牢獄の王族

夜瑠

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出会い編

2.

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あの日、僕はいつものように食事をしていた。

床に落とされた残飯しか食べたことがないため自分の食事がおかしいとは分からなかった。食事を持ってくる人も月に一度身体を拭きに来る人も皆、無言で仕事を終えるとすぐに去っていってしまうから。


そして定期的に親だと、この国の王家の者だと名乗る男女が殴りに来る。それだけが僕の人生だった。

よく分からない不満を僕にぶつけるだけぶつけていく親にも何も思わなかった。

ただ初めて『妹』という存在を連れてこられた時は驚いた。今まで両親と使用人数名しか見たことがなかったため自分の血縁がいるという可能性は考えたことも無かった。

「あなたが私のお兄様?随分ときたな……ん?あなたどこかで……っ!?あなたもしかして隠しキャラの……!!そう、そういうこと。あはははは!!やっぱり私はヒロインなのね!!なんだ私は正しかったんじゃない!!まさかこんなところにいたなんて!!」


今思えば妹は常におかしなことをいう人間だった。
言葉を聞く機会が両親の愚痴くらいしかない僕には言葉を理解することが難しかった。


流石にその様子には両親も引いていたようだが。


それから割と日は経たなかったと思う。いつものように食事をしていたら扉の開く音がして見たことも無いモノをもった不思議な格好をした人達が入ってきたのは。

彼らは僕を見ると驚いたように目を見開きしばらく見つめあっていた。

誰だろう。この人たちも『妹』?

それとも『親』というやつだろうか。

昔、両親の気まぐれで捕虜にされた敵国の老人と過ごしたことがある。その時に言葉の分からない僕にいろいろ教えてくれたのは彼だ。彼のおかげで僕は自分が『王子』と呼ばれる立場ということを知った。この部屋以外の世界を教えて貰った。

しかし彼から教えて貰った知識にはこんな服装の人は出てこなかったと思うが。


「……君は…………誰だ…?」

真ん中にいたら1人に尋ねられたが喋ると怒られるのでただ彼らを見つめていた。


そして気づけば処刑台。

なんて不思議なことだろう。

そして『親』と『妹』の首が転がっている。

……この赤い液体は知っている。よく僕のからだからでるものだ。他人の体にもあったのだと初めて知った。


また目の前を何かが飛んでいった。あれはなんだろう。『とり』は空をとぶもふもふした生物だと老人は言っていた。だが今のはもふもふしてなかった。虫だろうか。


僕はこの世界のことを何も知らない。

ただ初めて見る世界を次にまた見れる保証もないのでキョロキョロと忙しなく観察していた。


国民は未だに熱狂の渦にあった。



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