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初めての外出
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「馬車の中からは」
「出ませんわ一歩たりとも」
「具合が悪くなったら」
「すぐにドクターに声をかけます」
「時間は」
「半刻で戻ってまいります」
「絶対に無理は」
「いたしません」
「……やはり心配だ私も……」
駄目ですよお父様、お仕事でしょう。
お母さまみたいにそう進言すればお父様は難しそうな顔をして、少し考えるように目を瞑った後、にこにこと嬉しそうにパラソルと握りしめる私を見て、大きく溜め息を吐いた。
「シンディ。今日は馬車の外には出ないんだよ」
「分かっておりますわ」
「……何故パラソルを?」
「ああ、これですか? 実は外出用のドレスと一緒に新調したんですの。初めて買ってもらったので嬉しくてつい……」
「シンディ、しつこいようだが今回は外には」
「出ませんわ」
「……」
馬車の中から市井を眺めて、すぐに戻って来る。
これがお父様が今回、シンディが外出するにあたって定めた約束。無論、これを破ればお叱りを受けるのは私ではなく付添人である使用人なとだ。故に私はそれを破るつもりは毛頭ない。
では何故わざわざこれみがよしにパラソルを持参したのか? それは勿論、全ては"次回への布石のため"である。
お父様は恐らく、エミリから私が「市井に行くのが楽しみ過ぎてそれを夢に見たあげくベッドから落ちた」というもしその場にいたらトマトになって死んだに違いない話を聞いただろう。
加えて私のこの「今日この日を待ちに待っていました楽しみ過ぎて昨日は寝てない」みたいな表情。握りしめたパラソルは"使えない"と分かっていても思わず持参してしまうほど。
ここまですればどんな馬鹿でも、例えニックでも「シンディが市井に行くのをとても楽しみにしていた」ということは分かる。……いや別に今のはニックを馬鹿にしたわけでは決してなく。
まぁつまり何が言いたいのかと言うと――もし私が今日のお出かけ後に倒れて「やっぱり無理をさせるべきではなかった」となっても――ここまで楽しみにしていたシンディが具合を悪そうにしながらもそれをひた隠しにし、また行くため"元気なフリ"をすれば……流石に「これからもう外出は金輪際禁止だ」とはならないのではないか、と思った次第である。
……それにしても"本当は元気な人間が病弱だったのが少しずつ元気になったから外出したけどそれが原因でまた体調が悪くなるがそれを隠して元気であるフリをするフリ"とか。長すぎて一文じゃ理解できそうにないな。一体なんの暗号なんだ。
「シンディ、やはり今度アルヴィンと一緒に行かないか。何も今日じゃなくても……」
「酷いですわお父様。私、もう何日も前から今日を楽しみにしておりましたのに」
「外出が決まったのは一昨日じゃないか」
「一昨日から楽しみにしておりました」
「……せめてニックと」
「遠慮しておきますわ。ニックお兄様はご勉学中でしょう? 私の為にご迷惑はかけられませんわ」
少し喰い気味に言ってしまったが仕方ないだろう。私に甘く多少の我が儘なら喜んで聞いてくれるアルお兄様とならともかく、私に少しでも非があれば突きたくて仕方なく常に私の弁慶の泣き所を探しているようなニックと出かけることになったのでは、本当に心労で倒れかねない。折角の外出が台無しだ。
勿論、アルお兄様が今日外せない予定がなかったのなら一緒の外出も全然構わなかったのだけれど。
「やはり少し早すぎたか……?」
「そんな。私ほら、こんなに元気ですわ」
「……顔色が悪そうに見えるのは気のせいかい?」
「少し寝不足なだけですわ。今日が楽しみだったもので、つい」
「なら万全な時に変更しても、」
「そんなこと言ったらいつまでも出かけられませんわよ!」
というか、もう例の日焼け止めも塗って準備を整えたから今更「また今度にしよう」は勘弁願いたい。
勿論お父様がここまで過保護全開で心配するのは分かる。シンディは今までベッドから立ち上がるのも大変で、最近ようやく屋敷内を歩けるようになったばかり。
私にとっては「漸く」でもお父様にとっては「まだまだ」なのだろう。それも、分かる。
だが行ってきますと声をかけてから馬車も使用人も待たせて既に一刻。今になってあれこれと悩んでシンディを引き留めるのはやり過ぎではないだろうか。言っとくけど本当に病弱ならこの一刻で既に倒れてますわよ、お父様。
