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一撃で決める【6】
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「さぁーこのやる気のままに、我が儘に……構えてぇぇぇぇ、ゴー!!!」
先に動いたのはグラス。始まった瞬間に後ろに飛び地面一体を凍らせるも、シトルは凍った地面に槍を突き刺して棒高跳びのように宙に浮き短剣でグラスに向かい落ちてくる。グラスは氷の刃で攻撃できる場面ではあったが、わざわざ槍を手放して、反撃されるのをわかって空中で攻撃して来たのが気になり何もせずに後方に限界まで下がる。
「やっぱり引っかかんねぇか。戻れ」
戻れのかけ声と共に凍った地面に突き刺さっていた槍が転移してシトルの手元へと戻ってくる。シトルが苦笑いをして「流石お勉強がおじょーずなお坊ちゃまで」っと改めて構え治してこちらを睨み付けてくる。この調子でいけば衣服と短剣の方にも何かしらスキル投与されていると考えるのが普通だ。
「持ち主の合図とともに主の元へと戻る【武器の忠誠】を投与した魔術武器でしたか。反撃していましたら私は串刺しにされていました。危なかったです」
「あーらら、投与してあるスキルまでばれてーらッよ!!!」
それぞれ大幅にずれた短剣と槍のリーチを使いこなし、防戦に徹するグラスを休み無く攻撃し続ける。それでもグラスは只管に躱して、当たりそうなら薄い氷の壁を魔法でだし軌道を逸らすのに徹する。一向に攻撃してこないグラスに不信感を募らせるシトル。
シトルはオーダーメイドの革の腰ポーチに入れている3本の高品質ポーションを破産覚悟で天才と名高い元王子の為に持ってきたのだが、一向に攻撃してこない。自分が強いから防戦一方になっているのか、それともただ自分の隙を窺っているのかわからない。この凍てついた無表情のせいで、どちらとも判断が付かない。付かない故に『不気味』という感情をシトルは感じてしまっていた。
シトルが不気味さを感じているグラスは、余裕を持って彼の攻撃を避け続けていた。今回戦う人間の技やスキルの情報を極力与えない最善は一撃必殺か、一つの技や魔法を使い続けて打ちのめせばいい。カリスティアが後者の選ぶなら自分は前者を選んで今戦っている。
(カリスティアのことですから、何も考えずに最善を選んだのでしょうけど。不運なのか幸運なのかわからない人だ)
それでは、前者の最善を持って自分は価値をもぎ取ろうと、僅かに振ったあとの立て直しが短剣のほうが遅いのでタイミングを合わせて懐に入る。そして彼の腰のポーチに魔力を込めてから高品質ポーション三本の代金をこっそり胸ポケット入れてから、ショートワープで懐から抜け出す。
「対戦ありがとうございました。代金はちゃんと胸ポケットにお返ししてあります」
「まて! なにッ」
対戦のお礼と共に遠隔で魔力を込めて、高品質ポーションの持つ本来の魔力を自分の魔力でさらに強化した即席の氷の爆弾で彼を凍り漬けにして試合を終了させた。審判の勝利宣言も聞かずに控え室へと歩いて戻っていく。残りの一開戦も幹部や強豪の一人勝ちだろうから、カリスティアが見たいと言わなければ彼女を連れて帰ろうと早足に会場を後にした。
「三本はあたりで、実際は高品質ポーション3つでしたか……これではダメですね。もっと観察をしなければ」
ーーーーーーーー
その頃のカリスティア
「うわぁーグラス容赦ないなー。いらっしゃいませー! 対戦後の疲労回復にヒン草の毒抜き滋養強壮タブレットありますよー。 私が普段取っているのでなんと……破格の銀貨5枚に! 味が苦手な人でも飲みやすいように、甘い味付けのドリンクもお望みとあらばおつけしまーす!!」
早いうちにグラスなら問題ないと判断したカリスティアは、大会の為に教えて貰った薬学を利用して薬を作って控え室の面々相手に商売を始めていた。この世界は前の憎たらしい世界と違って、筋の通らない暇つぶしのクレーマーは少ないので、接客業にトラウマを持つカリスティアでも接客スマイルを駆使して売り上げを伸ばしてゆく。
「貴方は一体なにをしているんですか?」
なんとなく、グラスがこっちに来る気がしてちょこちょこ商品を片しながら売っていたらグラスが来て、早速聞かれたので、こんな所でなぜ商売をしている?っとの問いに答えた。
「あぁ、グラスお疲れー。だって控え室で商売しちゃいけないって書いて無かったもーん。じゃあ帰ろうか、それとも試合見る?」
「いえ、帰りましょう。どうです?お城に居られます姫とリュピア様に、お土産でも買いに行きませんか?」
「いいねー。買うんだったら、血塗られた仮面と吸血鬼の錆びた腕ってのが露店で売ってたけど、どっちを二人にあげたら喜ぶかな?」
「その露店以外のものでしたらお二人とも喜んでくださると思います」
冗談だったのだけれども、スッパリと一刀両断されてしまったので、冗談だと言おうとしたら最近は無表情とより見ることの多くなったグラスの笑顔が目の前に在って「冗談もほどほどにして行きますよ」と笑って手を繋いで引いてくれた。どうやら冗談とわかってノッてくれたらしい。彼の心の成長を嬉しく思いながら腕を引かれて闘技場を後にした。
「ん? 手と身長が……大分違う」
「えーっとそれはー成長したということで、ハハハ」
「この祭り事が終わったあとに説明してください」
「ハイ」
カリスティア自体、祭り事に向けて何もしないわけではなかった。彼女はアルバイト以外にも祭り事に向けてまっすぐにやりたいように修行を行い、今を迎える。彼女が何をして何をやってどういう結果をもたらすのかは誰もわからない。自分自身すらも。
