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第三章 溺愛する皇子(最終章
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「俺と言う婚約者を持ちながら、違う男には笑うんだ」
この人は何言ってるのかしら?
顔も見ずに指名をした指さし婚約者に・・・。
婚約者がいようが、いまいが楽しければ人間男女関係なく笑うわよ。
この日も学校から帰宅は、唐突もなく現れた誠一の使用する王族専用車での帰宅だった。
「誠一皇太子殿下に対しても笑顔で接していますが?」
不機嫌そうに豪華なリムジンに向かい合って座ると、誠一は口を開くが・・・。
志麻子は誰に対しても、どのような状況においても。
極力笑顔で接するようにしている。
「愛想が良いのは知っている」
「愛想が良いのは良い事ではありませんか。それに、しょっちゅう、殿下に対しても本心から、笑っています。殿下の目は公務でお疲れで、機能が落ちているのではないでしょうか?ぜひ、眼科までお供いたしますよ?」
「眼下に行く時間はない」
「私の所に来る時間があれば、眼科に行く時間も沢山あるかと思いますが?」
「ない。それより、そう思えないという事は心の疲労だと思う」
「では、心の風邪ですね。心療内科ですね」
「いや。俺に必要なのは、癒しだ」
誠一はそういうと、篠田伯爵家に到着するのだが。
「誠一皇太子殿下。私の鞄をお渡しください」
誠一は志麻子の鞄を抱き込んでいた。
「人質ならぬ。鞄質」
無茶苦茶な。
「人質、鞄質は良いですが。私に何をして欲しいんですか?」
そう言った時、誠一の顔がひときわ険しくゆがむ。
「あいつと、どういう関係だ」
クイっと誠一が顎で指すのは、窓の外に見えるの潤。
「潤ですか?潤は・・・」
「ちっ。呼び捨てなのか」
―――ぞくっ。
反射的に出た誠一の舌打ちに志麻子は少しだけ肩を震わせた。
「すまない。怯えさせたな」
誠一はそんな志麻子の様子に詫びるのだが・・・。
自分が一番正しい!
俺の後ろに道ができる!
世界は俺の言う通りだっというスタンスの誠一に謝られるのは、それはそれで・・・。
怖い。
しかし、志麻子の思考回路は普通の女の子とは少しずれている。
実害がないにも関わらず、おびえた自分に恥ずかしさと情けないっと思うと。
体を少し捻りぽんっと誠一の肩に当て上目づかいで見上げた。
「怒っている殿下。怖い」
「ほぅ。お前にもそういう芸当ができるのか」
ニヤリと誠一は笑うと、鞄を自分の脇に置き。
向かい合っている志麻子の隣に座りなおした。
「上目遣いをどうせやるなら、至近距離からしろ」
ひぃぃぃぃぃ。
男性経験はおろか。
家族以外の男性とダンスなど親睦を深めるだの目的を持ったふれあいをしたことのない志麻子は心の中で悲鳴を上げる。
誠一は上機嫌で志麻子の肩に腕を回す。
「さぁ。もっと、やれ」
ひぃぃぃぃいぃぃ。
志麻子は心の中で悲鳴を上げるが、やりかけたことは最後までやる。
「皇太子殿下」
「誠一」
皇太子殿下。お戯れが過ぎますっと言おうとするが、その言葉は“誠一”っという単語で阻まれた。
「?」
頭の中に何が言いたいのだろうと、志麻子は首を傾げるが。
「誠一」
再び“誠一”っと呼ばれ。
名前を呼んでほしいのかと、この場を解消したいこともあり・・・。
「誠一皇太子殿下」
「誠一」
「誠一殿下?」
「誠一」
だけを名前を呼べという事なのだろうか?