「分かったよシンディ。だが本当に、くれぐれも気をつけるんだよ」
「……ありがとうございます、お父様」
そしてごめんなさい。
私は既に頭の中で練り上げられているぶっ倒れ計画について思い出し少し罪悪感を感じた。しかしここで「もう大丈夫そうだな」などと油断してもらっては困るのだ。自分で外出に乗り気になっていて申し訳ないが、お父様にはもう暫く過保護で心配性な父を尽き通して貰いたい。
「ごめんなさい、待たせましたわ。外でずっと……お疲れではないかしら?」
「いえいえ。シンディお嬢様こそ、外出前にお疲れになってはいませんか?」
「ふふ、いつもならそうかもしれないけれど、今は早く行きたい気持ちですわ」
そう言って笑えば、今日の私の護衛なのだろう……おそらくシンディの身長とは関係なしに背の高いその人が、そうですかと微笑んで私に手を差し出した。
突然差し出されたその手に首を傾げるその前に。どうぞ、と控えめに声がかけられる。その言葉に一瞬固まっていた私はハッとアンバー先生の教えを思い出し、咄嗟ににっこりと笑ってその手を重ねた。温かい眼差しを向ける彼は、どうやらそんな私を不思議には思っていないみたいだった。少なくとも、私にはそう見えた。
ああそうだった私は貴族令嬢で、ここはそういう世界だった。だけどなんだろう。この、ドレスを着るよりも慣れないこの感じは……。
沢山の宝石や高級品の数々が自分の目の前に広げられてもいまいち実感のなかった"自分が身分の高い令嬢である"という感覚を初めてしっかりと感じたような気がした。
それは恐らく、元の世界では絶対にありえない感覚だったからなのだろう。前世でも給料日に贅沢をしたり誕生日とかに人から沢山プレゼントを貰ったり自分でも奮発して貴金属のアクセを買うことは出来た。大学の卒業パーティーや友人の結婚式では簡素ではあるがドレスを着ることもあったし、私にとって蜂蜜や紅茶は贅沢品という認識ではなかった。
だが、生粋の日本人である私は当然ながら男性からエスコートされて乗り物に乗る、なんて経験をしたことはない。それも大層大事なものを扱うように、まるで自分がお姫様であるかのように。いや、侯爵令嬢だから身分的にはそんな感じの扱いをされるのが当然ではあるのだが。
「何かありましたら、すぐにお声かけ下さい。私は馬車のすぐ外に控えておりますので」
「……あ、ありがとうございます……」
重なったその手は私の小さな手を支えるようにしっかりと。なのにこの私と彼の大きすぎる身長差なんて初めからないかのような自然でスマートなエスコート。私は心の中でもしかしたらこの人は貴族出身なのかななんてそんなことを思った。初めて会う人だから分からないな……今度、何故かやたら情報網なエミリに聞いてみようかしら。
そんなことを頭の片隅に漸く馬車に乗り込むと、私は次いで向かいの席に腰を下ろしたメアリと目を合わせて笑った。
「メアリが一緒なら安心だわ」
「身に余る光栄でございます」
後ろの馬車には医者が乗っているらしい。流石に同じ馬車には出来なかったのだろうが、いざとなったら私の側にはメアリがいる。何か言えば馬車を止め医者がすぐに走って来る手筈だ。……まぁ折角の外出を台無しにしたくはないので外出中は大人しくしてるつもりだけどね。
そうこう思案を巡らせている間に馬車が動き出した。想定していたよりは揺れがないだけでなく、私用の馬車だからなのかは分からないが、お尻が痛くなるどころか普通に現代の車のソファよりも快適で驚いた。こういうのってもっと、揺れるしお尻が痛いしで文句しか出てこないのかなと危惧していたのに。
さらに私のお出かけ用の為だけに新調したというこの馬車は、丁度私の顔の高さくらいに窓がある。内側にのみある鍵を捻れば上に持ち上げられるようになっており、そこまでせずともガラス越しで良ければカーテンを引けば外が見えるようになっている仕組みだ。
私はドキドキした様子でそのカーテンを好奇心で少しめくってみる。メアリが何も言わないところをみると恐らく好きにしていいのだろう。
私の顔二つ分ほどしかないその小さな窓からは全てを見ることは残念ながら出来なかったが、少なくとも屋敷に篭っていては見られない光景がそこには広がっていた。
「わぁ……」
窓を開けなくても聞こえてくる音楽。どこかでお祭りでも行われているようなそのムードは、窓越しでもしっかりと伝わるものがあった。まだここからでは入り口しか見えないが、恐らく沢山の露店や出し物があるのだろう。どうしよう、今更だけど凄くワクワクしてきた。
