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熱い日々

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 セックスをして寝て食べて、シャワーを浴びながらセックスをして、また寝る。起きて、セックスをして、食べて、シャワーを浴びながらセックスをして……
 という生活が二日間続いた。 

 彼はとてもよく寝た。
 ここ二週間、ろくに寝ていなかったらしい。
 寝不足でない私も、彼の腕の中はやっぱり気持ち良くて、つられてウツラウツラと寝てしまう。
 シトシトと降る雨の音や、次第に訪れる夜の静けさに、ゆっくりと時が流れるのを感じた。

 そして、再び日が昇って朝が訪れる。
 百年の眠りから目覚める眠りの森の姫のように、唇に感じたキスで私は目を覚ました。
 王子様のような彼がとろけるようなキスで、ロマンチックな世界へと、私を覚醒させる。

 私と彼以外、誰も入り込めない二人だけの世界。

 でもその世界は長くは続かない。
 月曜日という現実が、私と彼を元の世界へと引き戻す。

「……また会社に行けなくなるといけない」

 名残惜しそうに私の唇を離すと、彼がネクタイを締め直す。 
 身体を起こそうとすると、

「起きなくていい」

 といってきますのキスをして、彼が清清しく出て行った。
 ベッドの上で裸で丸二日も過ごしたなんて。

 こうしてはいられないと、シャワーを浴びる。
 彼とのひと時に水を差したくなくて、つい引っ越しの件を言いそびれてしまった。
 彼との仲がうまく行ったからと言って、彼のマンションを出ていくという意思は変わらなかった。
 とにかく居候という立場を解消したい。
 何もすることがなかったので荷造りを始めていると、彼から電話が掛かってきた。

「明日休みが取れそうなんだ。今夜から温泉旅行に行かないか?」

 電話に出るなり、彼が言う。

「え? 今夜から? 旅館の予約もないのに?」

「旅館は俺が手配する。出かけるのは夕方になるから、近場になるが……」

「それっ絶対いい!」

 忙しい彼とデートもままならない私には、彼と旅行に行けるだけで嬉しい。
 五時には戻るから支度をしておくようにと告げると、彼は電話を切った。
 今夜にでも彼にマンションを出る話をしようと思っていたのに、温泉旅行に行くことになるなんて。

 そして、気が付いた。
 着回し過ぎた服しか持ってないことに。

 なんてこった、と急いで駅前の百貨店に向かった。
 せっかくの旅行なのだから、私の違う一面を彼に見せてハッとさせたい。
 今までは可愛い系ファッションが多かったから――ということで、「いつもと違う大人のセクシーさ」というテーマまで考え、服を探すこと数時間。
 ようやく、テーマに沿ったスカートとトップスを何着か見つけた。
 目標を達成した充実感で、帰ろうとした直前。 

『令月荘を予約した。旅館付近で夜八時に花火大会が行われるから、五時には出発できるように』 

 彼からラインで連絡が入る。
 令月荘って、あの老舗旅館に? しかも、花火大会だなんて! 

 花火大会と言えば、浴衣だ。浴衣を買わないと。
 感激するよりも、真っ先にそう思った私は、浴衣売場へと向かう。

 浴衣くらいなら、自分で着付けできるし……
 値段と相談しながら、赤地に牡丹の柄をあしらったレトロな浴衣を選んだ。
 浴衣に合うかんざしも買い、巾着や草履を選ぶのに夢中になっていると、あっという間に四時近くになってしまった。

 急いで彼のマンションに戻って、荷造りをする。
 荷造りを超特急で済ませると、買ったばかりの服に着替えた。
 旅館で浴衣に着替えるとして、髪は事前にセットしておきたい。
 バスルームの鏡に向かうと、肩までしかないミディアムボブの髪をUコームとヘアスプレーで、クルッと夜会巻きにする。
 短時間で済ませながらも、メイクをバッチリし、「いつもと違う大人のセクシーさ」からブレてないことを、様々な角度からチェックしていたところで、彼が帰ってきた。 
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