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見てしまったグラス【4】
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カリスティアが泣いていたあの日から、グラスはカリスティアが泣いていたという情報は言わずにエピオスに頼み込み彼女は【高熱】ということにして貰った。流石に症状の詐称などは理由なしでは了承して貰えずにこのエピオス様にだけ、カリスティアが【売られたか捨てられる前であろう記憶にない自分】を嘆いて泣いたと嘘の情報で納得していただいた。いや、嘘なのは気づいているだろうが、患者として迎え入れてもいい心身状態だったからカリスティアを受け入れたのかもしれない。
「ん? カロフィーネ姫?こんな早朝に、カリスティアのお見舞いに?」
普段のカリスティアならば、起きて騒音を奏でている時間の早朝にお見舞いに来る。寝ているかもしれないとの気遣いでグラスは普段よりゆっくりと扉を開けるとこの国の姫の特徴的な空色の髪とどこか自分に似た人形を抱えて微笑んでいた。カリスティアは珍しく寝ているようでそんな姫に気づくことはなくあどけない寝息を立てている。グラスはなんとなく、嫌な予感がしており不躾だが盗み見る形で様子を見ることにした。
「ふふ、チュー! うーんこれでカリス様のファーストキスはグラス様……。はぁ、二人の恋模様の進展が待ち遠しい!」
彼女は感性が鋭く、グラスがカリスティアを恋慕していることを見抜いていた。グラスはそれがバレると潔くカリスティアに恋をしていることを話すと、もの凄い勢いで協力をしてくれるのだが、その気持ちが今回のグラスに似た人形を寝ているカリスティアにキスをさせるなどと、どこか空回りしてしまっているのだけれども、カリスティアの欲しい物ややりたいことをそれとなく聞き出して教えてくれたりと、ちゃんと頑張ってくれてはいるのだが……。出来れば、それだけでとどめて欲しいと願わざる終えないグラスであった。
「おはようございます。カロフィーネ姫」
「グラス様! 丁度良いところに、カリス様にチューしてください」
「わかりました」
はてさて、どちらのカリスティアだろうか? 姫がカリスティアに似た人形のカリスティアを持ってこちらを突き出しているので、こちらのカリスティアか、それもと血の通った本物のカリスティアか……。姫の目はしきりに本物のカリスティアの方をチラホラ見ているので、本物としろとのことなのだろうが、出来なければ私は人形とキスを交わすことになるだろう。
喜んで人形にキスをする異常愛を患ってはないので、グラスは寝こけているカリスティアの傍に歩いて寄り、触れるだけのキスを一つ唇に落とした。それだけでカリスティアは唸りを上げたのでグラスは慌てて唇を離し、闇魔法でカリスティアの周りの光だけを消した。カリスティアが寝息をまた立てたことを確認して魔法を解除するグラス。
「これで、カリス様の本当のファーストキスはグラス様に!」
(……お詫びに、カリスティアの欲しがっていた。中級ダンジョンの許可証でも渡すことにしましょう。にしても、とても柔らかかったです)
カリスティアの唇の柔らかさを思い出して、顔に熱が集まりそうになる。本当にファーストキスだったら良いと思ってしまう自分が浅ましい。浅ましいけれど触れた唇の場所に手を当てて思わず慈しむように撫でてしまう。不意に窓を見ると、ガラスに反射した自分は確かに、表情も心も凍っていると言われていたのに、ガラスに映る自分はどうだ? 嬉しそうに口角を上げて笑う自分がうつっている。恋は病というが、その中でも自分は深刻な重病患者だ……二度と治らないでしょう。グラスはそう思って、カリスティアの顔を改めて見て、病室を出る。
カリスティアが退院する前に、急いで中級ダンジョンの許可証を発行のちに自身も今までの鍛錬内容を強化しなければ。今回の中級ダンジョンは絶対に自分も彼女について行く。そんな思いを胸にグラスは早足で魔術部隊隊舎を潜り抜ける。
「ん? カロフィーネ姫?こんな早朝に、カリスティアのお見舞いに?」
普段のカリスティアならば、起きて騒音を奏でている時間の早朝にお見舞いに来る。寝ているかもしれないとの気遣いでグラスは普段よりゆっくりと扉を開けるとこの国の姫の特徴的な空色の髪とどこか自分に似た人形を抱えて微笑んでいた。カリスティアは珍しく寝ているようでそんな姫に気づくことはなくあどけない寝息を立てている。グラスはなんとなく、嫌な予感がしており不躾だが盗み見る形で様子を見ることにした。
「ふふ、チュー! うーんこれでカリス様のファーストキスはグラス様……。はぁ、二人の恋模様の進展が待ち遠しい!」
彼女は感性が鋭く、グラスがカリスティアを恋慕していることを見抜いていた。グラスはそれがバレると潔くカリスティアに恋をしていることを話すと、もの凄い勢いで協力をしてくれるのだが、その気持ちが今回のグラスに似た人形を寝ているカリスティアにキスをさせるなどと、どこか空回りしてしまっているのだけれども、カリスティアの欲しい物ややりたいことをそれとなく聞き出して教えてくれたりと、ちゃんと頑張ってくれてはいるのだが……。出来れば、それだけでとどめて欲しいと願わざる終えないグラスであった。
「おはようございます。カロフィーネ姫」
「グラス様! 丁度良いところに、カリス様にチューしてください」
「わかりました」
はてさて、どちらのカリスティアだろうか? 姫がカリスティアに似た人形のカリスティアを持ってこちらを突き出しているので、こちらのカリスティアか、それもと血の通った本物のカリスティアか……。姫の目はしきりに本物のカリスティアの方をチラホラ見ているので、本物としろとのことなのだろうが、出来なければ私は人形とキスを交わすことになるだろう。
喜んで人形にキスをする異常愛を患ってはないので、グラスは寝こけているカリスティアの傍に歩いて寄り、触れるだけのキスを一つ唇に落とした。それだけでカリスティアは唸りを上げたのでグラスは慌てて唇を離し、闇魔法でカリスティアの周りの光だけを消した。カリスティアが寝息をまた立てたことを確認して魔法を解除するグラス。
「これで、カリス様の本当のファーストキスはグラス様に!」
(……お詫びに、カリスティアの欲しがっていた。中級ダンジョンの許可証でも渡すことにしましょう。にしても、とても柔らかかったです)
カリスティアの唇の柔らかさを思い出して、顔に熱が集まりそうになる。本当にファーストキスだったら良いと思ってしまう自分が浅ましい。浅ましいけれど触れた唇の場所に手を当てて思わず慈しむように撫でてしまう。不意に窓を見ると、ガラスに反射した自分は確かに、表情も心も凍っていると言われていたのに、ガラスに映る自分はどうだ? 嬉しそうに口角を上げて笑う自分がうつっている。恋は病というが、その中でも自分は深刻な重病患者だ……二度と治らないでしょう。グラスはそう思って、カリスティアの顔を改めて見て、病室を出る。
カリスティアが退院する前に、急いで中級ダンジョンの許可証を発行のちに自身も今までの鍛錬内容を強化しなければ。今回の中級ダンジョンは絶対に自分も彼女について行く。そんな思いを胸にグラスは早足で魔術部隊隊舎を潜り抜ける。
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