転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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魔族の国の国境町

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「なんじゃ、お前らシャキッとせんかい!!!」

 そりゃ、デブ王はスリープであの厄介な森の主が来てもくーくー寝てられただろうけどこっちゃー寝ていられないし、二人を安全な所まで運ぶの疲れたし、怖くて寝れないし散々であるので全身全霊を持って、デブ王の足を踏んでやったが、体重が軽いのでたいした威力にならなく鼻で笑われた。ウィーンは悪魔なので体力が人間と違い一日歩き通しでも疲れた様子が全くなかった。グラスはしきりにこちらを窺って、疲れたら何時でもおぶるっと言ってくれる。なんで息子はこんな立派なのに親父ときたらこんな威張るしか取り柄のないデブなんだろう。

 カリスティアはそう思って、グラスにお前はこんな、クークー寝てたあげくに気遣いの一つもなく魔物が少なくなる街道に出た瞬間に意気揚々と先頭を陣取るクソになるなと、頭を撫でる。グラスが相変わらずの無表情だけれども、不思議そうな顔をして撫で返してくる。撫でられたら撫で返すのが癖になっているのかな? なんて、一日歩き通しに追い打ちを掛けるように徹夜で幾分かハッピーになった頭で緊張感無く考える。

 木の腹の抉れた奇妙な森を潜って、魔族の国へと続く街道は今までのランダム暴力気候なんて嘘のように喉かで、カリスティアは歩きながら、うとうと、コクコクと船を漕ぎ始める。気づかずに進むデブ王を無視して他二人は眠そうなカリスティアの為に一度立ち止まる。

「グラスーおぶってー。眠い」

「はい、首に下げてる水筒をこちらによこしてください。当たると痛いですから。無理しないでくださいね。これからも何があるのかわからないのですから」

「くぉぉぉらぁぁ、貴様ら遅いぞ!!!」

「……カリスティアの安眠を妨害したら、死ぬ寸前まで喉を凍らしましょうか」

「まあまあ」

 すよすよと温暖な気候にあやされて、寝息を立てるカリスティアを起こさないように、ペースを落として歩く一行。デブ王も、二人と離れれば命が危ないのを知いるので、同じくペースを落とすも先頭は陣取ったまま。グラスはいざとなったらこの肉壁をおとりにしてウィーンを連れて逃げようと、考える。

 いくつか魔族の部類の獣人や魚人と変わり者の悪魔とすれ違うことが多くなった頃に、少し警戒をといてウィーンとの会話の会話をポツポツとし始めた。言い知れ本能的危機感を煽るような彼女を完全には信頼はしていないが、今のところ敵にはならない者として判断しているグラス。

「グラス君とカリスティアちゃんっていくつなの?」

「私が12歳でカリスティアは4歳身体は8歳ですね」

 それに禁術の発祥は悪魔族だ。禁術の種類の一つとして傷心魔術の存在をグラスは知っているが、習得の仕方や技、傾向、副作用などを記している書物は、国王か成人済みの王族と幹部とその補佐など限られた者しか見ることが出来ず、各国の王国図書館の禁句と呼ばれる所にしかなく、見ようも知りようもないのだ。雑魚とはいえ時折A級モンスターも入り交じる中、錆びたハンマーで敵を10分掛けずに一掃する受肉済みの悪魔なのだから、何か知っているだろうと踏んで、わざわざ身体と元の年齢が不一致であることを伝えたのだ。

(カリスティアでさえ、禁術のことは感覚的にでしかわかっていない危険な状態で、ウィーン様の顔の陰り方からみて、禁術のことは聞いてないと……いや、そもそも禁術の発祥が悪魔だということを、カリスティアは知らない可能性が……)

「身体と実年齢のズレは禁術の症状だね」

「えぇ、彼女は数回ほど傷心魔術と呼ばれる禁術を使用しています。ズレはそのためです……なにか治療法などご存じではないでしょうか?」

 グラスが問うと、ウィーンは背中の黒い羽を数回バサバサと動かしてから顎に左手を当てて、ムムムっと考え込む、背中からズレ落ちてきたカリスティアを背負い治して、必死に記憶を探ってることが窺える顔を見つめて答えを待つ。

