵が、あれほど居た敵が誰も居ない。国境の森を抜けた村の建物にも人の気配がない。けど、廃村ではないようだ。先ほどまで人が居て慌てて非難したのか、家の窓を覗けば冷めたスープの入った器がテーブルに置かれていた。

 違和感の一つはわかったけど、釈然としない。そもそも……なんであの男の声が聞こえた? 家の窓を見ながら考え込んだ。

それが行けなかったんだろう。

「リエル」

「あ」

 殺気を感じた方向に目を向ければ……。鋭い一陣の凶器が眼球のすぐ傍まで来ていて……その後に顔に鋭い切られた痛みが襲ってきた。





 パトリシアとマーベラスト一行は、現在はワジェライ王国の城の広い屋上部分にある物陰に身を隠していた。あれから、順調にワジェライ王国への侵入を成功させてのらりくらりと、中心部へ向かうと……物々しい巨人の腕のような砲台が運ばれていたところを発見。

 そして屋上であの男が居た。

「それでは試作品を試し打ちと行こうか。相手も相手で手練れだからね。これくらいはやらせて貰わないと」

 パトリシアは、それを見てどうにか侵攻中のリエルに伝えられないかと考え、気付かれるリスクを冒して杖と自分の唇に魔力を込めて歌うように囁いた。

【私の想いを届けておくれ 言葉とともに 風と共に メッセージ】

「着弾予定場所は だ よ 頼むよ【指定撃爆雷電砲 発射】」

 風と共に声を乗せて伝えたい人に言葉を伝える風魔法のメッセージ。着弾予定場所の詳細は残念ながら自分の獣の耳では聞き取れなかった。多少悔やむも、この状況ならばリエル様率いる兵士だろ、そう見切りを付けて気付かれる前に移動しようとしたら。

「ひッ」

 あの巨人の腕のような大きな大砲が、あたりの魔力を吸い上げて一つの雷電の塊となって砲丸となり。ポンッという気の抜けたあとに空へと砲弾が消えていった。その後に襲って来た鼓膜を破るような轟音が地面を揺らし、余波の風は自身の小さい身体を浮かせる。

「あぶねぇ」

「ありがとうございますぅー」

 浮いて高い城から飛ばされると頃を間一髪マーベラスとが、腕を取って防いだ。そうしている間も未だ余波の風はとどまる事を知らずに、身体を消耗させる。大体7分ぐらいだろうか? 空の雲を余波で蹴散らして晴天になるころに徐々に風は収まった。マーベラストはどうにかパトリシアを引き上げた。

 疲労と、下手すれば自分の身体は吹き飛ばされ即死寸前だったという心の負荷で身体が震える。いつの間にかマーベラスト服の端をいた掴んでいたようで、気がついた時には抱きしめられていたことに気がついた。見上げれば心配そうに、こちらを見るマーベラスト。普通にしていればスポーツと暑苦しさが似合う好青年なんだなぁと関心しながら、パトリシアはお礼を言って離れた。

 魔法で、隠した耳と尻尾がでるくらいに動揺して胸の高鳴りをまさかと思ってもう一度パトリシアは、マーベラストを見れば、抱きしめていた時と同じ心配そうな顔でこちらを見て居た。まさか……たったのこれだけで惚れちゃったの? と、自身に説もうしながらも、目を合せると。マーベラストは言った。

「145cm 体重36.6kg 145㎝の女性の平均スリーサイズはバスト76.2cm、ウエスト55.1cm、ヒップ77.5cmだから、パトリシアさんはスリーサイズ」

「馬鹿」

 惚れかけたのが霧散する心配そうな目をして、人のスリーサイズを言うマーベラストに渾身の拳をお見舞いした。両手で殴られた頬をすりすりしながら。

「酷いや、人生で父さんにしかぶたれたことなかったのに」

「充分だと、おもいますよぉー。ふーんだ!」

 これから、暗殺部隊の手引きとか沢山あるんですから速く行きますよ。と間延びした声は気付かずに気配を消して、男の動向を見て屋上から二人離れた。パトリシアは頬をちょっと膨らまして「年下のくせに生意気さんですぅ」と若干憎たらしげに後を付いてくるマーベラストを見ると。

 マーベラストは何を勘違いしたのか、投げキッスを飛ばしてきて。相手のため息を誘った。

 誘われるがままに、パトリシアは盛大なため息をついて経路と現在の状況をまとめて動き出した。

「リエル様、ご無事ですように」




ー小話【チョコットデー2】ー

「むぅ……」

「どうしたカペル? 今日はリエル様の所に行かなくていいのか?」

「最近は顔色が異常に悪いレミリス様やグランド様に邪魔されて行けないんですよ」

 リエルに一日でも長く会いたいのに、何故かレミリスやグランド経由で回ってくる仕事のせいで執務室から離れられないし。行かなくていいのか? と言ってくる父親本人からも中々の量の仕事を回されて居るのだ。とてもじゃないが、暇を取れない。それは我が君も一緒なようで、忙しそうにせっせと仕事を片付けてどこかへと出かけて行った。

「我が君」

 何よりも我が君に……リエルに会いたいです。そう呟きそうになるのを唾と一緒に飲み下して。今日も頑張ろうと羽ペンの先にインクを浸した。


一方のリエルは……。

「もうチョコは一生見たくねぇ」

「奇遇だなグランド……私もだ」

「ゴチャゴチャ言ってないでほら、次」

 ダイヤモンドのように堅いチョコと、もはや塵のチョコだったものをてんこ盛りにさらに乗せて二人の前へと運んだ。がっくりと皿を前にして項垂れる現在のエヴァ王国の雲の上の二人は、これが終わったら二度とリエルにお菓子作りなどさせるものか、と誓った。

何故か普通の料理は出来るのに、何故か絶望的かつ壊滅的にお菓子作りが下手くそだった。

本人は、前の世界だったら普通に出来てたのになぁ? と不思議そうだったが。

それは、貴方が嫌っているそれこそ血筋の成せる技では? と、グランドとレミリスは心の中でそう毒づいた。



果たして、チョコは完成するのだろうか?


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