転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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出自の判明

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 集められた幹部達はそれぞれ暇を潰している。神聖なる騎士を納める物は人の歴史を読み解く本を静かにめくり、気になった箇所を自分の手帳に書き記す。騎士の副団長は剣の手入れを危なげなくこなし鍛冶屋顔負けの器用さと確かな目で刃こぼれを念入りにチェックをしている。首を忘れてきた医療に明るい幹部は、首を落としたさいに意思疎通に使う紙を使ってなにかを書き記していた。女装が得意なメイドは私の座る席の横で静かに控えながらも、時間をしきりに気にしては出入り口の扉をチラチラと見ている。

 それぞれが自由に暇を潰せる、そんな自由さが我が国リチェルリットの良いところだ。

 そうして、幹部達が待ちわびたであろう人物のノックがこの場に鳴り響く、この場で唯一のメイドであるリュピアがいち早く動いたが「リュピア殿の手をコレに煩わせるのは忍びないので」とリアンがストップと言うようにリュピアの顔の位置で手のひらをかざした。コレ呼ばわりに思わず私は、あらまぁ……、なんて思ったけれど顔には出さずに「お入りなさい」と喉を震わせた。
 コレ呼ばわりしながらも自ずからドアを開いて迎え入れる所に微笑ましい気持ちになる。先ほどまで本を読んでいた彼もその光景を見て微笑ましいと言わんばかりにふわりと光景に笑いをこぼした。扉から現れたのは……今回の会議の中心人物……アルマだ。

「失礼、ワタクシの大事な剣が錆びてしまっては大変ですので除湿をしてから出直してくださいアルマ様」

「昔からお前は身体が弱かったからな、お前の貧相な腕を錆び付かせてしまうのは不本意だ。出直そう」

「まぁまぁ、お二人とも……アルマ様は雨の中情報を、リアン様はアルマ様のお体を気遣ってのことですのでそう喧嘩せずとも」

「セシル様、ほっといて打ち合わせを初めましょう」

「そうですわ、時間が無いんですもの、二人とも準備が終わったら、後ろに気をつけてこちらに戻ってきなさい」

『ついでにボクの首を探してきてください。お願いします』

 豪雨で第三会議室の中だというのに雨の音が鳴り響く中で、私カロフィーネ、リュピア、セシル、エピオス、リアン、アルマで集まっての会議、今回それを主催したのはアルマという普段は潜んで主張することはない人物からの提案とだけあって、忙しい中でこれだけのメンツが集まったのだった。一人急ぎ過ぎて自分の首を通路に落っことした状態で来訪されているドジおじさん幹部がいますけど。

 肝心のアルマが濡れた自身に気がついて、弟と言い合いながら共に会議室から一時出て行った。喧嘩するくらいならば一緒に居なければ良いのにと事情が知らぬ者が見たらそう思うだろうが、これがあの二人の仲の良い印である。どうでも良い人間には冷酷で冷たく一言も発しない人間似たもの兄弟だから。

にしても……。

 全員分の暖かい紅茶をそつなく分配するメイド服のリュピアを見てみると。最初在った頃の弱々しさは消えたように堂々と幹部のセシルに意見したことに、少し驚きだった。我が国の幹部は下にタメ口聞かれようが気にしないほどの温厚の集まりとは言えだ。上という存在に引け目と恐怖を感じていたリュピアがまた知らぬ所で成長していた所にうれしさ反面に悲しくもある。

 成長するにつれて女性よりもさらに美しく……気高くなってゆくのですもの。こちらを見てあら? というように口元を軽く左手で隠して笑って見せる仕草も全て……女性そのものなのだ。

『多忙であらせられるカロフィーネ様……そろそろ健康診断に来て下さいね。ボクが連行に踏み切る前に』

 会話ようの紙にかかれた内容の後ろに面妖な顔を模したマークが刻まれて居たので、なんですのこれ?っとエピオスのない頭の位置に目をやると『カリスティアちゃんにこうすると文字の感じがまろやかになると教えて貰って……貴族の子供には好評ですよ? これ』

「流石カリス様、可愛いです」

「気持ちの良いほどの手のひら返しですね……健康診断は僕が責任もってエピオス様の元へ姫様をお届けますので安心してください」

 わかりやすく、この御姫様は……と言いたげな瞳でこちらを見つめてくるメイドは、男の癖にやけに女性的な色香をふわりと漂わせてくる。

 カリス様のカが出た時点で急激に面妖な顔のようなマークが愛おしく可愛く見えてきたのだからしかたない。呆れるように言葉で刺してくるリュピアと、優男風に苦笑いセシルから顔をわかりやすく逸らしてみせた。苦笑いと呆れのため息は私は要りませんの!!! 