潤ッと呼び捨てにしていることにたいして、不機嫌になったのだろうと思うと志麻子は答えにたどり着くが。
一介の伯爵令嬢が、次期国王を呼び捨てになどはおこがましい。
しかもだ。
自分は数週間から数か月で解任される婚約者。
「・・・誠一様」
「誠一」
「殿下を呼び捨てなんて・・・」
「誠一」
何を言っても自分の名前のみを言う誠一を志麻子じっと見つめる。
「王族命令だ。呼び捨てにしなければ、その口を一生俺の口でふさぐぞ?」
「騒ぎますよ?」
「騒いで構わない。騒いでも俺を止める奴などこの国にはいないだろうし、もし、志麻子に嫌われたら、嫌われた分だけ愛そう」
「・・・ストーカーの心理ですか?」
「志麻子が逃げ隠れするようになったら、そうなるかもしれないな」
にっこり笑う誠一に志麻子はため息をついた。
この人は頑固だ。
志麻子も頑固だが、誠一のガッコっぷりの方が酷い。
「誠一」
「なんだ?」
「潤は従兄弟なので・・・。殿下が思っているような関係ではありませんよ」
そう言った志麻子の顔は切なそうで、誠一は心が曇るのが分かった。
従兄弟じゃなければ良かったと思っているのか。
志麻子の好きな男の好みは年齢の近い。
明るい鬼ごっこをするような男。
私は数週間から数か月で解任される婚約者。
いつ解任されるのだろう。
なんだか、大切にされているような気がして・・・。
好きになってしまいそう。
―――好き。
―――好きになる。
もうなってるかもしれないわね。
“歴代の婚約者は数週間から数か月で解任。はまり込むなよ”
潤に前回会った時に、そんな事を言われたっけ。
志麻子は切なさを感じずにはいられなかった。
おおいっと潤が志麻子を呼ぶのが見え、志麻子は手を伸ばして学生鞄を持つ。
じゃあっと車を降りようとするのだが。
「足元に気をつけて」
車から降りる時、誠一は必ず志麻子に手を差し出す。
しかも、手を差し出すだけではなくて。
志麻子に必ず声を掛ける。
つい数週間前まで、ガン無視していたと思えない豹変っぷり。
「指さし婚約者を随分、大切に扱っているようで」
潤はニコニコとしているが、発する言葉は敵意あるもの。
「きっかけはどうであれ。“愛する”婚約者をエスコートするのは、当然の事だ」
「歴代の婚約者がどういういきさつで、数週間から数か月で解任されていったのかは知りませんが。志麻子を傷つける事だけはおやめくださいねと」
潤はそういうと、志麻子の学生鞄を持つ。
「おいで。お爺様とお婆様も来ているんだ。志麻子の帰りを首を長くして待っているよ」
ぽんぽんっと潤は志麻子の頭を軽く撫ぜる。
「おいで」
おいでってなんだ。
おいでって。
潤が志麻子に言うと、志麻子は誠一から一歩足を踏み出す。
大人しく従う様に誠一はいつも、自分から志麻子に近づくか。
志麻子を引き寄せるかばかりで、嫉妬が心の中を渦巻く。
この人は何言ってるのかしら?
顔も見ずに指名をした指さし婚約者に・・・。
婚約者がいようが、いまいが楽しければ人間男女関係なく笑うわよ。
この日も学校から帰宅は、唐突もなく現れた誠一の使用する王族専用車での帰宅だった。
「誠一皇太子殿下に対しても笑顔で接していますが?」
不機嫌そうに豪華なリムジンに向かい合って座ると、誠一は口を開くが・・・。
志麻子は誰に対しても、どのような状況においても。
極力笑顔で接するようにしている。
「愛想が良いのは知っている」
「愛想が良いのは良い事ではありませんか。それに、しょっちゅう、殿下に対しても本心から、笑っています。殿下の目は公務でお疲れで、機能が落ちているのではないでしょうか?ぜひ、眼科までお供いたしますよ?」
「眼下に行く時間はない」
「私の所に来る時間があれば、眼科に行く時間も沢山あるかと思いますが?」
「ない。それより、そう思えないという事は心の疲労だと思う」
「では、心の風邪ですね。心療内科ですね」
「いや。俺に必要なのは、癒しだ」
誠一はそういうと、篠田伯爵家に到着するのだが。
「誠一皇太子殿下。私の鞄をお渡しください」
誠一は志麻子の鞄を抱き込んでいた。
「人質ならぬ。鞄質」
無茶苦茶な。
「人質、鞄質は良いですが。私に何をして欲しいんですか?」
そう言った時、誠一の顔がひときわ険しくゆがむ。
「あいつと、どういう関係だ」
クイっと誠一が顎で指すのは、窓の外に見えるの潤。
「潤ですか?潤は・・・」
「ちっ。呼び捨てなのか」
―――ぞくっ。
反射的に出た誠一の舌打ちに志麻子は少しだけ肩を震わせた。
「すまない。怯えさせたな」
誠一はそんな志麻子の様子に詫びるのだが・・・。
自分が一番正しい!
俺の後ろに道ができる!