「まだ遠いけど、あそこに見えるのが今から行く場所よね? 凄い……ここから見ても人が沢山いるのが分かるわ。いつもそうなの?」
「いいえ。今日は10日に一度の、市の日でございますから。それもあって旦那様は今日を選ばれたのですわ。折角でしたら、馬車の中からでも楽しめればとお思いになって」
「お父様……」
今夜のことを思うと心が痛いが、今は忘れることにしよう。
私は、異世界と呼ぶにはそこまで私の知っている街並みと変わりはないけれど、少なくとも外国に来たんだなぁくらいの実感はするような、そんな光景を目に焼き付けた。……次に来るのはいつになるのか分からないからね……。
でもそれならやはり、少しでもいいからこの町を自分の足で歩いてみたかったというのが本音ではある。少しくらいならもしかしたらと期待して日焼け止めも塗ってきたが、メアリとあの護衛がいる以上それは叶わないだろう。まぁカーテンを引いている間は窓から日差しが入り込むし、玄関を出てから馬車に乗り込むまでの短い間は紫外線に晒されたのだから全く意味が無くはなかったと思いたい。……あれだけ作るのに苦労したのだから、正直そう思っていないとやってられない……。
「お嬢様、お店が見えてきましたよ」
「人も多いけど、お店も多いのね。色々売っているみたいだし」
「そうですね。市の日は普段も売っている食料や雑貨だけでなく、他の国からの商人や旅行者も訪れますから。逆に海外の商人が露店を開くこともあるので……ちょっとした掘り出し物が見つかることもあります」
「……!」
それは、なんとも魅力的だ。恐らく普通の市場+フリーマーケットや虫の市が合体したみたいな感じで、そこに骨董品などもあるのだろう。前世でもそのような体験はしたことがなかったため、尚更自分の足で掘り出し物を是非発掘したかったが、それはまたの機会にするとしよう……今はとりあえず、この雰囲気を少しでも楽しめれば……。
「あ、お嬢様。もし何か気になるものがございましたら私が代わりに買ってきますので、なんでもおっしゃってくださいね」
「え! 何か買ってもいいの?!」
「はい」
旦那さまから許可もその為の資金もいただいていますから。その言葉に私は目を輝かせた。
今までは本にしろ服にしろ全て文字だけのリストから欲しいものを選ぶことしか出来なかった。それが、実際に目で見て欲しいものを選べるなんて! 今まではそれが当たり前だったのにね。
ああ早く、自分の手で取って見て欲しいものを選べるようになりたいな……。勿論、それは今日でなくていい。今日それが出来ないのは理解している。こんなにもよくして貰ったのだ。メアリや、外の護衛たちに迷惑をかけるわけにはいかないし。
それから私は窓に顔をくっつける勢いで市に並ぶものを眺めた。隣にいるメアリから微笑ましい視線を感じるが今は気にしないことにする。
あれは何かの石かな? 沢山並んでるし店頭で見ているお客が女性ばかりだし。宝石なのかただのガラス玉か……。あ、過ぎちゃった。あれっあの店にある大きな水晶みたいなの、中に生き物と海藻みたいなのが見えたけどまさか生命球? いや、上にある蓋みたいなのが外せそうだから丸い形の水槽かもしれない。お、今度のお店は男性ばかりが並んでる。んー、あれは部屋に飾るものなのかな。でも装飾品にしては女性客が見えないし何かに使うものなのかな……?
見ただけでは用途が分からないものも多いが、並んでいるものの多くは私が見たことあるものにや近い気がする。言わずもがな食料や衣服・本などは私が知っているものと大差ないし、中には懐かしいと感じるものもあるが、正直欲しいと思えるものはなかった。
(別にわざわざ買うほどのものじゃないかなぁ……)
無理に買う必要はないし、そもそも本日の目的は買い物ではなく外出である。折角の市なので勿体ない気もするが、まぁこれから先全く来れないというわけでもなし。今回は別に買い物はいいかなぁ……。
と、そんなことを思っていた時だった。そろそろ時間になるので折り返しますよと言われた時。
「!!!」
少し広くなった道。そこで折り返そうと一時止まる馬車。翻す護衛の人のその後ろ。
ぽつんと、少し市から離れるように小さく建てられた露店。私の目に留まった、そこに並んでいたもの。
あれは、もしかしなくても。
「蜜蝋……?」
馬車に乗りこんですぐの時にメアリから「基本開けないでくださいね」と言われた窓をスライドさせるように持ち上げた。慌てるようなメアリの声が聞こえていたが、私は構うことなく窓から身を乗り出す勢いでその露店をじっと目を凝らして見つめた。……蜜蝋、に見える。やっぱり、どう見ても蜜蝋に、見える!
