4 / 17
#4 秘密の合言葉
しおりを挟む
俺はスマホを取手に取ると見悶える進に焦点を合わせた。進の硬化した肉筒がパンツの布地をしっかりと突き上げているアングルを捉え、俺は手早くシャッターを切った。
くぐもったシャッター音………。聴こえはしまいと思っていたが、神経を張り詰めていた進には、はっきりと聞き取れたようだった。
「だ、誰?」
進は驚いて声を上げる。
「俺だよ」
俺は側道から草地に姿を現した。
「田村君か。………びっくりしたよ」
あられもない姿を第三者に見られたと思ったのか、こわばった顔をしていた進だったが、木立から現われたのが俺だと分かると、緊張が解け、ほっとした表情を見せた。
「俺の掛けた縄が解ける訳はないだろう」
木に繋がれたチェーンを解きながら、俺は進に暗に今まで一部始終を見ていたことをほのめかすと、彼の顔は恥じらいにパッと赤く染まった。
「さあ、歩くんだ」
首輪のチェーンをぐいと引くと、進は上半身亀甲後ろ手縛りの不自由な体でたどたどしく俺の前まで歩み出る。俺は手のひらで進の尻をぴしゃりと叩き、俺の先を歩くよう促すと、進はもう抗うこともなく肩を落とし、悄然と山道を登り始めた。
さあ、野外引き回しの始まりだ…………。
………………中学二年の二学期が始まってすぐ、父親の急な転勤で俺はこの町を離れ、一家揃ってK県に引っ越すことになった。そしてそのまま、K県で高校も卒業し、大学もK県の国立大学に無事入ることができた。
……だがそうしたらどういう運命のいたずらか父が転勤で、再びこの町に戻ることになったのだ。結果、俺以外の家族はこの町に戻り、俺は下宿を探してK県の大学に通い続けることになった。
こうして初めての大学の夏休み、実に中学二年以来五年振りに、俺はこの町に戻ってきたのだ。この間、進はずっとこの町で暮らしていた。地元の高校、地元の大学に進学していた。
ちょっとした懐かしさ、そしてまた、ちょっとした期待を込めて進に電話を掛けたのはつい三日前のことだ。そして昨日、俺達は安い居酒屋で旧交を温め合った。久々に会ったのに、進は中学生のときから殆ど変わっていないように、俺には感じられた。
河童山へ行こうか………。
どちらが先にそう言ったのだろうか。俺だったかかもしれない。酔いに任せてふと口を出た言葉だった。
河童山、懐かしいね……。
……じゃあ明日車で迎えに行くよ………。
別れ際、どちらからともなくそういう約束が交された。
河童山へ行こう……。
それは他の人が聞いたならば文字通りの意味しかない言葉かもしれない。だけど俺達の間ではそれは秘密の合言葉だった……………。
くぐもったシャッター音………。聴こえはしまいと思っていたが、神経を張り詰めていた進には、はっきりと聞き取れたようだった。
「だ、誰?」
進は驚いて声を上げる。
「俺だよ」
俺は側道から草地に姿を現した。
「田村君か。………びっくりしたよ」
あられもない姿を第三者に見られたと思ったのか、こわばった顔をしていた進だったが、木立から現われたのが俺だと分かると、緊張が解け、ほっとした表情を見せた。
「俺の掛けた縄が解ける訳はないだろう」
木に繋がれたチェーンを解きながら、俺は進に暗に今まで一部始終を見ていたことをほのめかすと、彼の顔は恥じらいにパッと赤く染まった。
「さあ、歩くんだ」
首輪のチェーンをぐいと引くと、進は上半身亀甲後ろ手縛りの不自由な体でたどたどしく俺の前まで歩み出る。俺は手のひらで進の尻をぴしゃりと叩き、俺の先を歩くよう促すと、進はもう抗うこともなく肩を落とし、悄然と山道を登り始めた。
さあ、野外引き回しの始まりだ…………。
………………中学二年の二学期が始まってすぐ、父親の急な転勤で俺はこの町を離れ、一家揃ってK県に引っ越すことになった。そしてそのまま、K県で高校も卒業し、大学もK県の国立大学に無事入ることができた。
……だがそうしたらどういう運命のいたずらか父が転勤で、再びこの町に戻ることになったのだ。結果、俺以外の家族はこの町に戻り、俺は下宿を探してK県の大学に通い続けることになった。
こうして初めての大学の夏休み、実に中学二年以来五年振りに、俺はこの町に戻ってきたのだ。この間、進はずっとこの町で暮らしていた。地元の高校、地元の大学に進学していた。
ちょっとした懐かしさ、そしてまた、ちょっとした期待を込めて進に電話を掛けたのはつい三日前のことだ。そして昨日、俺達は安い居酒屋で旧交を温め合った。久々に会ったのに、進は中学生のときから殆ど変わっていないように、俺には感じられた。
河童山へ行こうか………。
どちらが先にそう言ったのだろうか。俺だったかかもしれない。酔いに任せてふと口を出た言葉だった。
河童山、懐かしいね……。
……じゃあ明日車で迎えに行くよ………。
別れ際、どちらからともなくそういう約束が交された。
河童山へ行こう……。
それは他の人が聞いたならば文字通りの意味しかない言葉かもしれない。だけど俺達の間ではそれは秘密の合言葉だった……………。
1
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる