上 下
22 / 66

11ー2.我慢しないでね?

しおりを挟む
まずはレイアが窓ガラスをガッツリ殴って破壊し、次はアドミラがてくてく歩き、おっさんのズラをつまみ上げ、ピザ生地のように回転させた。
そしてシェリスは、おっさんの襟首を掴み上げて、耳元で何か呟いている。

「はあ、はあ。そ、そうだ。君は才能がある、アアッ!も、ももっと罵ってくれぇ」

あ、あれ?なんか、別の意味で効いてねえか?
お前の才能が怖いよ。
まあいいや。
ツルッパゲのおっさんが、いろんな意味で覚醒しただけだし。

「あ、あのー」

「はい!終わりですか?」

「はい……こちら、報酬の25ゴールドです」

「アザッス。ところであのおっさんなんですか?」

「あー、アレは……貴族の血筋の方でして。全然仕事しないんですよね」

「へー」

仕事しないのはまだしも、シコるのは普通にイカれてるだろ。
まあ、貴族相手にはなんにも言えなかったんだろうけどさあ。
大変だなあ役所ってのも。

「あのおっさんが言ってた、プリッケ冒険者ギルドって、有名なんすか?つい最近会った冒険者が、そこのギルドだって言ってたんすよね」

「三大ギルドの一角ですから。かなり有名ですけど……」

「三大?ちょいと教えてくれませんかねえ?こう見えても、召喚勇者なもんで、知らないことばかりなんすよ」

「勇者様でしたか。そういうことなら分かりました。三大ギルドとは――」

三大ギルドとは!
世界を股にかける超有名冒険者ギルドを指す。
その一角、プリッケ冒険者ギルドは、三大の中では最も新しいギルドで、登録冒険者を増やしつつ勢力を拡大しているらしい。

「へー。この辺はプリッケの縄張りって感じなんすか?」

「そうですね。この国ではプリッケ冒険者ギルドと、ビリガン冒険者ギルドしかありませんから……はい」

「ああ、いいっすよ気を使わなくて。吹いて飛ぶ鼻くそみたいなギルドなんで。この国はプリッケ一強かあ。おす!勉強になりました、あざした!」

と言って帰ろうとしたが、呼び止められてしまった。

「あのー、ガラスを……」

「あー、アレはウチの冒険者じゃないんで、彼女に請求してください。ういっすアザした」

と言って、今度こそ玄関まできたわけだが、タタタッと俺に近づく影があった。

「ジュン!あ、アレは違うんだ!あの男に苛立って、ちょっと空突きをしてみただけなんだ。そしたら、ガラスが近づいてきてて」

「近づくかあ!お前が近づいたの!間隔が短かったから、拳がガラスをぶち破ったの!」

「わ、わざとじゃ」

「私は言いましたよ?自腹だとね!」

「頼む!自腹でいいから!一緒に頭を下げてくれないか?頼むよジュン!」

「はあ……」

俺は保護者じゃないの!と言おうかとも思ったが、ゴブリンを倒した中だ。
おっさんに絡んでる二人とは違って、いい奴だし……まあ、いいか。

「100ゴールドぐらいしますので、分割でお支払いお願いしますね」

「済まなかった。今払えるだけ払う!ジュン!それをくれ」

「ああ?嫌に決まってんだろ!せめてお前の分け前の6ゴールドだけ……」

「頼むジュン!アレだ!」

するとレイアは耳元に近づき言った。

「暗器のことは黙っておくから!頼む!」

コイツ……まさか知ってる?
俺の息子が凶暴化しただけだと知ってて、交渉の材料にしているのか!?

「暗器は隠しておいてなんぼだろ?なあ頼むよ」

この感じは……バレてはいないな。

クソッ!
だが断りきれない。
もしもあの二人に言いふらされたら、間違いなく俺の名誉に傷がつく!

そうだ!
だったら、俺も妥協案を提示すればいい。
このままじゃあ、俺だけが割りを食うから、少しばかり利益を得ないとな。
ウィンウィンてやつ。

「……くっ。じゃあ一つ言ってくれ」

「分かった!何を言えばいい?」

俺は、レイアの耳元でとある言葉を伝えた。
ずっと夢見ていた、あの言葉だ。

「そ、それだけでいいのか?私は構わないが」

「ああ頼む」

レイアは俺の耳元に近づき、言った。



「はぁぁ、こーんなに大きくして……我慢しないでね?」



「……はぁぁぁい!ありがとうございまぁぁあす!」

こうして、ゴブリン討伐報酬は、一瞬にして溶けてしまった。
なんか、おっさんの気持ちが分かった瞬間でもあった。






――――作者より――――
最後までお読みいただき、ありがとうごさいます。
作者の励みになりますので、♡いいね、コメント、☆お気に入り、をいただけるとありがたいです!
お手数だとは思いますが、何卒よろしくお願いします!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

カジュアルセックスチェンジ

フロイライン
恋愛
一流企業に勤める吉岡智は、ふとした事からニューハーフとして生きることとなり、順風満帆だった人生が大幅に狂い出す。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話

赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。 前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...