「待って!」
「! シンディお嬢様、乗り出しては危険です」
「あ、ごめんなさい……あの、あそこの店に、行ってほしくて」
「あちらのお店ですか……?」
ちらりとその場所を見ると、護衛の人は御者に一言二言告げて馬車の向きを変え、その店に近づいて行った。
心臓が止まるかと思いましたと言うメアリに、ごめんなさいねと一言かけて、私は窓を開けたまま固定してそこから店の人に声をかけた。
因みに後から知ったことだが、こういう時に外の人に声をかけるのは同席している使用人で、婦人及び令嬢は例え外にいる護衛にさえ声をかけてはいけないらしい。……まぁ私は子供だから許されたという話なのだが、今後は気をつけようと思う。
「あの、すみません」
「んん? これはこれはお嬢様。何かお求めですかな?」
「その、そちらにあるものって、もしかして蜂蜜の、」
「おっ! お嬢様物知りですねぇ! ええそうですよ。これで質の良い蝋燭とかが出来るんですが……なんせ値が張るんでね。市では中々。気になるなら買っていきますか? まとめ買いでお安くしますよ」
「……!」
その場で舞い上がりそうな気持ちをなんとか抑えて、私は是非お願いしますと笑って早速メアリに行って買ってもらうことにした。
因みに馬車を降りる際、メアリにどのくらい買いますかと言われても金額やその感覚がいまいちよく分からなかったので、店にある分全部は無理かしらねと笑って見せたところ、冗談のつもりだったのだが彼女は本当に店にある分を全て買い取って別の使用人に持たせたそうだ。……何も言わずに笑って馬車を降りたからてっきり冗談だと分かってると思ったのに……。
ああ、それとも値が張るといってもそれは庶民にとっての話で、実はそんなにでもないのかな? と思ったりもしたが、帰りの馬車でメアリから簡単な金銭感覚を確認したところ、あれがこの世界における一般的な平民の1カ月分の生活費に値すると理解して眩暈がした。メアリ、それならせめて少しは表情を変えて頂戴? せめて本当に良いのですかって確認くらいしてよ……。
いや勿論、我が侯爵家にとってはそのくらいはした金であることは理解している。私が髪に塗りたくるために購入している蜂蜜も卵も平民にとっては手が届かない贅沢品だということも。そもそも毎日パンを買うのにも苦労する人間も少なくないのだ。今更そんなことを言っても仕方が無いのは分かる。
だがあの時私は我が家の家紋が入った馬車に乗っていたのだから、あの時あんな市の隅っこに売っている他の人があまり買わない高級品を、惜しげなく買い占めたのがトワール侯爵家の人間であることはそのうち近くでそれを見ていた人によって周りに知られてしまうことだろう。
いや、別にそれ自体はいい。これが宝石とかならばそんなことはよくあること。そうでなくとも、お兄様方二人やお母さまは普通に外出して何かを購入されることもある。貴族が市で買いものをすること自体は珍しくない。平民からすれば目の飛び出るような買い物をすることも、何故そんなものをと言われるようなものを購入していくことも。
問題は、私が他の人から見たら"買っても仕方ないもの"をわざわざ"初めての外出で大量に買っていた"という事実である。勿論馬車に乗っていたのが引きこもりのシンディお嬢様だったなんて市にいた人達は知る由はないだろうが、少なくともトワール侯爵家の人間はそれを知っている。……これが今後どう転がるのかは、今の段階では何とも言えない。
ただ、既に使用人たちの間ではいつもの如く捻じ曲げられた噂の尾鰭によって"他の者が買うには使い道がない上に高価なものをお嬢様がその商人のために大量購入した。しかも初めての外出だったにも関わらずその他のものはご購入されなかった"ということになってしまっていることを考えると、転がるとしたら良い方向ではないのだろうなと私はぼんやりと思っていた。良い方向に転がれないのならいっそ正方形を保っていて欲しいと心から思う。
まぁ、何はともあれ、何事もなかったとは言いづらいが少なくともトラブルなどはなく初めての外出が終わり、私は蜜蝋をゲットすることに成功した。
ゲーム風に言えば
・ミッションコンプリート!
・シンディは蜜蝋をゲットした!
