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女であることを
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「今頃はカリス様とグラス様のどちらが、上で下なのでしょうか? 私はカリス様がやはり上でも……いえ、殿方であるグラス様がリードするのは王道的……」
「諦めてはいるけれど、ボクに何も遠慮しなくなったよね……。ボクのドレスはどうしたのさ」
「リュピアも遠慮がありませんわね。一国の姫にドレスを選ばせるなんて……やっぱりコレですわ。黄色かオレンジのドレスよ」
「選びながら二人のこと妄想する君に言われたくない。ボクはやっぱりオレンジとか暖色系が合うかな」
厄災の到来をペルマネンテが迎える中で、表向きはこのリチェルリットを継ぐ王女としての社交界から戻りぐったりしている中で、専属メイドのリュピアがボクにも着せろということで王女をこき使っているところ。脱げば確かに男としての骨格が現れるし、ほどよく付いた筋肉は確かに性別を感じさせる物だが、整った童顔よりの顔立ちと女性の男役のような美麗な顔立ちのおかげで、男の服も……女性の着るドレスさえも難なく着こなすリュピア。
「それで、着せてあげるのですから、知り得たとこを教えなさいな」
早々にコルセットなどドレスに必要な物を見繕う。世界中の姫を探しても自身でドレスの着方を知っているのは私くらいだろう。子供の頃は正直誰にも会いたくないせいで、自分でできることは自分で極力やっていたおかげ、こうしてそれを経験として他人の為に扱えるのは……カリス様とグラス様のおかげ……。王女であり姫である自分がこうやってコルセットを握りしめている今を見て、少し笑ってしまう。「ついに妄想のしすぎで頭が……」っと声が振ってきたので顔を引き締めて、頭を叩き速く話しを始めるようにと急かした。
「保護を取り付けたアダムスが、君のお母上を使って薬を使っていた……かな。バレたら戦争になるとかで世界より自国を優先し始めたおかげで、人身売買組織の詳細を忍びこんでチマチマ探るよりはやりやすくなったよ。例えば……カリスちゃんは悪魔の策略が効かないとか」
お母様の部分だけ言いにくそうにしながらも伝えてきた。なるほど、だからわざわざ国の幹部を動かしてまでカリス様達を足止めに来たのか……。もし、本当にそうなれば、我が国リチェルリットに知られるだろうタイミングで国境を断絶すれば……。取引をしていた人身売買組織の契約違反として報復は免れず。かといって、このままカリス様を迎え入れて……ラブマルージュが提示した契約どおりに母様を明け渡しても、人身売買組織の契約の強化剤が納品することができなくなる。どこに行っても国の終わりね。
「まぁ……それは容易に想像つきますわ。悪魔自身もカリス様がいたせいで、私とグラス様を相思相愛にすることができなくて悔しそうでしたもの」
「グラス……よかったな。こんな妄想爆裂王女の尻にしかれ……イテテテ」
「もういっぺん言ったらコルセットもっとギチギチにしますわよ」
コルセットの痛みと苦しみに悶絶するリュピアを脅しながら、今後の予定を考える。お母様が保護されたら次に自然の意思からの初代女王の魂返却の儀式を執り行わなければならない。悪魔は最も尊き自然の身元に国王の魂を預けた。その魂を失うことが無きように……平等にて手を差し伸べる自然の意思、秩序の守り手に……。
「そう……ね。ここをこう……できましたわ」
「おー。流石ボクかわいいなぁ」
「……絶対にグラス様とカリス様が今の貴男を見たら、性格でドン引きするわね」
人の姿見で可憐にくるくると回る様は凛々しき妖精王と行って良いほどに、可憐すぎずかといって王子的過ぎず。腕を疲れさせている本物の王女の私より威厳がある姿で、何もしていなくても雰囲気で発言に信憑性が持てるカリスマを持つ令嬢のように変身してしまい、感動半分と発言のナルシストさへのドン引き半分、微妙な気持ちで機嫌をよくしているリュピアを見る。
「うん、女の人でいるボクはボクの中で何よりも大好き」
姿見に手を置き、憧憬に似た目で鏡のごしに目を合せられてなんとも言えない。憐れみと申し訳なさが喉から這い出てくる。本来ならば国の大事な民はなによりも大事に、そして何よりも健やかに育つように計らう為に我々王族がいる。このリュピアはその王族から零れ出た……見落としという過ちの証。謝罪も何も出ない悔しさで手が震える、太古の昔に、必要悪の町の町なんて作っておいて……何も意味がないではないか。そんな、言ってもしかたのない自責が降り積もる。
