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第二章 公爵は身代わりの花嫁に接近したい
④
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翌朝。
恵麻はいつも通り6時に起きると、さっと着替えを済ませて6時5分に部屋を出た。
「きゃっ。あ、おはようございます」
扉を明開けると、部屋の前に立っていた人物に小さな悲鳴をあげる。
そう、龍迫は午前5時半から恵麻の部屋の前に立っていた。
スラックスにカッターシャツと言うラフな格好で、欠伸をしながら。
ずぅーっと立っていた。
まさか、龍迫が立っているとは思わず悲鳴を上げると反射的に挨拶をする。
「おはよう」
大欠伸をする龍迫に恵麻は苦笑する。
「朝が早いのですね」
隣の部屋で生活をいつまでかは知らないが、しても良いと言ったのだ。
話しかけてもいいのかな?っと思いつつ声を掛ける。
「あぁ!」
ふぁ~っと大欠伸をしながら、答える龍迫は優しい表情をしており。
なんだか、凄く嬉しそうだった。
「えっと、ご用ですか?」
「用はない」
素っ気なく答える龍迫は口元が緩み、笑っているようだった。
「・・・どうなさいましたか?」
なぜ笑っているのだろうか。
なぜ機嫌がここまで良いのだろうか。
昨日。謝られたし、私は話す事が許されたということなのだろうか?
それとも、夜会は不参加となったが疑似夫婦を望んでいるのだろうか?
公爵の意図が分からない。
ドアの前に立っていたという事は、何かしら私に用があるのだろうと思い聞くが、用はないという。
「恵麻と時間を共有させてもらいたい」
私と時間を共有。
何を言っているのだろう?
私はこれから、洗濯をするのだけど?
「好きな所に行き、好きなようにしろ。俺は付いて行く」
好きな所にいって、好きなようにしろって。
この人は私を10億円で能津家から買ったのに面白いわ。
これをしろだの、あれをしろだの、こう振舞えだの言わないのね。
「ふふふっ」
思わず笑う恵麻に龍迫は、バツが悪そうに頭をポリポリ掻く。
「お洗濯をします。えっと、一緒に来ていただけますか?」
「あぁ」
公爵様が。屋敷の主が洗濯場に早朝に行く・・・。
前代未聞だわ。
恵麻は絶対に洗濯場に行ったら、メイド達は慌てふためくでしょうね。
なんだか、いたずらをしにいくようだわ。
クスクス笑いながら、恵麻は洗濯場に着くと息を吸い込んだ。
「皆さん。おはようございます」
「恵麻様・・・・。きゃぁー!!!!!ご主人様が出たー!!!」
「うわっっっ。ご主人様が恵麻様と歩いてる!!!」
まるで幽霊でも見たかのようにその場の恵麻以外の全員が声を上げる。
「あはははは」
メイド達の予想通りの反応に恵麻はお腹を抱えて笑い出した。
明るく楽し気に笑う恵麻に龍迫は少しバツが悪そうにするが、メイド達が屋敷の主の登場に叫ぶという大変失礼な態度であるが何も言わずたたずむ。
摩訶不思議な状態。
「洗濯が終わり次第、声をかけますので。仮眠をとられてください」
恵麻を見つめる龍迫の視界にはメイドが入る。
龍迫に見られていることもあり、彼女達は緊張状態の中、メイドはぎこちなく洗濯を行いスピードがいつもの半分以下。
そして、龍迫は欠伸を連発。
恵麻はメイドも龍迫も誰も徳をしないと声をかけるのだが。
「いい。お前を見とく」
龍迫は欠伸を噛み殺して却下。
それだけ眠たそうに大あくびをしながら、見とくと言われても気まずいし。
今から手洗いするもの中には、下着も含まれており。
どちらかと言えば、見られているとやや困るが。
この公爵様は下着を見たいとか、そういう横島な感情はなく。
文字通り私を見ているのだろう。
「面白いですか?」
「面白くはないが、感心はしている。手際が良いな」
メイド達のスピードはいつもの半分以下だが、恵麻のスピードは変わらない。
「慣れていますから」
「俺もやってみるか」
昨日は、ヘリコプターが突っ込んだ損害賠償請求書だの。
恵麻が建築を大学で学んでいたために大至急で作ってくれた新しい見張り塔兼護衛の詰所の案を見ていてほとんど眠っていない。