だろうか。
叶うことなら、常に逃げるのコマンド表示だけを出していて欲しいものである。
私は期待するような目をこちらに向ける使用人たちの視線を全身に感じながら、蜜蝋の入った風呂敷を胸に抱きしめた。さて、心配するお父様を一度は安心させるために今日は早く寝て、明日ぶっ倒れるための準備でもしますかね。
「出ませんわ一歩たりとも」
「具合が悪くなったら」
「すぐにドクターに声をかけます」
「時間は」
「半刻で戻ってまいります」
「絶対に無理は」
「いたしません」
「……やはり心配だ私も……」
駄目ですよお父様、お仕事でしょう。
お母さまみたいにそう進言すればお父様は難しそうな顔をして、少し考えるように目を瞑った後、にこにこと嬉しそうにパラソルと握りしめる私を見て、大きく溜め息を吐いた。
「シンディ。今日は馬車の外には出ないんだよ」
「分かっておりますわ」
「……何故パラソルを?」
「ああ、これですか? 実は外出用のドレスと一緒に新調したんですの。初めて買ってもらったので嬉しくてつい……」
「シンディ、しつこいようだが今回は外には」
「出ませんわ」
「……」
馬車の中から市井を眺めて、すぐに戻って来る。
これがお父様が今回、シンディが外出するにあたって定めた約束。無論、これを破ればお叱りを受けるのは私ではなく付添人である使用人なとだ。故に私はそれを破るつもりは毛頭ない。
では何故わざわざこれみがよしにパラソルを持参したのか? それは勿論、全ては"次回への布石のため"である。
お父様は恐らく、エミリから私が「市井に行くのが楽しみ過ぎてそれを夢に見たあげくベッドから落ちた」というもしその場にいたらトマトになって死んだに違いない話を聞いただろう。
加えて私のこの「今日この日を待ちに待っていました楽しみ過ぎて昨日は寝てない」みたいな表情。握りしめたパラソルは"使えない"と分かっていても思わず持参してしまうほど。
ここまですればどんな馬鹿でも、例えニックでも「シンディが市井に行くのをとても楽しみにしていた」ということは分かる。……いや別に今のはニックを馬鹿にしたわけでは決してなく。
まぁつまり何が言いたいのかと言うと――もし私が今日のお出かけ後に倒れて「やっぱり無理をさせるべきではなかった」となっても――ここまで楽しみにしていたシンディが具合を悪そうにしながらもそれをひた隠しにし、また行くため"元気なフリ"をすれば……流石に「これからもう外出は金輪際禁止だ」とはならないのではないか、と思った次第である。
……それにしても"本当は元気な人間が病弱だったのが少しずつ元気になったから外出したけどそれが原因でまた体調が悪くなるがそれを隠して元気であるフリをするフリ"とか。長すぎて一文じゃ理解できそうにないな。一体なんの暗号なんだ。
「シンディ、やはり今度アルヴィンと一緒に行かないか。何も今日じゃなくても……」
「酷いですわお父様。私、もう何日も前から今日を楽しみにしておりましたのに」
「外出が決まったのは一昨日じゃないか」
「一昨日から楽しみにしておりました」
「……せめてニックと」
「遠慮しておきますわ。ニックお兄様はご勉学中でしょう? 私の為にご迷惑はかけられませんわ」
少し喰い気味に言ってしまったが仕方ないだろう。私に甘く多少の我が儘なら喜んで聞いてくれるアルお兄様とならともかく、私に少しでも非があれば突きたくて仕方なく常に私の弁慶の泣き所を探しているようなニックと出かけることになったのでは、本当に心労で倒れかねない。折角の外出が台無しだ。
勿論、アルお兄様が今日外せない予定がなかったのなら一緒の外出も全然構わなかったのだけれど。
「やはり少し早すぎたか……?」
「そんな。私ほら、こんなに元気ですわ」
「……顔色が悪そうに見えるのは気のせいかい?」
「少し寝不足なだけですわ。今日が楽しみだったもので、つい」
「なら万全な時に変更しても、」
「そんなこと言ったらいつまでも出かけられませんわよ!」
というか、もう例の日焼け止めも塗って準備を整えたから今更「また今度にしよう」は勘弁願いたい。
勿論お父様がここまで過保護全開で心配するのは分かる。シンディは今までベッドから立ち上がるのも大変で、最近ようやく屋敷内を歩けるようになったばかり。
私にとっては「漸く」でもお父様にとっては「まだまだ」なのだろう。それも、分かる。
だが行ってきますと声をかけてから馬車も使用人も待たせて既に一刻。今になってあれこれと悩んでシンディを引き留めるのはやり過ぎではないだろうか。言っとくけど本当に病弱ならこの一刻で既に倒れてますわよ、お父様。