リュピアは女性としての自分に憧れる気持ちから……。この女装癖に完全にのめり込んだ理由は父性の否定である。リュピアはカリス様に助けられる以前は母親に暴力を振るわれていた。けれど、彼は母親を完全には憎んではいなかった……嫌いとは言っていたが。彼が本当に憎んでいるのは父親……強姦で子供を産ませたあげくに途中から家庭を放棄して、母親とリュピアを置いて逃げた父親。
そうして、二人が二人で家族仲良く寄り添おうと思った時に……今度は別の女を見つけて微笑む夫を見てリュピアの母親は壊れた。
虐待が始まったのはそこからだ。父親と同じ性別なのを重点的責められ続けたリュピアは、そのときから母親の為に無意識に少しずつ女であることを求め始めた。そうしてカリス様に助けられてから、自身の無意識の女装癖を肯定……人の役に立つこととエピクに道を示された結果のリュピア。
「今も昔も王族には恨みは持ってないよ……。泣きそうな顔しないでよ、悪魔に犯された国を潰す最後の希望なんだからさ」
「してませんわ」
自身の声が涙ぐんでいても、鏡の中の自分が泣きそうでも笑って言い返す。泣いている暇なんて私にはない……なによりも私より泣きたくて、手を差し伸べられることを求めている人がいるのだから。意地で笑ってやると鏡越しの目線が外れたと思ったら、リュピアが腹を抱えて笑い始めた。
「鏡の中の自分の顔を見てそういえるなんて、本当に図太くなったね」
「ええ、母の墓を暴いた時から色々腹は括れましたのよ?」
「無理はしないでね、次は国王様相手にラブマルージュ様と……アダムスの擁護でリチェルリットに戦争を起こさせないように立ち回らなきゃ。カロフィーネ様の発言が頼りなんだよ」
ある程度リラックスしたところで本題を切り込むのは彼の癖なのか、笑った顔をすぐに真剣に戻ったと思ったら姿見から振り返りずっと後ろに待機していた私の方を向いて言ってきた。
そう、今回は国際問題になりかねない。母親が生きているという情報はまだ父親やエピクに引っかかってはいないけれど漏れるのは時間の問題、そうなった場合はディザが戦争することを進言する可能性がある。もう一つは薬の生産を合法的にコントロールをするか。
人身売買組織のトップはディザの手によって国の不利益になることを行えないように契約されている。それはこの国の誰でも知っていることだ。だから今回の強化剤はディザの指示で世界に出回らした可能性が高くもある。どっちにしろ可能性は低いけれど戦争の方向へ話しを持って行く気ならば全力で止めなければならない。
「よし、頑張りますわ……カリス様とグラス様」
「うん、頑張って、次はカロフィーネ様の婚約者が……」
「も~! どいつもこいつも、私の友達が大変な時に婚約者の話題なんて持って来て……嫌がらせですわ」
「諦めてはいるけれど、ボクに何も遠慮しなくなったよね……。ボクのドレスはどうしたのさ」
「リュピアも遠慮がありませんわね。一国の姫にドレスを選ばせるなんて……やっぱりコレですわ。黄色かオレンジのドレスよ」
「選びながら二人のこと妄想する君に言われたくない。ボクはやっぱりオレンジとか暖色系が合うかな」
厄災の到来をペルマネンテが迎える中で、表向きはこのリチェルリットを継ぐ王女としての社交界から戻りぐったりしている中で、専属メイドのリュピアがボクにも着せろということで王女をこき使っているところ。脱げば確かに男としての骨格が現れるし、ほどよく付いた筋肉は確かに性別を感じさせる物だが、整った童顔よりの顔立ちと女性の男役のような美麗な顔立ちのおかげで、男の服も……女性の着るドレスさえも難なく着こなすリュピア。
「それで、着せてあげるのですから、知り得たとこを教えなさいな」
早々にコルセットなどドレスに必要な物を見繕う。世界中の姫を探しても自身でドレスの着方を知っているのは私くらいだろう。子供の頃は正直誰にも会いたくないせいで、自分でできることは自分で極力やっていたおかげ、こうしてそれを経験として他人の為に扱えるのは……カリス様とグラス様のおかげ……。王女であり姫である自分がこうやってコルセットを握りしめている今を見て、少し笑ってしまう。「ついに妄想のしすぎで頭が……」っと声が振ってきたので顔を引き締めて、頭を叩き速く話しを始めるようにと急かした。
「保護を取り付けたアダムスが、君のお母上を使って薬を使っていた……かな。バレたら戦争になるとかで世界より自国を優先し始めたおかげで、人身売買組織の詳細を忍びこんでチマチマ探るよりはやりやすくなったよ。例えば……カリスちゃんは悪魔の策略が効かないとか」
お母様の部分だけ言いにくそうにしながらも伝えてきた。なるほど、だからわざわざ国の幹部を動かしてまでカリス様達を足止めに来たのか……。もし、本当にそうなれば、我が国リチェルリットに知られるだろうタイミングで国境を断絶すれば……。取引をしていた人身売買組織の契約違反として報復は免れず。かといって、このままカリス様を迎え入れて……ラブマルージュが提示した契約どおりに母様を明け渡しても、人身売買組織の契約の強化剤が納品することができなくなる。どこに行っても国の終わりね。