「うーん、それならばカリスティアちゃんは良くて廃人になってるはず……廃人になってない時点で儲けものだけども……。身体と実年齢のズレは傷心魔術の場合は自己嫌悪の類いだから……無理ね。禁術、特に傷心魔術の場合は治療法は基本ないわ。昔の悪魔族の一人が人間の傷付いた心はどんな力をもたらすだろうか? そんな興味から始まった魔術だから治療法なんて考えられてないわ。一体どこで禁術覚えたんだか」

 治療法は無いという、予測通りの回答で、グラスは心が落胆の方向へ傾くような気がした。“基本は”ということなので、カリスティアのような特殊なスキルで上書きや治療などを施せるかもしれない。多少の希望のおかげで完全に落胆することはなく、次の事へと頭の駒を進めた。

「指輪……か」

「ん?」

「いえ、なんでもございません。有益な情報ありがとうございます」

 どこで?っというのはグラスにはわからないが、あの傷心魔術を使用した時に禍々しく共鳴していた指輪が原因だろうと、グラスは推測する。あのときの決闘のさいに、氷の霧で包んである程度保護はしていたのだが、幹部の人達にはバレているだろう。確実に傷心魔術ということを知っている人物は自分の知る中で、ラブマルージュ様、メリナ様、ディザ様、エピク様の四人、国に帰ったらエピク様に情報を買いに行くか、ディザ様に教えを請おうかと結論を出すと、先頭を陣取っていたデブ王が騒ぎ始めて、グラスの表情がすん、と不快という感情で凍てつく。

「おい、そこの汚らしいじゅうじ「こんにちは、良い天気ですね。こちらの町に入りたいのですが身分証明書はこちらでよろしいでしょうか?」」

 デブ王が騒いですぐに、町と外を繋ぐ門が見えて予想通りに軽薄に獣人門番に喧嘩を売りに行く、この馬鹿に言わせないと言葉を被らせて、カリスティアを即座にウィーンに渡してすぐに出せるように仕舞っている、身分証明書の魔術カードを門番に見せると、すぐに手続きが済み町の中へ入れることとなった。

「ふぁー……あれ? ここどこ」

「あっ! カリスティアちゃんおはよう。まだ眠い?」

「ん、起きるー……すぅ……ぴー」

 町の騒がしさに一旦起きるカリスティアは、起きると言いながら再度寝入ってしまい。グラスは微笑ましく思いながらも、このままだと夜が眠れなくなると、ウィーンの背中で寝入るカリスティアを人通りの少ない隅っこに移動しながら、揺すって起こす。

「むぁー……ぴゃあ!」

「おはようございます。カリスティア」

 ウィーンが起きたカリスティアがすぐに降りられるように、隅でしゃがんだ所で自分の身体で隠しながら半開きの唇にキスを落とすと、すぐにカリスティアは顔を真っ赤にして飛び起きた。言いようもない征服感が自分の身体を駆け巡る。もっと驚いて赤くなる表情が見たいと思うも、なんとかその気持ちを抑えて、カリスティアにおはようございますと挨拶をする。後ろのデブ王が「イチャイチャするなマセガキ」とブーイングを言ってくるが気にせずに。平常心を装って、飛び起きた彼女の名前を呼んだ。


「おはよう、カリスティアちゃん」

「おはよ? グラスとウィーンさんとデブ王…… おおおおおおお!!! 凄いわふさふわ、ふさふさ、ふわふわ、ふわふわ、一杯!!! 獣人の知り合いはいるけど、友達居ないから作れないかな~」

「できるわけねーだろ!!!」

 なんか第三者からダメ出しされた。なによ、私にもふもふの友達の一人や二人居たっていいじゃない!なんてことは置いておいて、近くの武器屋から怒号が聞こえる。グラスもウィーンもデブ王もスルーして別の所へ行くつもりだが、気になるので三人を置いて武器屋の扉を開ける。グラスが寸前の所で気づいて走ってカリスティアを止めに行くが、間に合わず……。

「待ちなさい!カリスティア!!!」

「ごめんくださーい!!!」
















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