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灰色の日
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翌日はかなり早い時間に目が覚めた。昨日家に帰ってからベットに潜り込み、その状態で寝てしまったらしい。
外はほんのり明るくなってきていて、時計を見ると5時前ぐらいだった。今までの自分ならここで二度寝確実なのだが、流石に10時間以上寝ていれば、もう眠気はない。それよりも、昨日夕飯を食べなかったことでお腹が空いていた。
家族が寝ているのを考えて、音を立てないようにキッチンまで行く。冷蔵庫から牛乳を取り出し、魚肉ソーセージを一本だけ取り出して齧り付いた。この後2時間もすれば朝食なので、これくらいで我慢しておかなければ食べられなくなる。
少しマシになったお腹で自分の部屋に戻った。まだ肌寒い中、布団にくるまって壁を背に座る。スマホも触らず、ボーッと壁の方を見ていると、昨日のことが頭に浮かんできた。
本当に馬鹿な話だが、寝過ぎたことで昨日の事はもしかしたら夢だったんじゃないか、このまま待っていればそのうち彼女が顔を出すんじゃないか、そんな都合の良いことを考えていたと思う。
当然だが、その後2時間経っていつも彼女が来る時間になっても、いつものように「おはよう」と言いながら彼女が現れることはなかった。
布団を脱いで一階に降りる。すると朝食の席にはすでに父さんと母さん、それから妹が座っていた。
「おはよう」
「おはよう、お兄ちゃん。今日はミサキちゃん来てないけどちゃんと起きれたんだ」
「まあな」
妹からの揶揄うような視線を受けながら、空いている席につく。いつも来るのに今日に限って来ないから、何かあったのか気になっているらしい。
「それでそれで! ミサキちゃんと喧嘩でもしたの?」
「喧嘩したならちゃんとアンタから謝っときなさいよ。どうせ謝るんだから、早い方がいいでしょ」
妹と母からは喧嘩したのだと思われたらしい。まあ、今までこういうことが何回かあったから、そう思うのも無理ない。
「違うよ。喧嘩なんかしてない」
「嘘だぁ。今までミサキちゃんが来なかった日って、お兄ちゃんと喧嘩した日だけじゃん」
「本当にしてないっての。ただ、アイツの方に来ない理由が出来たんだよ」
「来ない理由? あ、それってもしかして彼氏?」
冗談言ってるみたいな顔で、俺に問いかけてくる妹。それに対して俺は何も返せなかった。多分この時の俺の顔は強張ってたと思う。
「えっと、マジ?」
「…」
「マジかぁ。私ミサキちゃんは絶対お兄ちゃんが好きなんだと思ってた」
「そう、ミサキちゃんに彼氏が出来たのね。そうよね、もう高校生だもんねぇ。彼氏くらい居てもおかしくないわよね」
昨日の今日でまだ実感が湧いてなかったが、この話をされるのはキツかった。急いで朝食を食べて、部屋に戻って支度する。そしてこれ以上何も聞かれないようにさっさと家を出た。
いつもより少しだけ早い時間に一人で歩いて学校に向かう。いつもなら隣にミサキが居て話しながら学校に行っていたので、静かすぎて気持ちが悪かった。
学校が近くなると、同じ高校の制服を着た人達が多くなってくる。何気ないいつもの風景。だけど今日はその中によく知ってる人物がいた。ミサキだ。
その姿を見た時、俺は何故か早歩きでミサキの元に向かおうとした。何がしたかったのかは覚えていない。ただ、もう一度ミサキと話したかったのかもしれない。
けれど、近くにまで来て俺の足はピタリと止まった。ミサキの隣に男が居て、楽しそうに笑っていたからだ。その男は俺もよく知っている人物だった。同じクラスの中島だ。イケメンと言うわけでもなく、勉強も運動もそこそこ。ただ明るくて積極的な性格で、クラス内でもムードメーカー的な存在の一人だ。自然と視線が下がる。するとミサキと中島の手が目に入った。繋いでこそいないが、お互いの手と手の間の間隔がほとんど無い。と言うかくっ付いてる。
