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最終戦争【終】ー完結ー

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「カリスティアちゃん後方に下がって」

 猫の声と言われた通りにパワーから距離と取って下がると、火の鳥みたいな不死鳥みたいな鳥に乗ったメリナちゃんが、パワーの元へ突撃してきた。パワーは間一髪その突撃を避けたのだけど、いつの間にか後ろでニッコリと爪を構えてたメリナちゃんが「遅いよ」とセクシーに、パワーの首筋をペロリと舐めて、一瞬でパワーの羽を爪で毟り切った。

 【【神聖属性無効化結界 リュミエール・ラヴ・マンジャーレ】】

 その後にディザとオカマの詠唱の声が聞こえてすぐに、この雲の内側まで高い所にいる私達も包む薄黒い結界に包まれた。わかりやすく羽が何枚もある天使達の顔が歪んだ。

「リチェルリット王国幹部のメリナ。此処で逃げるか……降伏するのかをお選びくださいな。今のこの状況……ラッパを吹いたくらいじゃどうにも出来ないことは明白だとわかるよね?」

 メリナちゃんの挑発気味の脅しに天使の顔がみるみるとしわがより。【サイレス】が解かれた。サイレスが解かれて漏れた魔力は……最初のエピクの魔力の圧をさらに4倍にしたような重さで……私の意識がふらりと散りとそうになるのを堪えた。【フライ】を維持するだけでもやっとの中で、激高した羽が六枚の天使が杖を構えて町に向かって振り下ろした。

【具現化転移】

 そこから出てきた空間系の刃が5枚放たれた。4枚はメリナちゃんが爪で相殺して、残りの一枚は私が命がけで防ぎきれないからなんとか軌道を逸らしてリチェルリット王都の……多分モルゲンが治した南あたりの街道にそらせた……。怒りませんようにと願いを込めて、剣を6枚羽の天使へと向ける。忌々しそうにこちらを見る天使は下唇を噛みながら背を向けた。

「神の使い達よ! 離脱する」

 それだけ言い渡して、天使達はあっけなく結界を突き破って帰って行った。

「逃げるなら最初からこなきゃいいのに」

「そうにも行かにゃいのが、社会主義だから仕方ないわ。巻き込まれるこっちは嫌なんだけど」

 本当にその通り、メリナちゃんと顔を合せて眉を困ったように下げて互いに笑った。燃える火の鳥はメリナちゃんが手を叩くと手の平サイズになってメリナちゃんの肩へ、感動的な光景に目を輝かせた。


「   ア」

「ん?」

 メリナちゃんと火の鳥のこと話してるときに下から声が聞こえたような気がした。戦争が終わって皆雄叫び上げてるのかと思って下を見たら。

「カリスティア!」

「ちょっとグラス、下手すれば死ぬのにどうしてこんなところに!」

 あの空飛べる魔具は回収したから、飛べるはずのないグラスが転移をこの雲の高さまで繰り返してここまで追ってきた。慌てて私が風魔法でグラスの身体を支えて持ち上げた。グラスはぜぇぜぇと肩を揺らして、綺麗な髪は天使の羽が絡まってたり、中々にお疲れな状態で抱きしめられた。

「あー、そりゃ何も言わずに敵陣の頭領に突っ込んだら、心配通り越して怖いよね」

 大規模魔法の詠唱してたから命拾いしたけど、あの羽たくさんふっさふっさの天使達も長生きしてるから、人間でどうこう出来る強さじゃないし。「あたしも心臓止るかとおもったにゃん、じゃあね~」っと色々言ってメリナちゃんは降りていった。私は……大分死にいそぐような行動だったらしい。何も言わないグラスのカタカタと震える身体を抱きしめ返す。

「本当に、カリスティアは……強くなっても強くなっても私の手から離れていく。もう、行かないでください……」

「ごめんなさい」

 天使達の魔力が遠のくことで安定した魔力で徐々に、下に降りてゆく。降りてゆく途中でなんかデカい氷柱が立っていて「グラス?」と問うと。流石に地上からの転移を繰り返すととても魔力が足りないから、私が予めつくって持たせたポーションの魔力を全部作って氷の柱を限界まで高くして、そこから転移で空に昇ったらしい……んな無茶な。なんと無茶な事をしでかすのさ……苦笑い気味にそういうと胴体が千切れそうな程に力一杯抱きしめられて。

「カリスティアが無茶なことに巻き込まれなければ、する必要はありませんでした」

「ごめんなさい」

 地上に降りるにつれて大きくなる戦争の終わりを喜ぶ人々の歓声。それとは反対にグラスは震えていて……段々と私も怖くなって震えてくる。エピクのようなのの四倍だかの魔力の圧を思い出してぶるりと震える。そのまま地上に降り立った時に、安心感で腰が抜けたのか膝が折れて地面に座りそうになる。今度はグラスが支えてくれて、そのまま前に抱えられてしまった。