(うーん、やっぱりバレたか)
先に動いたのはグラス。始まった瞬間に後ろに飛び地面一体を凍らせるも、シトルは凍った地面に槍を突き刺して棒高跳びのように宙に浮き短剣でグラスに向かい落ちてくる。グラスは氷の刃で攻撃できる場面ではあったが、わざわざ槍を手放して、反撃されるのをわかって空中で攻撃して来たのが気になり何もせずに後方に限界まで下がる。
「やっぱり引っかかんねぇか。戻れ」
戻れのかけ声と共に凍った地面に突き刺さっていた槍が転移してシトルの手元へと戻ってくる。シトルが苦笑いをして「流石お勉強がおじょーずなお坊ちゃまで」っと改めて構え治してこちらを睨み付けてくる。この調子でいけば衣服と短剣の方にも何かしらスキル投与されていると考えるのが普通だ。
「持ち主の合図とともに主の元へと戻る【武器の忠誠】を投与した魔術武器でしたか。反撃していましたら私は串刺しにされていました。危なかったです」
「あーらら、投与してあるスキルまでばれてーらッよ!!!」
それぞれ大幅にずれた短剣と槍のリーチを使いこなし、防戦に徹するグラスを休み無く攻撃し続ける。それでもグラスは只管に躱して、当たりそうなら薄い氷の壁を魔法でだし軌道を逸らすのに徹する。一向に攻撃してこないグラスに不信感を募らせるシトル。
シトルはオーダーメイドの革の腰ポーチに入れている3本の高品質ポーションを破産覚悟で天才と名高い元王子の為に持ってきたのだが、一向に攻撃してこない。自分が強いから防戦一方になっているのか、それともただ自分の隙を窺っているのかわからない。この凍てついた無表情のせいで、どちらとも判断が付かない。付かない故に『不気味』という感情をシトルは感じてしまっていた。
シトルが不気味さを感じているグラスは、余裕を持って彼の攻撃を避け続けていた。今回戦う人間の技やスキルの情報を極力与えない最善は一撃必殺か、一つの技や魔法を使い続けて打ちのめせばいい。カリスティアが後者の選ぶなら自分は前者を選んで今戦っている。
(カリスティアのことですから、何も考えずに最善を選んだのでしょうけど。不運なのか幸運なのかわからない人だ)
それでは、前者の最善を持って自分は価値をもぎ取ろうと、僅かに振ったあとの立て直しが短剣のほうが遅いのでタイミングを合わせて懐に入る。そして彼の腰のポーチに魔力を込めてから高品質ポーション三本の代金をこっそり胸ポケット入れてから、ショートワープで懐から抜け出す。
「対戦ありがとうございました。代金はちゃんと胸ポケットにお返ししてあります」
「まて! なにッ」
対戦のお礼と共に遠隔で魔力を込めて、高品質ポーションの持つ本来の魔力を自分の魔力でさらに強化した即席の氷の爆弾で彼を凍り漬けにして試合を終了させた。審判の勝利宣言も聞かずに控え室へと歩いて戻っていく。残りの一開戦も幹部や強豪の一人勝ちだろうから、カリスティアが見たいと言わなければ彼女を連れて帰ろうと早足に会場を後にした。
「三本はあたりで、実際は高品質ポーション3つでしたか……これではダメですね。もっと観察をしなければ」
ーーーーーーーー
その頃のカリスティア
「うわぁーグラス容赦ないなー。いらっしゃいませー! 対戦後の疲労回復にヒン草の毒抜き滋養強壮タブレットありますよー。 私が普段取っているのでなんと……破格の銀貨5枚に! 味が苦手な人でも飲みやすいように、甘い味付けのドリンクもお望みとあらばおつけしまーす!!」
早いうちにグラスなら問題ないと判断したカリスティアは、大会の為に教えて貰った薬学を利用して薬を作って控え室の面々相手に商売を始めていた。この世界は前の憎たらしい世界と違って、筋の通らない暇つぶしのクレーマーは少ないので、接客業にトラウマを持つカリスティアでも接客スマイルを駆使して売り上げを伸ばしてゆく。
「貴方は一体なにをしているんですか?」
なんとなく、グラスがこっちに来る気がしてちょこちょこ商品を片しながら売っていたらグラスが来て、早速聞かれたので、こんな所でなぜ商売をしている?っとの問いに答えた。
「あぁ、グラスお疲れー。だって控え室で商売しちゃいけないって書いて無かったもーん。じゃあ帰ろうか、それとも試合見る?」
「いえ、帰りましょう。どうです?お城に居られます姫とリュピア様に、お土産でも買いに行きませんか?」
「いいねー。買うんだったら、血塗られた仮面と吸血鬼の錆びた腕ってのが露店で売ってたけど、どっちを二人にあげたら喜ぶかな?」
「その露店以外のものでしたらお二人とも喜んでくださると思います」
冗談だったのだけれども、スッパリと一刀両断されてしまったので、冗談だと言おうとしたら最近は無表情とより見ることの多くなったグラスの笑顔が目の前に在って「冗談もほどほどにして行きますよ」と笑って手を繋いで引いてくれた。どうやら冗談とわかってノッてくれたらしい。彼の心の成長を嬉しく思いながら腕を引かれて闘技場を後にした。
「ん? 手と身長が……大分違う」
「えーっとそれはー成長したということで、ハハハ」
「この祭り事が終わったあとに説明してください」
「ハイ」
カリスティア自体、祭り事に向けて何もしないわけではなかった。彼女はアルバイト以外にも祭り事に向けてまっすぐにやりたいように修行を行い、今を迎える。彼女が何をして何をやってどういう結果をもたらすのかは誰もわからない。自分自身すらも。
(うーん、やっぱりバレたか)
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