転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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王子グラス・ペルマネンテ【1】

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 王子という肩書きは自分には息苦しい。何度今までそう思ったことか……。

 リチェルリット兵士の護衛付き馬車に揺られながらリチェルリット王国の王都へと向かって、馬車にゆらりゆらりと、何度も揺られて。
何回も思う王子という肩書きの苦しさに恨みを履いて、馬車の中をやり過ごす。表向きは今回はこの国へ初めての視察の経験をさせるために父上の命令でこうやって馬車にゆられているのだ。

 我々の国ペルマネンテとリチェルリットは仲が悪い、っと言うよりも父上やその息のかかったものが口をそろえて「醜い獣人や魔人でさえ汚らしいのに、あまつさえ犯罪者や魔物まで受け入れるとは、リチェルリットはなんと節操のない悪に満ちた国だろうか」っと父上が一方的に毛嫌いをしている。そんな中で、このリチェルリットの王は何度も交渉と対話を重ね。第5番目の王子とはいえ視察との形でこの国に来訪すると寄り添う姿勢を形だけでも実現させた為に私はここにいる。

 私に取っては願ってもないことだ。私には父上の考えも兄弟達の考えも私にはわからない。形式や種族問わずにうけいれる、種別問わずに人材が居ることは、それだけ伝統や技術の幅を広げ国力を上げることにも繋がる。多少の文化や種族の体質の違いのズレと意識の違いによるいざこざを鎮圧させるのに手間がかかるが、それをうまく制御するという並々ならぬ手腕の王、自身の父よりも聡明で心優しい王。いつかは完全に王位継承権を破棄してこの国へと移住する計画を組み立てやすくなるだろう。


 タダでさえ自分は他の兄弟とは違い唯一の側室の産まれの身分なのだから当然周りには良く思われておらず。今回の視察も自身の可愛い正室の子供を外に出すくらいなら、側室の自分を出した方が死んでも痛手少ない……?
 

 おかしい……。どこかおかしい。


 言い様もない違和感、この違和感はなんだとこの視察に関する記憶を掘り起こしていると、不自然に森の中で馬車は止まった。 馬を動かし私を護衛していた2人の兵士が降りてこちらにゆっくりと剣を抜いてこちらに向かってくる。【利用された】瞬時に状況に結論をつけ、騎士達に見えぬように左手に魔力を集める。開けた瞬間、この騎士が扉を開けた瞬間に魔法を使用して、森へと逃げるしか道はない。

(リチェルリットを嫌悪している父が兵士をリチェルリットに護衛を任せているところで気がつくべきでした)

 足音が近づくにつれ、大きく脈動する心臓。やがて馬車の扉の窓から、下品に笑う騎士の口角が見え、ついに扉が開かれる瞬間に発動させる。



ーアイススピア!ー



 兵士の一人に直撃させることに成功した。氷の槍で鎧ごと氷漬けになる。もう一人の兵士は一緒に凍った地面に足を滑らせて転倒。今が好機と馬車から飛び出して、がむしゃらに道を外れて森の中を走り抜ける。走りながらも、服の裏に忍ばせていた、王族の緊急を知らせることが出来る貴重な魔法水晶を取り出し魔力を込める。緊急要請はこの国の王に向けて。

「緊急要請、グラス・ペルマネンテ現在自国の騎士の反逆により助けを求む」

 余り丁寧に魔力を練ることが今の段階ではできないせいで多少ノイズが混じっているだろうがこれで自身の危機が伝えられたはず。場所も水晶を離さず持っている限りはあちらで把握できる。今は安全な所で身を隠さなければ。

(私の考えが正しければ、今ここで死ぬことは……父上、いや、ペルマネンテ王にとって都合良く戦争をふっかける口実になるでしょう。リチェルリット兵士に我が息子が殺されたそんなでっちあげの大義名分が出来てしまう。雇われ……いや、最初からリチェルリットの兵士に変装していた方が可能性が高いでしょう。あのリチェルリット嫌いの父上達だ。わざわざ、醜悪と嫌う国の兵士をリスクを冒して使わないはずです)

「うっ」

 足場の悪い中で、走るのを想定していない服と靴では長時間走れるわけもなく、盛り上がった木の根に足がひっかかり盛大に躓いてつまづいてしまった。そして運悪くフォレストハウンドの魔物のテリトリーに入ってしまったようで、音に気づいたハウンド達が遠吠えをして侵入者が来たこと仲間に伝えていた。テリトリーから出なければいけないが、戻れば兵士が自分を殺そうと追い掛けて来ている。ならば、前に進むしかないと足に鞭を打って立ち上がり血の滴る血で走るが、やはり魔物には早さでは勝てずに、追いつかれてしまう。


「ははは、ここまでか、わ、たしのいのちは……」


 魔法を使おうにも、目の前の一匹含めて六匹のフォレストハウンド。この状況で魔法を使って抵抗しても死期が少し遅くなるだけと。状況を受け入れて、大きく開かれる口を呆然と見つめる。


 今にも……自分の首を。

 今か今かとその瞬間に目の前の狼の首が、ずれてゴトリと自身の胸元に落下してから、身体が力なく倒れた。何が起きたのかと眼を見開いていると、美しい黒の長髪を靡かせたなびかせた身の丈より大きい長剣を持つ少女が現れた。

(助けがき、たの……でしょうか? あぁ、音が景色がとおの……く……)

 

 
………………。


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