 姫抱きなんて恥ずかしい状況なのだけれど、周りの歓声はそれに気づかない。私達だけどっか取り残されたように震えていた。城に向かってグラスはふらりと歩き出す。会話もなく互いに震えながらふらりと城の方へと案内されるままに通された。通される時にグラスは傷があるからポーションをと具現化して飲まそうと蓋を開いて運んでくれるグラスを見上げた。

「え、泣かしちゃった?」

「ええ、全てを通りこして涙が流れてきました。怒りで。貴女が無自覚に危険に犯されて……空間系の魔法を身を挺して守って。ドラゴンを討伐したのに、この手と足では……カリスティアには届かななくて。肝心なときになんにも役に立たなかった自分と、進路を断たれてどうしようも無い事を理解しているのに……カリスティアに怒りを感じてしまう自身の心の狭さへの怒りで、考えて居るうちに……なが、れてきました」

「ごめんなさい……」

 私が死にそうという事が多大なストレスを掛けたようで、ポーションを飲まそうと上を見るとボタボタとグラスは涙を流していた。真顔で最初はなんで泣いているかを語っていたのだけど、それで余計自分の心の状況を見つめることとなったのか、段々とグラスの喉から嗚咽が零れてきた。グラスを見てると段々私も悲しくなってきて目頭が熱くなってほろりほろりと、目から滴が零れてきた。

 それで、結局宴の時になっても結局二人揃って涙が止らなかった。私は私で命がけで守った親友は食べられて死んでるしで……。緋想さんや旦那さんの死体もそろそろ埋めてあげないととか、ドンドン今になって振ってきて段々良くわからなくて……泣きました。

 そうして、城の許可された者が参加出来る宴が開かれた。城の中の大きい広間を

「お前らはこんくらいがちょうどええ、そうやな、一年くらいで元取れるやろ泣け泣け泣いとき」

「それまでに目が腫れて開かなくなる」

 私もグラスも知らないけど功労者だそうで、泣こうが喚こうが宴には引っ張り出されたんだけど。スケイスはスケイスで骨の身体でグビグビ酒飲みながらそう言って。

「……ママは二人の永遠のママだから」

 良くわからないけど、心配は充分つまった渾身のままの一言が暖かい。私とグラスの身体をぎゅっと羽も使って抱きしめて頭を数回抱きしめた後に、ふわりと笑って宴へと戻っていった。

「お゛ふたりとも、死んでしまうんじゃないかと……しん、ぱいで……」

「カリスティアちゃん泣かないで、よかったら僕の……泣いてても邪魔はするんだ」

「当たり前です」

 泣く私達を見て、釣られるように化粧も構わずに泣き出したカロネちゃん。カロネちゃんは女性らしい体躯で私とグラスを抱きしめてオイオイと泣き出した。それに、私とグラスは涙目で互いにカロネちゃんの背中を擦った。カロネちゃんは私とグラスにはない豊かな表情で、泣き出すから逆に私達の涙が引っ込んで来て……笑ってカロネちゃんを慰め続けた。

 そんな中で、私の頭が横からだれかに撫でられたかと思うと横を見るとリュピアちゃんが色香漂う小悪魔的な笑みで、私の身体を抱き寄せようと肩を抱くと、グラスが無理矢理リュピアちゃんの腕を引っぺがして逆に私を引き寄せて抱いた。もうすでに涙は乾いて威嚇するようにリュピアちゃんを睨んだ。リュピアちゃんは小悪魔に笑ったかと思うと、泣き止み始めたカロネちゃんの腕を持って笑って引きずって行った。

「わたくしはまだカリス様とグラス様の元に~!!」

「はいはい、これからは二人もこの国でのんびりできるのですから焦らないでください。貴女はまだ挨拶が済んでないんですからね」

 噂に聞いた話だと、カロネちゃんは男の人の婚姻断り続けてるしなんかリュピアちゃんと良い感じなので……。もしかしたらそういうことなのかなーと思いながら、涙の乾いた目で二人を微笑ましく思いながら手を振って見送った。その後にアルマとリアンが来た。

「嬢ちゃんとグラ「カリスティア様とグラス様」」

「……わざと被らせたな」

「それは、鈍くさい貴方でしょう? 言い掛かりはよしてください」

 挨拶をそこそこに喧嘩をおっぱじめたので、私とグラスは他人のふりをしてそろそろと逃げた。逃げた先にはほくほく顔で料理を運ぶドロウ君がいたので話しかけた。

「お~お前ら泣き止んだか、って、カリスティアちゃんなんでまた泣き始め、あ、え、お、俺のせい!?」

「違うちょっと緋想さんのどこに埋めようって安心してから頭に……」

「気にすんなっていっても死体だもんな。俺はリチェルリットに骨を埋めるつもりだから……すぐに取りに行く。それまで悪いけど待っててくれ。ありがとな」

 罪悪感を感じながらもそれを感づかれないように、隠したニッコリ顔で笑うドロウ君。ドロウ君の笑顔に救われながらも、忙しいドロウ君を引き留めたことの謝罪をして別の方向へと足を進めた。その先にさっき話したスケイスが隅の方でセシルと話しているのを見つけた。見つけてすぐにスケイスは立ち上がり別の方へ……そのスケイスの足の先は、カロネちゃんとリュピアちゃんと話してるママの所だった。すかさずグラスが私の手を握ってセシルの元へと手を引いてくれた。