「分かったよシンディ。だが本当に、くれぐれも気をつけるんだよ」
「……ありがとうございます、お父様」
そしてごめんなさい。
私は既に頭の中で練り上げられているぶっ倒れ計画について思い出し少し罪悪感を感じた。しかしここで「もう大丈夫そうだな」などと油断してもらっては困るのだ。自分で外出に乗り気になっていて申し訳ないが、お父様にはもう暫く過保護で心配性な父を尽き通して貰いたい。
「ごめんなさい、待たせましたわ。外でずっと……お疲れではないかしら?」
「いえいえ。シンディお嬢様こそ、外出前にお疲れになってはいませんか?」
「ふふ、いつもならそうかもしれないけれど、今は早く行きたい気持ちですわ」
そう言って笑えば、今日の私の護衛なのだろう……おそらくシンディの身長とは関係なしに背の高いその人が、そうですかと微笑んで私に手を差し出した。
突然差し出されたその手に首を傾げるその前に。どうぞ、と控えめに声がかけられる。その言葉に一瞬固まっていた私はハッとアンバー先生の教えを思い出し、咄嗟ににっこりと笑ってその手を重ねた。温かい眼差しを向ける彼は、どうやらそんな私を不思議には思っていないみたいだった。少なくとも、私にはそう見えた。
ああそうだった私は貴族令嬢で、ここはそういう世界だった。だけどなんだろう。この、ドレスを着るよりも慣れないこの感じは……。
沢山の宝石や高級品の数々が自分の目の前に広げられてもいまいち実感のなかった"自分が身分の高い令嬢である"という感覚を初めてしっかりと感じたような気がした。
それは恐らく、元の世界では絶対にありえない感覚だったからなのだろう。前世でも給料日に贅沢をしたり誕生日とかに人から沢山プレゼントを貰ったり自分でも奮発して貴金属のアクセを買うことは出来た。大学の卒業パーティーや友人の結婚式では簡素ではあるがドレスを着ることもあったし、私にとって蜂蜜や紅茶は贅沢品という認識ではなかった。
だが、生粋の日本人である私は当然ながら男性からエスコートされて乗り物に乗る、なんて経験をしたことはない。それも大層大事なものを扱うように、まるで自分がお姫様であるかのように。いや、侯爵令嬢だから身分的にはそんな感じの扱いをされるのが当然ではあるのだが。
「何かありましたら、すぐにお声かけ下さい。私は馬車のすぐ外に控えておりますので」
「……あ、ありがとうございます……」
重なったその手は私の小さな手を支えるようにしっかりと。なのにこの私と彼の大きすぎる身長差なんて初めからないかのような自然でスマートなエスコート。私は心の中でもしかしたらこの人は貴族出身なのかななんてそんなことを思った。初めて会う人だから分からないな……今度、何故かやたら情報網なエミリに聞いてみようかしら。
そんなことを頭の片隅に漸く馬車に乗り込むと、私は次いで向かいの席に腰を下ろしたメアリと目を合わせて笑った。
「メアリが一緒なら安心だわ」
「身に余る光栄でございます」
後ろの馬車には医者が乗っているらしい。流石に同じ馬車には出来なかったのだろうが、いざとなったら私の側にはメアリがいる。何か言えば馬車を止め医者がすぐに走って来る手筈だ。……まぁ折角の外出を台無しにしたくはないので外出中は大人しくしてるつもりだけどね。
そうこう思案を巡らせている間に馬車が動き出した。想定していたよりは揺れがないだけでなく、私用の馬車だからなのかは分からないが、お尻が痛くなるどころか普通に現代の車のソファよりも快適で驚いた。こういうのってもっと、揺れるしお尻が痛いしで文句しか出てこないのかなと危惧していたのに。
さらに私のお出かけ用の為だけに新調したというこの馬車は、丁度私の顔の高さくらいに窓がある。内側にのみある鍵を捻れば上に持ち上げられるようになっており、そこまでせずともガラス越しで良ければカーテンを引けば外が見えるようになっている仕組みだ。
私はドキドキした様子でそのカーテンを好奇心で少しめくってみる。メアリが何も言わないところをみると恐らく好きにしていいのだろう。
私の顔二つ分ほどしかないその小さな窓からは全てを見ることは残念ながら出来なかったが、少なくとも屋敷に篭っていては見られない光景がそこには広がっていた。
「わぁ……」
窓を開けなくても聞こえてくる音楽。どこかでお祭りでも行われているようなそのムードは、窓越しでもしっかりと伝わるものがあった。まだここからでは入り口しか見えないが、恐らく沢山の露店や出し物があるのだろう。どうしよう、今更だけど凄くワクワクしてきた。