「まぁ……それは容易に想像つきますわ。悪魔自身もカリス様がいたせいで、私とグラス様を相思相愛にすることができなくて悔しそうでしたもの」
「グラス……よかったな。こんな妄想爆裂王女の尻にしかれ……イテテテ」
「もういっぺん言ったらコルセットもっとギチギチにしますわよ」
コルセットの痛みと苦しみに悶絶するリュピアを脅しながら、今後の予定を考える。お母様が保護されたら次に自然の意思からの初代女王の魂返却の儀式を執り行わなければならない。悪魔は最も尊き自然の身元に国王の魂を預けた。その魂を失うことが無きように……平等にて手を差し伸べる自然の意思、秩序の守り手に……。
「そう……ね。ここをこう……できましたわ」
「おー。流石ボクかわいいなぁ」
「……絶対にグラス様とカリス様が今の貴男を見たら、性格でドン引きするわね」
人の姿見で可憐にくるくると回る様は凛々しき妖精王と行って良いほどに、可憐すぎずかといって王子的過ぎず。腕を疲れさせている本物の王女の私より威厳がある姿で、何もしていなくても雰囲気で発言に信憑性が持てるカリスマを持つ令嬢のように変身してしまい、感動半分と発言のナルシストさへのドン引き半分、微妙な気持ちで機嫌をよくしているリュピアを見る。
「うん、女の人でいるボクはボクの中で何よりも大好き」
姿見に手を置き、憧憬に似た目で鏡のごしに目を合せられてなんとも言えない。憐れみと申し訳なさが喉から這い出てくる。本来ならば国の大事な民はなによりも大事に、そして何よりも健やかに育つように計らう為に我々王族がいる。このリュピアはその王族から零れ出た……見落としという過ちの証。謝罪も何も出ない悔しさで手が震える、太古の昔に、必要悪の町の町なんて作っておいて……何も意味がないではないか。そんな、言ってもしかたのない自責が降り積もる。
リュピアは女性としての自分に憧れる気持ちから……。この女装癖に完全にのめり込んだ理由は父性の否定である。リュピアはカリス様に助けられる以前は母親に暴力を振るわれていた。けれど、彼は母親を完全には憎んではいなかった……嫌いとは言っていたが。彼が本当に憎んでいるのは父親……強姦で子供を産ませたあげくに途中から家庭を放棄して、母親とリュピアを置いて逃げた父親。
そうして、二人が二人で家族仲良く寄り添おうと思った時に……今度は別の女を見つけて微笑む夫を見てリュピアの母親は壊れた。
虐待が始まったのはそこからだ。父親と同じ性別なのを重点的責められ続けたリュピアは、そのときから母親の為に無意識に少しずつ女であることを求め始めた。そうしてカリス様に助けられてから、自身の無意識の女装癖を肯定……人の役に立つこととエピクに道を示された結果のリュピア。
「今も昔も王族には恨みは持ってないよ……。泣きそうな顔しないでよ、悪魔に犯された国を潰す最後の希望なんだからさ」
「してませんわ」
自身の声が涙ぐんでいても、鏡の中の自分が泣きそうでも笑って言い返す。泣いている暇なんて私にはない……なによりも私より泣きたくて、手を差し伸べられることを求めている人がいるのだから。意地で笑ってやると鏡越しの目線が外れたと思ったら、リュピアが腹を抱えて笑い始めた。
「鏡の中の自分の顔を見てそういえるなんて、本当に図太くなったね」
「ええ、母の墓を暴いた時から色々腹は括れましたのよ?」
「無理はしないでね、次は国王様相手にラブマルージュ様と……アダムスの擁護でリチェルリットに戦争を起こさせないように立ち回らなきゃ。カロフィーネ様の発言が頼りなんだよ」
ある程度リラックスしたところで本題を切り込むのは彼の癖なのか、笑った顔をすぐに真剣に戻ったと思ったら姿見から振り返りずっと後ろに待機していた私の方を向いて言ってきた。
そう、今回は国際問題になりかねない。母親が生きているという情報はまだ父親やエピクに引っかかってはいないけれど漏れるのは時間の問題、そうなった場合はディザが戦争することを進言する可能性がある。もう一つは薬の生産を合法的にコントロールをするか。
人身売買組織のトップはディザの手によって国の不利益になることを行えないように契約されている。それはこの国の誰でも知っていることだ。だから今回の強化剤はディザの指示で世界に出回らした可能性が高くもある。どっちにしろ可能性は低いけれど戦争の方向へ話しを持って行く気ならば全力で止めなければならない。
「よし、頑張りますわ……カリス様とグラス様」
「うん、頑張って、次はカロフィーネ様の婚約者が……」
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