その瞬間、俺は本当に実感した。昨日の事、そして自分がもうミサキの隣に居ることが出来ないと言う事を。
世界が灰色になった気がした。
外はほんのり明るくなってきていて、時計を見ると5時前ぐらいだった。今までの自分ならここで二度寝確実なのだが、流石に10時間以上寝ていれば、もう眠気はない。それよりも、昨日夕飯を食べなかったことでお腹が空いていた。
家族が寝ているのを考えて、音を立てないようにキッチンまで行く。冷蔵庫から牛乳を取り出し、魚肉ソーセージを一本だけ取り出して齧り付いた。この後2時間もすれば朝食なので、これくらいで我慢しておかなければ食べられなくなる。
少しマシになったお腹で自分の部屋に戻った。まだ肌寒い中、布団にくるまって壁を背に座る。スマホも触らず、ボーッと壁の方を見ていると、昨日のことが頭に浮かんできた。
本当に馬鹿な話だが、寝過ぎたことで昨日の事はもしかしたら夢だったんじゃないか、このまま待っていればそのうち彼女が顔を出すんじゃないか、そんな都合の良いことを考えていたと思う。
当然だが、その後2時間経っていつも彼女が来る時間になっても、いつものように「おはよう」と言いながら彼女が現れることはなかった。
布団を脱いで一階に降りる。すると朝食の席にはすでに父さんと母さん、それから妹が座っていた。
「おはよう」
「おはよう、お兄ちゃん。今日はミサキちゃん来てないけどちゃんと起きれたんだ」
「まあな」
妹からの揶揄うような視線を受けながら、空いている席につく。いつも来るのに今日に限って来ないから、何かあったのか気になっているらしい。
「それでそれで! ミサキちゃんと喧嘩でもしたの?」
「喧嘩したならちゃんとアンタから謝っときなさいよ。どうせ謝るんだから、早い方がいいでしょ」
妹と母からは喧嘩したのだと思われたらしい。まあ、今までこういうことが何回かあったから、そう思うのも無理ない。
「違うよ。喧嘩なんかしてない」
「嘘だぁ。今までミサキちゃんが来なかった日って、お兄ちゃんと喧嘩した日だけじゃん」
「本当にしてないっての。ただ、アイツの方に来ない理由が出来たんだよ」
「来ない理由? あ、それってもしかして彼氏?」
冗談言ってるみたいな顔で、俺に問いかけてくる妹。それに対して俺は何も返せなかった。多分この時の俺の顔は強張ってたと思う。
「えっと、マジ?」
「…」
「マジかぁ。私ミサキちゃんは絶対お兄ちゃんが好きなんだと思ってた」
「そう、ミサキちゃんに彼氏が出来たのね。そうよね、もう高校生だもんねぇ。彼氏くらい居てもおかしくないわよね」
昨日の今日でまだ実感が湧いてなかったが、この話をされるのはキツかった。急いで朝食を食べて、部屋に戻って支度する。そしてこれ以上何も聞かれないようにさっさと家を出た。
いつもより少しだけ早い時間に一人で歩いて学校に向かう。いつもなら隣にミサキが居て話しながら学校に行っていたので、静かすぎて気持ちが悪かった。
学校が近くなると、同じ高校の制服を着た人達が多くなってくる。何気ないいつもの風景。だけど今日はその中によく知ってる人物がいた。ミサキだ。
その姿を見た時、俺は何故か早歩きでミサキの元に向かおうとした。何がしたかったのかは覚えていない。ただ、もう一度ミサキと話したかったのかもしれない。
けれど、近くにまで来て俺の足はピタリと止まった。ミサキの隣に男が居て、楽しそうに笑っていたからだ。その男は俺もよく知っている人物だった。同じクラスの中島だ。イケメンと言うわけでもなく、勉強も運動もそこそこ。ただ明るくて積極的な性格で、クラス内でもムードメーカー的な存在の一人だ。自然と視線が下がる。するとミサキと中島の手が目に入った。繋いでこそいないが、お互いの手と手の間の間隔がほとんど無い。と言うかくっ付いてる。
その瞬間、俺は本当に実感した。昨日の事、そして自分がもうミサキの隣に居ることが出来ないと言う事を。
世界が灰色になった気がした。
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