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ヴァンヴェルディ・ロードキャルメリー・クルクラフト8世

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「だから、女性の二の腕の骨を念入り確かめるこの感覚がいいですって師匠! あぁ、女の子の二の腕最高!」

「わたしぃー辞退したかったですぅー……」

「そう言わないでパトちゃん……」

 強いのに肉欲の女性のことしか頭にない、マーベラスだかなんちゃらの私の不本意な弟子が高らかに性癖を公開している。こういう所を治して黙ってれば女性が付いてくるだろうに……。何度も言いかけた言葉を飲み下して、外を見ればビルのような大きさのキノコが沢山生えている。

 ここはもうクルクラフトの国の中だ。

 使者の言われたとおりに見かけだけ最小限の護衛だけを連れての行軍。一体何が起こるやらと思いつつも、案外何もない旅路の中でボーッと光るキノコや大きなキノコとか、羽の生えた小さなこびとがコッチを指さしてキャッキャ笑っている姿を見ていると、ようやく城の中に付いた。

 思えばあっという間なんだけど、なんだかんだ一週間馬車揺られ続けて身体のあっちこっちが痛い。

 木材建築が中心の妖精の国の物は品質もいいし、人間も獣人も魔族も色々居る。物の取引の為にいろんな他国の人達を呼んで友好関係を気づいているからこその賑わいが目に眩しい。私の所のエヴァ王国も治水さえもっとうまく行けばこれくらいは交易を盛んにしたい物だと、目を細めて案内されるがままに城の中に通される。
 
「凄い大きい木だなぁ……。この中にお城か」

「人間族は大抵そうやって驚くなぁ! この木は世界樹の切れた枝がまた別の木となって大地の樹って名前なんだ。それを俺たちの先祖様が中をくりぬいて城にしたんだ。虫も湧かないし、聖なる結界を自然に張ってくれるしで中々に快適なんですよ~!」

「おおぉー」

「っけ、爽やか系が宣わってら」

 呼ばれるままに王様のところへ案内してくれる一人の爽やかなツンツン頭の緑の羽の兵士さんが気さくにそう教えてくれると、後ろからモテない変態男の呪詛が聞こえたが無視して、あれもこれもと聞いてみた。一応は国王とはいえ幼いんだから多少は許せと思いがらも色々聞けて嬉しかった。
 それに、案外穢れた血だのなんだの言われるかと思ったらそうでもないみたいだし居心地が中々に良いんだよねこの大地の樹の中が。

 そうして、あれよあれよとのほほーんとしているうちに。


「我の名は、ヴァンヴェルディ・ロードキャルメリー・クルクラフト8世だ。歓迎するよ理の輪廻に外れし者と、リエル・メーカー・アンドール」

「はい、リエル・メーカー・アンドールデス。ハイ」

 銀髪が太陽の光にあたると虹色に光を放つ不思議な御髪をお持ちで、目は閉じられたままに口は微笑み、そこから漏れる声は低いバリトン。いつの間にか社交辞令をこなしているうちに、何故か二人っきりでお茶をすることになったんだ。護衛も付けずにだ。な、ん、で? それと私の事を秒速1秒も掛からずにバレたのもなんで?

 そんな私の百面相を面白そうに喉を鳴らして控えめに笑った。

「そう、緊張しなくてもいい。ただ、我はリエル様が統治されているエヴァ王国と交友……同盟関係を結びたいと思って居るんだ」

「嬉しいお申し出で」

「ただ……」








 確かに同盟を結んでくれるなら、願ったりかなったりの有益な物となる。クルクラフトは同盟国に圧を掛けることはない有益で柔和な国家として有名だ。けれど、私の立場でこんな急にいいことが舞い込むはずがない。そう思って居たら案の定、ヴァンヴェルディ様は言葉を切ってずっと閉じられていた左目をカッと見開いて私を見た。赤色の目はゾクリと鋭くて恐怖を煽るには充分な眼力の強さだった。