「宴の場では、速く行かなければすぐに取られてしまいます」

「あぁ、なるほど」

 そう言って、グラスが人を慣れたようにかき分けてまっすぐセシルさんの元へ連れて行ってくれた。相手もいち早く私達を見つけて、少し皺を寄せて笑ってこちらに来てくれた。

「お二人とも、今回はお疲れ様です」

「セシルもお疲れ」「お疲れ様です」

 そうしてセシルとある程度歓談した。セシルもリチェルリットに完全に骨を埋めて暮らすこと。私とグラスのように親によって不利を背負ってきた者達の支援を、セシルさん自身も補助として援助してくれると言うことも。これからも……スケイスを宜しくと言うことも。

「アイツはああ見えて執念深いから、魔物になってまでこの世に降りたってきましたが……僕は諦めるときはスッパリ諦めてしまうので、どうしても魔物になってやることができません。どうか、そのときはアイツをよろしくお願いします。では」

 そう言ってセシルは悲しそうに笑って私の達の方へ背を向けたのだが……。背を向けた者を見た瞬間に私とグラスは凍り着いた。















 セシルの背中に紙が貼ってあって、スケイスの文字でそう書いてあった。この世界にもそのことわざがあることに驚きつつも、どうしようかと思ってグラスと目線を躱して……グラスがセシルを呼び止めた。セシルはどうされました? と猫を被った笑みで、皆に確実に見える位置でこちらに向き直ろうとしたところで、グラスが近づいてセシルさんの肩に手を置いて振り返らないように固定した。

「グラスさんどうされました?」

 セシルが焦るように首だけ回してグラスを見た。私は素早くセシルに張ってある背中の紙を引っぺがして、コレが張ってあったから……と歯切れ悪くセシルに渡した。両肩を固定したグラスは手を離して私と共に張ってあった文章を読むセシルの様子を伺った。何回もモノクルを押さえてしっかり三度首を揺らして見て居た。

ぐしゃりッ!

「カリスティアちゃん、グラスさんありがとうございます。スケイスはどちらにいらっしゃるかご存じありませんか?」

「確かママの所に向かってた」

「ああ! アドラメルクさんという方でしたね。ありがとうございます」

 間違ったことは言ってない。スケイスの無事を祈りながら、紙を握り潰した手を震わせて、隠しきれない苛立ちの足音で宴の席を回り始めた。足音が隠しきれてないので、遠目でちらちら見えるスケイスが上手い具合に、セシルを躱しているところが見えるけど、スケイスが逃げれば逃げるほど靴音が……。スケイス……骨は拾うよ。

 そして二人の鬼ごっこを眺めている間に私の肩がポンポンと叩かれた。だーれだ! と勢いよく叩かれた肩の方を見ると……綺麗に目がかっぴらかれキラキラしたあの……。あのッッ……。

「天使さまぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「グラス転移転移、てんい!!! はやくううううう」

「【転移】」
 
 変態が居た。グラスの左腕に猿のように身体を巻き付けて叫んだ。グラスがすぐに転移を開始してどこからか飛んでくれた。どこだろうと、首を振ると……夜は人気の無い裏のバルコニーの上だった。ずるりとグラスの腕から降りて地べたにぺたんと座る。一瞬でどっと疲れた。座ってすぐに行儀が悪いとグラスに引き上げられて立たされた。今回は終戦の宴が開かれてるけど、明日は復興。バルコニーからは終戦を喜ぶ民達の起こす光が綺麗に見える。

「今回の戦は……死者はいないそうです」

「そう、よかった」

 本心でぽつりと呟いた。手すりに寄りかかり人の営みを見て居るとグラスに身体を引き寄せられて、顎を掴まれると軽く唇をついばまれた。泣きそうだけど嬉しそうな……感情の戻った顔で笑うグラスが月光に照らされて、それはそれは、美しい顔が私に向けられていた。

「カリスティア、私と……共に暮らしましょう。ずっと、ずっと」

 指と指の合間に左手を絡ませられて顔の元に近づけられたと思ったら、その手ごと手首にキスをおとされた。さらに抱きつくように密着されれば、私が丹精込めたグラスの為の腕輪が冷たく私の手首に当たる。そのまま流れるように深くて……やっと重い荷物が降りたような晴れやかな気持ちで舌を絡めた。
 
 もしかしたら……グラスのお母さんはこの光景を未来視してたりして、なんて思って堪能した。

「グラス……これからも一緒に。愛して、ます!」

「私も愛しています。ええ、愛して居ます」

 確かめるように拙い愛を囁いた。まだ、復興やらサクリちゃんやら色々あるけれど……今はこの旅路は一段落。私もグラスも今は……これで一区切りにして笑って愛を囁き合った。



 


 

 

 
 

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