詞途巡礼

「九つの門より出でて帳の裏から還れ」

その本はそうしたエピグラムから始まるらしい。嘘か真か、作家が血肉をなす本文を実際に書く前から、その本は既に出版されてそこにあったという。ややこしいことに、作家は確かに出版された後から本文を手ずから書き上げたし、その前から本の中は真っ白でもなかった。タイムトラベルとかその手のからくりでないことは確かであって、亞書の改訂といった連想も少し外れている。ここでは直ちにその詳細には立ち入らないが、とにかく、私はその本を探している。
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