世界は俺の言う通りだっというスタンスの誠一に謝られるのは、それはそれで・・・。
怖い。
しかし、志麻子の思考回路は普通の女の子とは少しずれている。
実害がないにも関わらず、おびえた自分に恥ずかしさと情けないっと思うと。
体を少し捻りぽんっと誠一の肩に当て上目づかいで見上げた。
「怒っている殿下。怖い」
「ほぅ。お前にもそういう芸当ができるのか」
ニヤリと誠一は笑うと、鞄を自分の脇に置き。
向かい合っている志麻子の隣に座りなおした。
「上目遣いをどうせやるなら、至近距離からしろ」
ひぃぃぃぃぃ。
男性経験はおろか。
家族以外の男性とダンスなど親睦を深めるだの目的を持ったふれあいをしたことのない志麻子は心の中で悲鳴を上げる。
誠一は上機嫌で志麻子の肩に腕を回す。
「さぁ。もっと、やれ」
ひぃぃぃぃいぃぃ。
志麻子は心の中で悲鳴を上げるが、やりかけたことは最後までやる。
「皇太子殿下」
「誠一」
皇太子殿下。お戯れが過ぎますっと言おうとするが、その言葉は“誠一”っという単語で阻まれた。
「?」
頭の中に何が言いたいのだろうと、志麻子は首を傾げるが。
「誠一」
再び“誠一”っと呼ばれ。
名前を呼んでほしいのかと、この場を解消したいこともあり・・・。
「誠一皇太子殿下」
「誠一」
「誠一殿下?」
「誠一」
だけを名前を呼べという事なのだろうか?
潤ッと呼び捨てにしていることにたいして、不機嫌になったのだろうと思うと志麻子は答えにたどり着くが。
一介の伯爵令嬢が、次期国王を呼び捨てになどはおこがましい。
しかもだ。
自分は数週間から数か月で解任される婚約者。
「・・・誠一様」
「誠一」
「殿下を呼び捨てなんて・・・」
「誠一」
何を言っても自分の名前のみを言う誠一を志麻子じっと見つめる。
「王族命令だ。呼び捨てにしなければ、その口を一生俺の口でふさぐぞ?」
「騒ぎますよ?」
「騒いで構わない。騒いでも俺を止める奴などこの国にはいないだろうし、もし、志麻子に嫌われたら、嫌われた分だけ愛そう」
「・・・ストーカーの心理ですか?」
「志麻子が逃げ隠れするようになったら、そうなるかもしれないな」
にっこり笑う誠一に志麻子はため息をついた。
この人は頑固だ。
志麻子も頑固だが、誠一のガッコっぷりの方が酷い。
「誠一」
「なんだ?」
「潤は従兄弟なので・・・。殿下が思っているような関係ではありませんよ」
そう言った志麻子の顔は切なそうで、誠一は心が曇るのが分かった。
従兄弟じゃなければ良かったと思っているのか。
志麻子の好きな男の好みは年齢の近い。
明るい鬼ごっこをするような男。
私は数週間から数か月で解任される婚約者。
いつ解任されるのだろう。
なんだか、大切にされているような気がして・・・。
好きになってしまいそう。
―――好き。
―――好きになる。
もうなってるかもしれないわね。
“歴代の婚約者は数週間から数か月で解任。はまり込むなよ”
潤に前回会った時に、そんな事を言われたっけ。
志麻子は切なさを感じずにはいられなかった。
おおいっと潤が志麻子を呼ぶのが見え、志麻子は手を伸ばして学生鞄を持つ。
じゃあっと車を降りようとするのだが。
「足元に気をつけて」
車から降りる時、誠一は必ず志麻子に手を差し出す。
しかも、手を差し出すだけではなくて。
志麻子に必ず声を掛ける。
つい数週間前まで、ガン無視していたと思えない豹変っぷり。
「指さし婚約者を随分、大切に扱っているようで」
潤はニコニコとしているが、発する言葉は敵意あるもの。
「きっかけはどうであれ。“愛する”婚約者をエスコートするのは、当然の事だ」
「歴代の婚約者がどういういきさつで、数週間から数か月で解任されていったのかは知りませんが。志麻子を傷つける事だけはおやめくださいねと」
潤はそういうと、志麻子の学生鞄を持つ。
「おいで。お爺様とお婆様も来ているんだ。志麻子の帰りを首を長くして待っているよ」
ぽんぽんっと潤は志麻子の頭を軽く撫ぜる。
「おいで」
おいでってなんだ。
おいでって。
潤が志麻子に言うと、志麻子は誠一から一歩足を踏み出す。
大人しく従う様に誠一はいつも、自分から志麻子に近づくか。
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