上 下
24 / 66

12ー2.秘宝(玩具)

しおりを挟む
「要するに組織的な犯行ってこった」

「何か聞き出せました?」

「……アイシャが聞き出してくれたぜ」

すると、奥へ続く廊下の陰から、くるくるパーマがひょこっと出てきた。
顔も出せやッ!

「どうやら、プリッケ冒険者ギルドの連中にそそのかされたらしい」

「プリケツに……ちなみにいくら盗んだんです?その子」

「こっちの金庫には少額しか置いてねえからよ。大した金額じゃあねえんだ。ただ、一昨日ぐれえから、毎日だったから……」

おっさんの苦い顔を見れば、すべて聞かずとも分かる。
相当な金額を盗まれたんだろうな。

「40ゴールドぐれえか」

「一昨日から、1日40ゴールドとなると、120ゴールドですか……ガラス1枚の修理代ぐらい?」

「いや。3日で40ゴールドだ。上等な飯代ってとこか」

「しょぼ」

「ああ!?しょぼいってなんだ、てめえ」

「いや、40ゴールドのために盗みに入らせるって、しょぼくないですか?ゴブリン8匹倒せば手に入る金額っすよ?」

「だから金が目的じゃねえんだよ」

じゃあ一体何なんだよッ!
つーかまずは、鼻毛を切れ!険しい表情でタメを作られても、鼻にしか目がいかないの!

「ダンジョン攻略の証。秘宝を盗みに来たんだな」

ダンジョン!?秘宝!?
俺は思わず生唾を飲み込んだ。
ファンタジー要素満載の言葉に、胸が躍らないはずがない。
確かに、このおっさん。二つ名こそアレだが、まあまあ強い気がする。比較対象がシェリスしかいないんで、ちょっと定かではないけど。

つまり!マジで秘宝がある!
このギルドに!

「……秘宝。それは一体、どんな物なんです」

おっさんは、皆を見回した。
誰にも言うなよと、言いたげに。
そして、ゆっくりと口を開いた。

魔力喰らいの王冠グラクローナだ」

魔力喰らいの王冠グラクローナ!?か、カッコいい。どんな力が秘められてるんですかッ!?」

「欲しいもん……心の底から欲しいもんを具現化してくれるってえ宝具だ。オツムで欲しいと想像しちまえば、具現化してくれる。たとえこの世界に存在しなくてもな」

「ち、チートアイテムだ!ハンパないアイテムじゃないっすか!」

「まあな」

ん?なんでそんな、悲しげなんだ。
まさか失くした!?いやいや、いくらゴリラでも秘宝を失うほど落ちぶれちゃいないって。
ああ!
ものすごい力があるってことは、その代償もすごいってパターンだ。

結構グロめな感じなのか?

「魔力をバカみてえに喰われるから、もしもコイツが触ったら、死んでたろうな」

「ほう。それは、危なかったですね」

うんうん。少女も震えていらっしゃる。
これで反省して、普通の女の子になりな。ゴリラに頭を握りつぶされる前にな。

「ギルドマスターさぁん。その秘宝見たいなぁ」

「あ?ああ、まあ良いけどよお、さっき使ったばかっただからよお、ちょっと待っててくれるか?」

「はぁい!」

アドミラが見たいというのは、何となく分かる。
俺も見たい!
レイアも目を輝かせてるし、やっぱり秘宝は、ワクワクするよな!

だが、ちょっと気になるな。
さっき使ったばかって。まな板じゃああるめえし。
うーん?さっき?
さっきって何かしてたかな。
おっさんは、裏で腰振ってただけだろうに。

……ん?

おいおい嘘だろ。

秘宝を、まさか!

ゴリラてめえ、まさかッ!

奥へ続く廊下の陰から、おっさんが出てきた。
続いて、くるくるパーマがひょこっと顔をのぞかせて、顔を赤らめている。

おっさんの手に握られていたそれは……。

「おお、悪い悪い。ベタベタだったから、ちょっと拭いてきたわ。ほれこれが魔力喰らいの王冠グラクローナだ」

「ただのディ※※じゃねえかぁぁあ!」

「あ?違えよ。これは愛をサポートしてくれる宝具魔力喰らいの王冠グラクローナ……」

「死ねぇぇぇぇぇぇいッ!」

宝具というか、ただの卑猥な玩具。

俺が飛びかかったのは言うまでもない。

そして返り討ちにあったのも、言うまでもないだろう。






――――作者より――――
最後までお読みいただき、ありがとうごさいます。
作者の励みになりますので、♡いいね、コメント、☆お気に入り、をいただけるとありがたいです!
お手数だとは思いますが、何卒よろしくお願いします!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

男女比:1:450のおかしな世界で陽キャになることを夢見る

卯ノ花
恋愛
妙なことから男女比がおかしな世界に転生した主人公が、元いた世界でやりたかったことをやるお話。 〔お知らせ〕 ※この作品は、毎日更新です。 ※1 〜 3話まで初回投稿。次回から7時10分から更新 ※お気に入り登録してくれたら励みになりますのでよろしくお願いします。 ただいま作成中

処理中です...