「まだ遠いけど、あそこに見えるのが今から行く場所よね? 凄い……ここから見ても人が沢山いるのが分かるわ。いつもそうなの?」
「いいえ。今日は10日に一度の、市の日でございますから。それもあって旦那様は今日を選ばれたのですわ。折角でしたら、馬車の中からでも楽しめればとお思いになって」
「お父様……」
今夜のことを思うと心が痛いが、今は忘れることにしよう。
私は、異世界と呼ぶにはそこまで私の知っている街並みと変わりはないけれど、少なくとも外国に来たんだなぁくらいの実感はするような、そんな光景を目に焼き付けた。……次に来るのはいつになるのか分からないからね……。
でもそれならやはり、少しでもいいからこの町を自分の足で歩いてみたかったというのが本音ではある。少しくらいならもしかしたらと期待して日焼け止めも塗ってきたが、メアリとあの護衛がいる以上それは叶わないだろう。まぁカーテンを引いている間は窓から日差しが入り込むし、玄関を出てから馬車に乗り込むまでの短い間は紫外線に晒されたのだから全く意味が無くはなかったと思いたい。……あれだけ作るのに苦労したのだから、正直そう思っていないとやってられない……。
「お嬢様、お店が見えてきましたよ」
「人も多いけど、お店も多いのね。色々売っているみたいだし」
「そうですね。市の日は普段も売っている食料や雑貨だけでなく、他の国からの商人や旅行者も訪れますから。逆に海外の商人が露店を開くこともあるので……ちょっとした掘り出し物が見つかることもあります」
「……!」
それは、なんとも魅力的だ。恐らく普通の市場+フリーマーケットや虫の市が合体したみたいな感じで、そこに骨董品などもあるのだろう。前世でもそのような体験はしたことがなかったため、尚更自分の足で掘り出し物を是非発掘したかったが、それはまたの機会にするとしよう……今はとりあえず、この雰囲気を少しでも楽しめれば……。
「あ、お嬢様。もし何か気になるものがございましたら私が代わりに買ってきますので、なんでもおっしゃってくださいね」
「え! 何か買ってもいいの?!」
「はい」
旦那さまから許可もその為の資金もいただいていますから。その言葉に私は目を輝かせた。
今までは本にしろ服にしろ全て文字だけのリストから欲しいものを選ぶことしか出来なかった。それが、実際に目で見て欲しいものを選べるなんて! 今まではそれが当たり前だったのにね。
ああ早く、自分の手で取って見て欲しいものを選べるようになりたいな……。勿論、それは今日でなくていい。今日それが出来ないのは理解している。こんなにもよくして貰ったのだ。メアリや、外の護衛たちに迷惑をかけるわけにはいかないし。
それから私は窓に顔をくっつける勢いで市に並ぶものを眺めた。隣にいるメアリから微笑ましい視線を感じるが今は気にしないことにする。
あれは何かの石かな? 沢山並んでるし店頭で見ているお客が女性ばかりだし。宝石なのかただのガラス玉か……。あ、過ぎちゃった。あれっあの店にある大きな水晶みたいなの、中に生き物と海藻みたいなのが見えたけどまさか生命球? いや、上にある蓋みたいなのが外せそうだから丸い形の水槽かもしれない。お、今度のお店は男性ばかりが並んでる。んー、あれは部屋に飾るものなのかな。でも装飾品にしては女性客が見えないし何かに使うものなのかな……?
見ただけでは用途が分からないものも多いが、並んでいるものの多くは私が見たことあるものにや近い気がする。言わずもがな食料や衣服・本などは私が知っているものと大差ないし、中には懐かしいと感じるものもあるが、正直欲しいと思えるものはなかった。
(別にわざわざ買うほどのものじゃないかなぁ……)
無理に買う必要はないし、そもそも本日の目的は買い物ではなく外出である。折角の市なので勿体ない気もするが、まぁこれから先全く来れないというわけでもなし。今回は別に買い物はいいかなぁ……。
と、そんなことを思っていた時だった。そろそろ時間になるので折り返しますよと言われた時。
「!!!」
少し広くなった道。そこで折り返そうと一時止まる馬車。翻す護衛の人のその後ろ。
ぽつんと、少し市から離れるように小さく建てられた露店。私の目に留まった、そこに並んでいたもの。
あれは、もしかしなくても。
「蜜蝋……?」
馬車に乗りこんですぐの時にメアリから「基本開けないでくださいね」と言われた窓をスライドさせるように持ち上げた。慌てるようなメアリの声が聞こえていたが、私は構うことなく窓から身を乗り出す勢いでその露店をじっと目を凝らして見つめた。……蜜蝋、に見える。やっぱり、どう見ても蜜蝋に、見える!
