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10ー1.一番ヤバい奴
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ドゴオォォォォォォァァァァンッ!
たった今行われた拡張工事で、3倍ぐらいには広々とした玄関が出来上がった。
ただし、その代償は大きい。
天井も半分ぐらいなくなった。
「これ以上、俺を怒らせるなシェリス。いいな?」
シェリスはゴクリと生唾を飲み込み、コクリと頷いた。
そして、腰振りビリガンの手に舌を這わせて、まん丸のお薬を飲み込んだ。
くっそエロいと思った。
それはそうなんだが、それよりも腰振りビリガンの技が頭から離れない。
俺は間違いなく見たんだ。
腰振りビリガンが、シェリスの頬を叩く瞬間、何故か腰を振っていたことを。
いや、卑猥なやつじゃない。
たしかに腰を振る動き自体は卑猥だが、その腰に卑猥さは一ミリもなかった。
むしろ、恐ろしい。
腰をひと振りした瞬間に、入口か吹っ飛んだのだから。
腰振りビリガン――。
このおっさん、できるッ!
「はあ。落ち着いたか?」
「う、うん。ごめん、なさい」
腰振りビリガンは、シェリスを優しく下ろすと、ギロリと睨みつけた。
「おらあよお、冒険者って仕事に誇りを持ってる」
そしてなんか語り始めた。
「魔物を狩れるからでも、薬草の知識があるからでも、人を守る力があるからでもねえ。
どんな人間でも、受け入れる懐の深さが誇りなんだよ。分かっか?」
ほう。
貧乏でも、宗教が違っても、肌の色目の色が違っても、獣人であっても……誰でも成り上がれるチャンスが、冒険者にはあるってことか。
なるほどなあ。
腰振りビリガンめ、いいこと言うなあ。
「う、うん」
シェリスもなんか、しおらしくなって。
反省してるんだな。
「おし!俺からの話は終わりだ」
えええ?
何この消化不良な感じ。
なんもまとまってませんけど。
シェリスも目が泳いでるじゃんよ!どうしたらいいのか分かんねえんだよ!
「ああ、それから」
なーんだ。続きがあったのね。
「ゴブリンは討伐終わったか?終わったんなら報酬やるからよお」
「え?」
「終わってねえのか?そのなりで?」
「なりは関係ねだろ!いや、終わったすけど、話も終わりですか?含蓄のある深~いお言葉的なのは?説教は?」
「あるわけねえだろ。何匹殺った?」
「5匹……です」
「次からは討伐証明として、耳を削ぎ落としてこいよっと……あれ?ねえな」
腰振りビリガンは受付下にある金庫を覗き込んでいるが、ねえんだそうで。
こんな貧乏ギルド、トンズラしちまおうかしら。
「あーっとよお、金が盗まれたみてえだ。悪いが、町役場まで直接取りに行ってくんねえか?」
「町役場?なんで町役場なんすか?」
「ああ、おめえは召喚されたばっかだったな。んじゃあ――」
説明しよう。
これはファンタジーお決まりの説明パートである。
主人公である俺にも、このパートが降ってくることは当然なのだ。
さて、腰振りビリガン曰く。
まず、ギルドに依頼を出した依頼人は、依頼書という発注書と、報酬の1割をギルドに納める。
次に、冒険者が依頼を達成した場合、ギルドが持ち出しで支払いを行う。
最期に、ギルドが依頼人へと依頼達成の旨を報告し、報酬を受け取る。
というのがギルドのシステムだ。
んで、今の段階ではギルドが俺たちに支払いをしなきゃいけないわけだが、金がないと。
盗まれたとか嘘こいてるわけだ。
なので直接、依頼人である町役場から報酬を受け取ってこいと、俺たちに言ってる。
「つーことだ」
「ふむ?なんか納得いかねっすわ旦那」
「あんだよ。文句あっか?」
「ぅぉ。こ、怖くないぞ!暴力反対!」
ったく太え腕してやがる。俺の太ももみたいな前腕だな。
ああ恐ろしい。やっぱ文句は言わんとこかなー。
とか思ってたら、意外や意外。アドミラが声を上げた。
「ギルドの仕事を肩代わりするわけですからぁ、ちょっとだけ報酬に上乗せしていただけませんかぁ?と言いたいんですよねジュンさんは」
……バカだと思ってたけど、頭いいな。
「あー、そういうことか。構わねえぜ。ガキの駄賃ぐれえにしかならねえがよお」
「だそうですよぉ?ジュンさん?」
「あ、はい。アザッス」
「ああ!ほんでよぉ、シェリス!これやる!」
ポンッと投げられ、放物線を描くのは、茶色のビンだった。
シェリスがパシッと掴むと、腰振りビリガンは親指を立てて笑った。
「発情期は辛えだろ。ちゃんと飲めよ!てめえの体なんだから、大事にしな!」
「……は、はい」
は、はつ、はつはつはつはつはつはつはつ……。
――――作者より――――
最後までお読みいただき、ありがとうごさいます。
作者の励みになりますので、♡いいね、コメント、☆お気に入り、をいただけるとありがたいです!
