主人公殺しの主人公

マルジン

文字の大きさ
上 下
39 / 40

39.おいら娼館のオーナーになるんだっ!中編

しおりを挟む
 面接とは採用するにあたり、直接対面して人柄やら人当たりやらをみる、試験のようなものだ。

「全員採用するんだろ?なんで面接なんかするんだよ」

 ジョンの仰ることは正論で、面接する理由はない。
 と思うだろ?
 実はあるんだよんっ。
 風俗のなんだよ、つまり、そういうことなのさ。

 くっ、へへへへ。
 これぞ男の夢だろう?
 風俗店オーナーが面接と称した、クソエロいするだけの、時間なんてよお!

 とりあえず俺は、娼館の一階に設えられている奥まった部屋へと入った。
 新品、というか造りたての家なんて初めてでドキドキしていた。
 ……もしかしたら別のドキドキかもしれない。
 もはやどっちでもいい。

 俺の息子もドッキドキだぜ。

「おーい、運んじゃってー!」

「はいよっ!てめえら行くぞっ!傷つけたらただじゃ済まねえからな!」

 棟梁は少ないながらも机と椅子も持って来ていたらしい。
 俺が使うかもしれないと、上等な椅子と机を用意してくれていたのだ。
 めっちゃ気が利くやん。
 ええやん?
 素敵やん。

「棟梁、お名前を聞いてもいいかな?」

「うっす。ゲリヤスでございやす」

 ……………………!?
 ゲ、ゲリヤス?

「ゲリヤスさん?」

「ええ、ゲリヤスでございやす」

 がっしりとした腕、程よい胸元に短髪に刈り込んだサッパリガテン系女子のゲリヤスだって!?

 嘘だろおい。

 チチ◯スならまだしも、ゲリ?

「それでは失礼しやす」

 呆けている間に、ゲリヤスは去っていった。

 まさかそんな名前だったなんてよお。
 まさか俺がこんなに動揺するなんてよお。

「ジロー……ジロー?」

「んああ、悪い。終わったか?」

「ああ、体も洗ったし治癒もしといたから、すぐにでも働けるよ。それよりもどうした?ゲリヤスが何か粗相でもしたのか?」

「粗相だなんて言うんじゃあないっ!親から貰った大事な名前を、そんなふうに茶化したらダメだぞジョンッ!」

「……いや、茶化してはいないけど。なんかごめん」

「……俺こそごめん。ちょっとばかり動揺してるだけだ」

 気を落ち着けるため、椅子に腰掛け、机の上で両手を重ねた。
 ゲリヤス作の椅子と机。

「連れてきてくれ」

「……うん」

 どうにも落ち着かない。
 館も何もかも、すべてがゲリヤス作。
 忘れたくとも忘れられない、爽やかな汗と笑顔。切符のいい返事や、へつらうことのない喋り口。
 どれもこれも素晴らしいのに、ゲリヤスだなんて。

 全部忘れたくて、さっさと奴隷がくることを神へと祈ったのは、ここだけの話だ。


 ――コンコン。

 待ちに待ったノックに応えると、奴隷たちが入ってきた。
 随分と身綺麗になり、顔面のクオリティに目を向けられるようになった。

 うむ、そこまで酷くはない。
 そして見事にタイプがバラバラなのも、ハナマルだ。

 細身で綺麗系、ぽっちゃりかわいい系、熟女にブスまで、粒ぞろいにも程がある。
 野郎どもは、よく分からん。
 まあ美形だとは思うが、正直何の感情も湧いてこない。
 ショタやら細マッチョやら、ガチムチやら、まあいいんじゃねえの?

「お前はエルフ?」

「はいご主人様」

 ご主人様と呼ばれた件はスルーしようじゃないか。
 間違っちゃあいないんだから、咎めるつもりはない。でもなんでだろう、ちょっと恥ずいわ。

「ドワーフとかいねえの?」

「ええ?ドワーフが趣味なのか?」

 何故かめっちゃ引くジョン。
 え?そんなヤバいの?
 ドワーフっていやあ、エルフと仲悪い有名な種族、だろ?たぶん。
 俺の好みってわけじゃないが、ちんまい体に興奮する変態だっていてもおかしくない。
 俺は多様な需要に応えるために尋ねただけなのに、そんな引かれるかね。

「趣味っていうか、見たこともないから、なんともな」

「ああ、そうか。ジローは知らないのか。ドワーフはね――」

 毛深い、臭い、女も男みたいな奴が多い。
 だそうだ。
 毛なんか剃りゃいいし、香水振りかければいいし?男みたいな奴が多いってんなら、数少ない女らしい女を探せばいい。