「我が愚兄がとろ臭くて申し訳ございません。ただいま戻りました」

「待たせた。このひっつき虫の愚弟のおかげで遅れてしまい申し訳ない」

「誰がひっつき虫だ」「誰がとろ臭いだ」

 今度のノックはちゃんと、リュピアの手によってドアが開けられる。開口一番に喧嘩というのは見て居て楽しくもあるものの、毎度のことやられると飽きてくるもの……。剣と魔方陣がそれぞれの片手に携えられる頃に、首のないエピオスの身体がこれでもかっというくらいに、両腕をあげて文字をアピールしながら二人に割り込んだ。

『あぁぁぁ!!!! ボクの首ありがとうございます。わー嬉しいなぁぁぁ!!!』

「書いていないで速く取り返さないと、握り潰されてしまいますよ。エピオス殿」

 首のないエピオスの首がわかりやすく白目を剥いて泡を吹いている。リアンの脇に首を絞められて息を出来ない……というか、取れた首に息なんて概念があるのが不思議でしょうが無い、エピオスという魔物の構造がいまいちわからないわ。セシルも仲裁に加わって、どうにかエピオスの首が元の身体に戻された。会議する前にぐったりとしたエピオスに「これに懲りたら落とさないように」っと釘をさして今回の会議の主軸である、アルマが席についたのを確認して空気を張り詰めさせる。全員席に着きそれぞれの目線とそれぞれの思いでアルマを見据える。

「アルマ・フェアト=アフェクシオン。今回のこの場を設けた理由を述べなさい」

「宗教国家ヘレ・ケッテ・カルゲンの18代目法王が……六年前に消されていたことが判明した。嬢ちゃんが飛ばされた時とほぼ同じ時期に」

 一大事の情報、たしかに一大事の情報ではあるのだが、アルマの目はそれだけじゃないと強く爛々と目線を強めた。場が大なり小なり驚愕に染まる中で、優男と名高いセシルが見せつけるように落ち着き払っているのが気になる所だ。実際にセシル以外の人間がセシルの反応を見て眉をひそめたが「続けなさい」と私が急かしたことでセシルの不信は一旦横に置かれた。
 これほど、わかりやすく見せつけるように何にも反応しなかったのだ。話しの後になにかしらの説明があるはずだ。無いならば逃がさない……! とセシルに人睨みしてからやっと、表情を変えて微笑んだ。優しいの皮のおかげで読めない男よ……ほんと。

「その間に法王が目指していた、排他的宗教の一柱神信仰解体を疎ましく思った者の犯行というのは調べがついているんだが……、反精霊の洞窟に法王は投げ込まれたそうだ」

「法王の目撃情報は?」

「ない。あらゆる神聖とされる服が似合わないと有名で、特徴的な口調で有名な法王だ。上がらないということは死んだ」

「生きています」

 微笑みを崩さないセシルが静かに凛とアルマの話しを切り裂いた。バターナイフで錦を切るような割り込み方にアルマが「話しの途中だセシル」と窘めて再度話しを始めた。微笑みは崩さないセシルに一体なにを考えているのやら……間違っても礼儀を欠く人間でない人間の行動は、衝撃的といって良いほどに驚いた。

「それで、法王が死んだとされた宗教国家が……新しい神を立てた法王ではなく……神を」

「もったいぶらずに速く言え忙しいんだ」

 コツコツと机を叩いて急かすリアン、スッパリと物を言うアルマが珍しく回りくどく言い淀んでいることへの素直じゃない気遣いなのはわかるが、話しの途中で喧嘩されても困る。「神……とは?」っと喧嘩に発展する前に私が再度急かした。お互いに顔を逸らしながらもアルマが、咳払いをして私の目を見ながら言った。

「神の名は……。カリスティア……嬢ちゃんが今宗教国家の中で祭り上げられてる」

「はぁ!?」

 予想外の事実に驚いたリュピアが声を荒げる。すぐにリュピアが荒げた事への謝罪を深々としてから、詳細について聞こうとアルマに再度、目線を写す。横目でセシルを見ると、これはセシルは何も知らないようで驚いた表情で誰よりも固まっていた。

「そして、嬢ちゃんのルーツが僅かだけど明らかになった……嬢ちゃんのヴィスの町に来る前は宗教国家ヘレ・ケッテ・カルゲン出身だ。ヘレ・ケッテ・カルゲンから売られた奴隷の中で子供の頃の嬢ちゃんを見た人間が数名出てきた……真偽はまだ裏付けができてないが」

 年齢の割に高すぎる知能と、願いを叶えるに等しい具現化のスキルと悪魔の予測を上回る行動……そして現在進行形で神と崇められ、強化剤の忘却を治せる科学者を保護という嘘のもと私のお母様を保護に向かっている……カリス様。

「頭がこんがらがりそうですわ……」

 私の苦しい言葉は塵よりも軽く空で散る。報告はわかった……次は……。

「次は……僕ですね」

 直感でもう一つの爆弾を抱えている人間……セシルをこんがらがった頭で眺める。優しい顔にどんな物が隠され下げられているのか……もう、考えるのがおっくうになりそうだ。






 
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