「待って!」
「! シンディお嬢様、乗り出しては危険です」
「あ、ごめんなさい……あの、あそこの店に、行ってほしくて」
「あちらのお店ですか……?」
ちらりとその場所を見ると、護衛の人は御者に一言二言告げて馬車の向きを変え、その店に近づいて行った。
心臓が止まるかと思いましたと言うメアリに、ごめんなさいねと一言かけて、私は窓を開けたまま固定してそこから店の人に声をかけた。
因みに後から知ったことだが、こういう時に外の人に声をかけるのは同席している使用人で、婦人及び令嬢は例え外にいる護衛にさえ声をかけてはいけないらしい。……まぁ私は子供だから許されたという話なのだが、今後は気をつけようと思う。
「あの、すみません」
「んん? これはこれはお嬢様。何かお求めですかな?」
「その、そちらにあるものって、もしかして蜂蜜の、」
「おっ! お嬢様物知りですねぇ! ええそうですよ。これで質の良い蝋燭とかが出来るんですが……なんせ値が張るんでね。市では中々。気になるなら買っていきますか? まとめ買いでお安くしますよ」
「……!」
その場で舞い上がりそうな気持ちをなんとか抑えて、私は是非お願いしますと笑って早速メアリに行って買ってもらうことにした。
因みに馬車を降りる際、メアリにどのくらい買いますかと言われても金額やその感覚がいまいちよく分からなかったので、店にある分全部は無理かしらねと笑って見せたところ、冗談のつもりだったのだが彼女は本当に店にある分を全て買い取って別の使用人に持たせたそうだ。……何も言わずに笑って馬車を降りたからてっきり冗談だと分かってると思ったのに……。
ああ、それとも値が張るといってもそれは庶民にとっての話で、実はそんなにでもないのかな? と思ったりもしたが、帰りの馬車でメアリから簡単な金銭感覚を確認したところ、あれがこの世界における一般的な平民の1カ月分の生活費に値すると理解して眩暈がした。メアリ、それならせめて少しは表情を変えて頂戴? せめて本当に良いのですかって確認くらいしてよ……。
いや勿論、我が侯爵家にとってはそのくらいはした金であることは理解している。私が髪に塗りたくるために購入している蜂蜜も卵も平民にとっては手が届かない贅沢品だということも。そもそも毎日パンを買うのにも苦労する人間も少なくないのだ。今更そんなことを言っても仕方が無いのは分かる。
だがあの時私は我が家の家紋が入った馬車に乗っていたのだから、あの時あんな市の隅っこに売っている他の人があまり買わない高級品を、惜しげなく買い占めたのがトワール侯爵家の人間であることはそのうち近くでそれを見ていた人によって周りに知られてしまうことだろう。
いや、別にそれ自体はいい。これが宝石とかならばそんなことはよくあること。そうでなくとも、お兄様方二人やお母さまは普通に外出して何かを購入されることもある。貴族が市で買いものをすること自体は珍しくない。平民からすれば目の飛び出るような買い物をすることも、何故そんなものをと言われるようなものを購入していくことも。
問題は、私が他の人から見たら"買っても仕方ないもの"をわざわざ"初めての外出で大量に買っていた"という事実である。勿論馬車に乗っていたのが引きこもりのシンディお嬢様だったなんて市にいた人達は知る由はないだろうが、少なくともトワール侯爵家の人間はそれを知っている。……これが今後どう転がるのかは、今の段階では何とも言えない。
ただ、既に使用人たちの間ではいつもの如く捻じ曲げられた噂の尾鰭によって"他の者が買うには使い道がない上に高価なものをお嬢様がその商人のために大量購入した。しかも初めての外出だったにも関わらずその他のものはご購入されなかった"ということになってしまっていることを考えると、転がるとしたら良い方向ではないのだろうなと私はぼんやりと思っていた。良い方向に転がれないのならいっそ正方形を保っていて欲しいと心から思う。
まぁ、何はともあれ、何事もなかったとは言いづらいが少なくともトラブルなどはなく初めての外出が終わり、私は蜜蝋をゲットすることに成功した。
ゲーム風に言えば
・ミッションコンプリート!
・シンディは蜜蝋をゲットした!
だろうか。
叶うことなら、常に逃げるのコマンド表示だけを出していて欲しいものである。
私は期待するような目をこちらに向ける使用人たちの視線を全身に感じながら、蜜蝋の入った風呂敷を胸に抱きしめた。さて、心配するお父様を一度は安心させるために今日は早く寝て、明日ぶっ倒れるための準備でもしますかね。
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