 まったくビビらせるなよと安堵したのも束の間、最後に爆弾が落とされた。

「握力がとても強くて、同じドワーフか魔族じゃないと皮膚が千切れるらしいよ」

 それっておめえ、息子まで引き抜かれるってことじゃねえの?
 ヒヤリと冷たくなった下半身に、俺は頷いてやった。

 ドワーフはよしておこう。
 そして獣人について聞くのも止めておこう。

「オーケー。それじゃあ男はどっか行け。女はエルフ以外、廊下で待機だ」

 パンパンと手拍子をすると、奴隷たちは命令通りに動いてくれた。

「男は俺が見ようか?」

 するとジョンは、またもや爆弾を投下しやがった。

「は?」

「面接、俺がやろうか?」

 まさかここまでお膳立てしてくれたのに、俺の真の目的を知らない訳ないよな?
 長い付き合いだし、性癖だって分かってる。それに最近ヌケてないのだって知ってるってのに。

 お前ってば、もしかして……

「野郎とヤロうってのか!?」

「ヤラないよ。どういう仕事をするのか、そういうのをキチンと説明しておいたほうが良いだろう?いくら奴隷だからって、いきなり本番は大変だろうからさ」

「あーーー、そういうことね。了解任せたぜ!」

 両刀使いの本気を垣間見たかと焦ったが、なーんだそういうことかいジョン君よ。
 ならば任せようじゃないか。
 我が兄弟にならば、あれこれ指示を出さずとも信頼して頼めるってもんだ。

 ――バタンッ。

 さあてさて、目の前にいるのはボロい布を纏っただけの女の子。
 そして俺。

 静けさの漂う密室で、男女2人が見つめ合う。ドクドクと高鳴る心臓が、初心なあの頃を思い出させる。

「緊張してる?」

「いいえご主人様」

「そっかあ慣れてるんだね?じゃあ生年月日と年齢聞いてもいいかな?」

「1077年7月7日の177歳です」

「へえ、七夕生まれなんだね」

「七夕とはなんでしょうかご主人様」

「気にしなくていいよ。それじゃあスリーサイズ聞いてもいいかな?」

「スリーサイズ?とは何でしょうかご主人様」

「……この質問は飛ばそうね。うーんとねえ、じゃあどんな体位が好きかな?」

「奴隷になってからは、基本的に立位をとっています。座位をとることは稀で、睡眠のときに仰臥位をとる事ができます」

「…………そ、そっか。えーーと、1日にどれくらい一人でするのかな?」

「何をでしょうかご主人様」

「もういいです。AVの導入部分ぽいやり取りで楽しみたかったけど、もういいですっ!」

「AVとは何でしょうかご主人様」

 仰臥位をとる事ができますだあ?仰臥位って初めて聞いたわ!
 仰臥位ぎょうがいな、仰臥位ぎょうがい!要するに仰向けで寝ることな。
 体位と聞いて、誰が1日のルーティーンを喋ると思います?
 馬鹿みたいにご主人様ご主人様って語尾につけるしよぉ、なんだよ、ご主人様って言わなきゃ死ぬんかい。ニャンニャンて語尾につける獣人みたいに、キャラ付けのつもりかい!

「もう黙れ。ほら、まずはその汚え布を取ってこっち来い」

 ハラリと布が落ちた。
 なぜそこに躊躇いがない。一切のおとぼけがないんだ貴様は。
 まあいいさ。
 シルクのような肌が透き通っていて、そりゃあもう綺麗なこと。
 胸?そりゃあ、まあまあいい感じだわ。小さくもなく、決して大きくもなく。
 それがいいんだな、うん。

「ほい、次!突っ立ってないで俺のズボンを下ろさんかい」

 ボーっと突っ立てるのを見るのもいいが、虚ろに濁った目で佇むエルフは流石に怖い。
 だから指示を出したのだが……

「畏まりました、ご主人様」

「うっ……えぇ?ちょっと待て触んな、下がれ」

「はいご主人様」

 臭え!シンプルに口が臭え!
 もしかしてウンコをソテーにして食った?
 どんな調理をしたって、ウンコはウンコだからね?下味つけたって変わりゃしないんだからね?

「ちっ。もういい。机に手をついてケツを突き出してみろ」

「はいご主人様」

 口が臭えのは仕方ない。綺麗にしておけとジョンに頼んだが、口までは気が回らなかったんだろうよ。
 だがしかし、顔を近づけてみても背中からウンコみたいな臭いはしない。
 つーことは、まあ、アレだな。体は綺麗にしてあるって事だ。

 創出者諸君には申し訳ないが、ここから先はかなり大人アダルトな展開になっちまう。
 だからすまねえ。イメージで頑張ってくれよ。

 俺はズボンを下ろした。

 そして…………


「うぎゃああああああ゛!」

 絶叫した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜

MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった お詫びということで沢山の チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。 自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

処理中です...