ワケあって、お見合い相手のイケメン社長と山で一夜を過ごすことになりました。

紫月あみり

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しかし不運は続き… (4)

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 翌日は白い雲が青い空に浮かぶ、晴天だった。
 ゴールデンウィークを盛り上げるような行楽日和を遮断するようにブラインドを閉め切ると、巧がDVDのスイッチを押す。

 巧はソファー、私は床の真ん中に敷かれたふかふかのカーペットを陣取り、お互いスウェットというラフな格好で、寝そべりながら見るハードSFは最高だった。
 宇宙という壮大なスケールで繰り広げられる戦闘。
 派手な爆発シーンが目にチカチカと眩しく光る。
 話が進むにつれて、増す増す深みにはまっていく。
 昼はテレビを見ながらマダムが送ってきた冷凍フォアグラのステーキと果物を食べ、夜もまたテレビを見続けながらマダムから送られてきたチーズの詰め合わせとクラッカーで簡単に済ませる。

「もう十二時かー。このエピソードで終わりにしようぜ」

 腕をストレッチしながら、巧がついに決心をする。

「そうだね。もう寝ないとね」

 私も大きく頷いて、その正論を支持した。

 ……のはずが、あともう一話だけと見てしまう。
 その一話だけでは終わらず、さらにもう一話だけと繰り返し、とうとう徹夜してしまった。

 次の日もまたその次の日も、昼と夜の区別がつかないような日々がずるずると続く。
 そんな生活にピリオドを打ったのは、全シリーズを見終わったある早朝のことだった。
 エンディング曲が終わり、重い身体を起こしてブラインドを開ける。
 思いがけず突き刺さるような朝日に全身がひるんだ。 

 ヴァンパイアになったような気分だ。

 スマートフォンをチェックすると、ゴールデンウィーク明けの月曜日だった。
 相変わらず、新着メールなし。
 振り返れば、巧はもぬけの殻のように暗いスクリーンを見つめている。
 目の下にクマを作って。
 ゴールデンウィークを無駄に過ごしてしまった。

 こんなバカなことは巧としかできないな、と実感した瞬間だった。
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