「リエル様が目指されている戦場に立つ女王というのを実現すると誓うならだが」






「……ソレは何故でございましょうか?」

 何故と聞けば、勿論理由は話そうと先に用意させてた不思議な赤色の花弁が浮かぶ茶をこくりと、人外染みた程に白い喉を揺らして飲んで喋り始めた。

「妖精大国クルクラフトは軍事力に乏しい国だ。職人の手は物を生み出す尊い手を血で浸すのは誰しもが嫌な物だ。だが、誰かがやらればならない。けど、獣人も人間も欲深くてしょうが無い……。けれど、我々は魔力はあれど身体は非力だ……だから妥協したのだよ。欲深い中でもマシな者をね」

「それが私ですか、信じても宜しいのですか? 一目で私は歪だと言うことをお分かりになったものかと……」

「あぁ、大体人間で言う30歳前後の、しかもこの世界の者でない魂の事は一目で把握した。けど、悪性や邪な心を持つ者は、この部屋に入って来れぬ故に……危険の無いものと判断したまでよ。して、どうする?
 
 同盟を受理すれば、ソナタの求める治水に必要な道具や建築技術はこちらで提供しようではないか」

「喜んで、同盟を結ばせて頂きます」

「ふむ、これはこれはこわやこわや」

 何がこわやだよ! 結ばなかったら今後一切の交友は無いと思えって言っているような眼力で睨んでおいて何が怖いだよ! こっちが、こえーわ!!!

 脅しやがってこの野郎という目で見るとカラカラ笑って何度も、こわやこわやと言って国王は笑った。身体は子供だと思ってこの野郎と思って居ると国王が立ち上がって私をプラーンと持ち上げると私を膝の上に置きやがった。一応一国の王だぞ? おーん?

「500年も歳過ぎれば、7つも30も我からすればかわらんて……。これから言うことは必ず他言無用だ……これから10年以内に必ず大規模な戦乱が始まる。アンドール大国の比ではない戦が必ずだ。こちらもやむを得ないとはいえ、幼子を脅してすまなかった。短い間とはいえ、この国を堪能していってくれ不自由は無いように計らおう」


「ありがとう、ございます」

 
 やっぱり戦争があるのは絶対なようで、固い声音と共に少し柔らかい謝罪が頭の上から手と共に降ってきた。本当に幼い子を撫でるような慈しみが感じられる手で数度私を撫でると国王は私を降ろした。

「甘えたくなったらいつでも我のところに来るがいい。今日から一週間細かな取り決めもあるが、良ければこの国を楽しんでいってくれ」

「ありがとうございます。ヴァンヴェルディ様」


 そうやって、後半はグッピーが死にそうな緊張感と緩さの温度差で風邪を引きそうになりながらも歓談は終えた。今日から色々視察というか見て回ろうとしたのだけど。

「いけません」

「いや、遊びに行く気分だって」

「いけません」

「あのー」

「いけません。一週間の馬車の旅で身体は確かにお疲れになっているはずです。今此処で無理をして体調を崩されたらそれこそ国民と、招いて下さったクルクラフト国王様にご迷惑とご心配を掛けることとなります。今日の所はどうか大人しく身体を休めて、明日のために身体を労ることが、リエル様が出来る一番の最善だと、このヌファン失礼ながら進言いたします」

「はい寝ます」

「リエル様! 絵本とかどうです? 眠るまで私読み聞かせちゃいますよー!」

 視察しようとしたら私の優秀過ぎるメイド二人に引き留められて、本物の幼女よろしく絵本を読み聞かせられながら眠ることとなってしまった。夢の中ではソーラが読み聞かせてくれたヘンテコ魔獣のパオガオンに追い掛けられる悪夢を見ながら、朝かな? と目を開けてみると。




「おかしな時間に寝たらこの夜中に起きちゃったよ……。どうしましょうかねーこれは……。」



 寝かせられたせいで、おかしな時間に起床してしまうと言う悲しい事態になってしまったのだ。

 しかも、目が凄い冴え渡ってしまっているのだ……。



「……ちょっと出歩いてみるか」




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