お手数だとは思いますが、何卒よろしくお願いします!
たった今行われた拡張工事で、3倍ぐらいには広々とした玄関が出来上がった。
ただし、その代償は大きい。
天井も半分ぐらいなくなった。
「これ以上、俺を怒らせるなシェリス。いいな?」
シェリスはゴクリと生唾を飲み込み、コクリと頷いた。
そして、腰振りビリガンの手に舌を這わせて、まん丸のお薬を飲み込んだ。
くっそエロいと思った。
それはそうなんだが、それよりも腰振りビリガンの技が頭から離れない。
俺は間違いなく見たんだ。
腰振りビリガンが、シェリスの頬を叩く瞬間、何故か腰を振っていたことを。
いや、卑猥なやつじゃない。
たしかに腰を振る動き自体は卑猥だが、その腰に卑猥さは一ミリもなかった。
むしろ、恐ろしい。
腰をひと振りした瞬間に、入口か吹っ飛んだのだから。
腰振りビリガン――。
このおっさん、できるッ!
「はあ。落ち着いたか?」
「う、うん。ごめん、なさい」
腰振りビリガンは、シェリスを優しく下ろすと、ギロリと睨みつけた。
「おらあよお、冒険者って仕事に誇りを持ってる」
そしてなんか語り始めた。
「魔物を狩れるからでも、薬草の知識があるからでも、人を守る力があるからでもねえ。
どんな人間でも、受け入れる懐の深さが誇りなんだよ。分かっか?」
ほう。
貧乏でも、宗教が違っても、肌の色目の色が違っても、獣人であっても……誰でも成り上がれるチャンスが、冒険者にはあるってことか。
なるほどなあ。
腰振りビリガンめ、いいこと言うなあ。
「う、うん」
シェリスもなんか、しおらしくなって。
反省してるんだな。
「おし!俺からの話は終わりだ」
えええ?
何この消化不良な感じ。
なんもまとまってませんけど。
シェリスも目が泳いでるじゃんよ!どうしたらいいのか分かんねえんだよ!
「ああ、それから」
なーんだ。続きがあったのね。
「ゴブリンは討伐終わったか?終わったんなら報酬やるからよお」
「え?」
「終わってねえのか?そのなりで?」
「なりは関係ねだろ!いや、終わったすけど、話も終わりですか?含蓄のある深~いお言葉的なのは?説教は?」
「あるわけねえだろ。何匹殺った?」
「5匹……です」
「次からは討伐証明として、耳を削ぎ落としてこいよっと……あれ?ねえな」
腰振りビリガンは受付下にある金庫を覗き込んでいるが、ねえんだそうで。
こんな貧乏ギルド、トンズラしちまおうかしら。
「あーっとよお、金が盗まれたみてえだ。悪いが、町役場まで直接取りに行ってくんねえか?」
「町役場?なんで町役場なんすか?」
「ああ、おめえは召喚されたばっかだったな。んじゃあ――」
説明しよう。
これはファンタジーお決まりの説明パートである。
主人公である俺にも、このパートが降ってくることは当然なのだ。
さて、腰振りビリガン曰く。
まず、ギルドに依頼を出した依頼人は、依頼書という発注書と、報酬の1割をギルドに納める。
次に、冒険者が依頼を達成した場合、ギルドが持ち出しで支払いを行う。
最期に、ギルドが依頼人へと依頼達成の旨を報告し、報酬を受け取る。
というのがギルドのシステムだ。
んで、今の段階ではギルドが俺たちに支払いをしなきゃいけないわけだが、金がないと。
盗まれたとか嘘こいてるわけだ。
なので直接、依頼人である町役場から報酬を受け取ってこいと、俺たちに言ってる。
「つーことだ」
「ふむ?なんか納得いかねっすわ旦那」
「あんだよ。文句あっか?」
「ぅぉ。こ、怖くないぞ!暴力反対!」
ったく太え腕してやがる。俺の太ももみたいな前腕だな。
ああ恐ろしい。やっぱ文句は言わんとこかなー。
とか思ってたら、意外や意外。アドミラが声を上げた。
「ギルドの仕事を肩代わりするわけですからぁ、ちょっとだけ報酬に上乗せしていただけませんかぁ?と言いたいんですよねジュンさんは」
……バカだと思ってたけど、頭いいな。
「あー、そういうことか。構わねえぜ。ガキの駄賃ぐれえにしかならねえがよお」
「だそうですよぉ?ジュンさん?」
「あ、はい。アザッス」
「ああ!ほんでよぉ、シェリス!これやる!」
ポンッと投げられ、放物線を描くのは、茶色のビンだった。
シェリスがパシッと掴むと、腰振りビリガンは親指を立てて笑った。
「発情期は辛えだろ。ちゃんと飲めよ!てめえの体なんだから、大事にしな!」
「……は、はい」
は、はつ、はつはつはつはつはつはつはつ……。
――――作者より――――
最後までお読みいただき、ありがとうごさいます。
作者の励みになりますので、♡いいね、コメント、☆お気に入り、をいただけるとありがたいです!
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