幸せの形

夜瑠

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小さな女の子が砂場で遊んでいる。

それを遠くで見つめる女は年の離れた姉妹と言っても通じるほど若かった。

ゆき。そろそろ帰ろ。もう夕方だよ。」

「やだ!まだいる!」

「えー?じゃあママがばぁばのハンバーグ1人で食べちゃお!」

「え!だめ!ゆきちゃんのハンバーグ!!」

「じゃあほら帰るよ」

「うー…わかった…」

渋々といったように立ち上がり適当に砂を払った女の子は次の瞬間には嬉しそうに母の手を握った。


幸はもう3歳になった。

私ももう25歳だ。公園や託児所にいるママさん達とは一向に仲良くなれない。まだ若い私のせいだった。

そのせいで幸が他の子達からも避けられているのを知った時は辛かったし、自分のせいで幸に辛い思いをさせているのは悔しかった。

それでも

「まま!またあのお話して!」

「んー?どれ?」

「幸ちゃんの名前のお話!」

「おっけ~任せて」

こうして幸が私を慕ってくれるから、私は今日も幸せでいられる。


りっくんが出ていった日の雪は残酷なほど美しく私の目に焼き付いていた。
そして私があの頃執着していた

私はあのことを忘れたくなかった。なにより幸の父親であるりっくんのことを幸にも感じさせてあげたかった。

由来としては酷かも知れないが本人はとても気に入っている。


「とても綺麗な雪が降る日にあなたはママのところへ幸せを届けに来てくれたのよ」


同級生も周りのママも私が産む前から1人だと言うことに同情してくれる。
けど、私は不幸じゃない。

幸はとても良い子に育ってくれている。
見た目もりっくんに似てとても美人さん。
周りの子と家庭環境が違うことに気づいているみたいだけど何も気にしてはいないみたい。


私はパートを2つかけ持ちしている。

朝から夕方までと夜日付が変わる頃まで。

幸を寝かしつけてから仕事に向かうのはキツいけれどそれでも愛しい我が子のためならと頑張れる。

両親は自分達が少しは出してやる、と言ってくれるけど私は出来るだけ自分の働いたお金で幸を育てたかった。

だからもう少しお金が貯められたら2人でどこか実家の近くに部屋を借りて住もうと思っている。


私はとても幸せだ。


先日知り合いからりっくんが結婚したらしいと連絡が来た。
それを私に言ってどうするのか、と思ったけど昔からゴシップ好きな彼女のことだから深い意味は無いのだろう。

それを聞いて確かに腹が立ったし泣いた。

どうして私の時はあんなに拒絶したのにって。


でも数日経てば考えが変わることもあるだろう、と思えた。彼だってもう27歳だし周りからそれについて言われたことだろう。

だからもういい。

だって私は今が幸せだから。

過去のことを考えてこうしておけば、なんて考えない。考えるだけ無駄だもの。


「ママ!早く!ハンバーグ!ハンバーグ!」

にこにこと私の手を引く我が子を見る。


嗚呼、あの時産んでよかった。


「うん、早く帰ろうか。」


私は人生の大きな2択の大当たりを選んだのだ。

とても幸せな未来を。









fin.















※作者はこの結末が必ず正しいとは思ってません。中絶せざるを得ない場合もあると思います。沢山ある選択肢の内の1つの選択の話だとお考えください。
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