牢獄の王族

夜瑠

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出会い編

4.

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処刑とやらが終わると僕はいつもとは違う部屋に連れてこられた。

そして何故か温かい水に入れられた。

なんでこの水は温かいのだろうか。それに澄んでいる。水はもっと茶色くて臭いはずなのに。

僕がこの水を飲もうとすると皆が止める。

「いいですか?これはお風呂といって身体の汚れをとるための行為です。飲むためのお水ではないのですよ。わかりましたか?」

身体の汚れならいつも男の人がタオルで拭きにくるのに。それじゃダメなのだろうか。あれも『お風呂』というやつだったのか?

僕に問いかけた彼女は僕が何も答えないからか困ったように笑っていた。

喋ったら怒られるのをこの人は知らないのかな?それならこの人の両親は不思議な人だね。子供が喋っても怒らないなんて。


その後は髪を切られた。
父上は髪が短かったから不思議に思っていたけどあれはこうやって切っていたことを知った。部屋の外は知らないことだらけで面白い。

髪にもよく分からない液体をかけられてもしゃもしゃされた。あの液体はよく分からなかった。真っ白な水は初めてみた……いや、そういえば昔父上の連れてきた人が体からあんな感じの白いのを出していた。これはあれだろうか?でも確かあの人は髪じゃなくて僕の口に入れた。これはやはり食べ物?

僕がその液体を舐めようとするとまた皆が止める。

「これはシャンプーというもので食べられませんよ。食べたらダメです。分かりますか?」

「ぁ……う…」

「……!!…いま、喋った……!!」

思わず不満の声が漏れたのが聞かれたらしい。

やってしまった。


僕は急いで身体を丸めた。この人は何で攻撃してくるのだろうか。女の人だから母上と同じ鞭?それとも父上のように足と手だろうか?


でもいくら待っても痛みが来なかった。代わりに彼女は僕の身体を包むように覆いかぶさって泣いていた。

「……声を出していいんです……!!出ないんじゃなくて禁じられていたんですね……大丈夫です、もうそんなことを禁じる人はいませんから……!!」

僕は困惑した。誰かがこんなに僕の身体に触れることはなかった。老人が言っていた『抱きしめる』とはこの行為のことだろうか?

『互いの身体を優しく包むことを抱きしめると言うんじゃよ。……この鎖さえなければお主を抱きしめることができるのにのぉ……ま、いつかここから出た時まで覚えておくことじゃな。そしてそんな相手が現れたときは、』

僕は老人がいつか言っていた通りに行動した。

「……え、…」

『___相手の背に手を回してくっついてやるんじゃぞ。』


多分これであっているはずなんだけど……

この人さっきより派手に泣き始めちゃった……
あの老人の『抱きしめる』っていう行為じゃなかったのかな?やっぱり部屋の外のことは難しい。



お尻まであったゴワゴワしていた髪は肩の位置まで短くされた。
何回も何回もしゃんぷーというやつをされて髪の毛が変になってしまった。髪の毛なのに絡まらないんだ。それに髪から変な匂いがする。あの部屋では嗅いだことの無い匂いだ。
彼女が言うには花の匂いらしい。花は僕も知っている。老人が教えてくれた。
確かいい匂いがするいろんな色のひらひらが付いた草のこと。全然想像できないけどさっき外に出た時に見たやつではないかと思っている。


その後はまた違う部屋に連れてこられて椅子っていう物に座らされた。
座れって言われたから座ったのに床はダメですってまた困ったように彼女は笑っていた。

食事と言われて出された物に僕は驚いた。

僕の知っている食事じゃない。

まず床に落とされない。僕が落とそうとすると全力で止められた。

舐めようとするとふぉーくとないふを使いますって言われた。変な形をした物体だ。ないふを掴もうとするとまた全力で止められる。なんだと言うんだ。


「いいですか、右手にナイフを左手にフォークをもってゆっくり引いてください。今日は1口切れたらお粥を食べて頂きますからね」


今度はすぷーんというこれまた変な形のものを持たされて新しい食事がでてきた。この食事は僕の食べてたものに少し似ているかもしれない。いろんなものが混ざっていてドロドロしているんだ。
でも味が全然違う。なんでだろう。


部屋の外は不思議なことばかりで僕はずっと驚いてばかりだ。

知らないことばかりで頭が疲れる。あの部屋は何も考えなくて良かったから楽だったのに。はやくあの部屋に戻りたい。




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