龍迫は立ったままだと眠ってしまいそうだった。
「公爵様がお洗濯ですか?貴族はお洗濯などされませんよ?前代未聞ですよ?」
「やる。それに、お前も公爵夫人だろう」
そう言われれば、止める理由もなくなる。
自信満々に龍迫が洗濯物を触った瞬間だった。
「腕まくりをなさって~。あらあら、濡れてしまいましたね」
龍迫の腕を恵麻は掴むが、時既に遅し。
龍迫は何かと動作が早く、しっかりシーツを掴んだ手から袖に泡が染み。
一瞬のうちに龍迫の両腕が泡まみれになっていた。
そして、あろうことか・・・。
―――ビリビリ。ビリリリリリリリリリ。
「ぎゃー!12万円のシャツが!」
高級なシャツが思いっきり引っ張り、真剣に洗おうとした龍迫の腕力によって引き裂かれた。
メイドの悲鳴と共に・・・。
「あははははははははは。引き裂いた!えっ。あはははは」
恵麻はそんな様子に大笑いをする。
まさか、高価なシャツを引き裂くとは思っていなかった。
「粗悪品か?」
「違います。ご主人様の力加減が絶妙過ぎたのです」
「そうか」
恵麻はシャツを見ると、それは恵麻のシャツなのだが。
「あははははは。もう、奇想天外」
「そんなに面白いか?」
「面白いですよ。閻魔大王と呼ばれる公爵様が私の起床を待っていたと思えば、洗濯についてきて、洗濯したら高価なシャツを悪気無しで引きちぎったんですから」
「恵麻が笑ってくれたなら。・・・やった甲斐はあった」
「あはははははは」
明るくお腹を抱えて笑い出す恵麻にメイド達もつられて笑いだす。
「恵麻様はいつも、ゲラでございますね」
「本当に恵麻様は大抵の事はお笑いになるんだから」
「ご自身のお気に入りのシャツが1枚消えたのに。大笑いすると思っていましたが、本当に大笑いしてる」
数十万の妻のシャツを夫が素手で引き裂き、シャツの持ち主である妻が笑う。
そんな様子にメイド達は気軽にここは怒るところですよと突っ込むのだが・・・。
じっと、龍迫にメイド達は見られその場に土下座をする。
「ご主人様。申し訳ありません」
「お詫び申し上げます」
地獄の番人と言われるほど、雑談などの無駄を嫌い。
今の発言を不遜と判断し、クビを切られかねない屋敷の主人にメイド達は一同に頭を下げる。
有栖川公爵家のメイドの給料は他の屋敷よりも断然高かったので首にされるのは困るのだ。
「大丈夫よ。皆んさん、公爵様は怒ってはいないわ。公爵様、何を考えているの?」
普通ならば、ここでは。“何を怒っているの”と聞かれることが多いが。
恵麻はそんな事は聞かない。
「俺が悪いのだが・・・。俺よりもメイド達の方。“恵麻”。の事を色々知っているのだなと思って、嫉妬した」
龍迫は言うと、メイド達は顔を見合わせる。
“恵麻”初めて、龍迫が恵麻の事を”お前“”あいつ“ではなく名前で呼んだ。
そして・・・。
“嫉妬した”
恵麻を堂々と、確実に口説いているのだが。
しかしっ!
「この屋敷に来て1っか月。本当に皆さん、良くしているもの」
恵麻は今朝から名前を名前を呼ばれだしたことも、嫉妬と分かりやすく言語化をしたにも関わらず会話を続け。
龍迫は気が付いてもらえない事に表情は曇る。
しかし、こんなことでくじける龍迫ではない。
何度も言うが、初日に悪態をついた龍迫が100%悪い。
折角話しかけれるまでの関係に回復したのだ。
こんな所で立ち止まらない。
―――恵麻の心が欲しい。
「恵麻」
もう一度名前を呼ぼう。
「なんですか?」
しかし、恵麻は今まで名前で呼ばれていなかったことも気がついていないかのように普通に龍迫に答える。
「・・・領地の視察に一緒に行ってくれないか?」
「喜んで」
にっこり微笑む恵麻は可愛い。
もう一度名前を呼ぼう。
「恵麻」
「なんですか?」
はやり、恵麻は龍迫が名前を呼びだしたことに気がつかない。
「・・・俺達は世間的に夫婦だ」
「はい。存じ上げております」
「“公爵”ではない呼び方をして欲しい」
ここまできたら、露骨にいうしかないと龍迫は踏み出すのだが。
「分かりました。では。・・・そうですね。視察という事は、街にでるという事。領民は私たちを夫婦という認識ですので・・・。旦那様っと一般的な妻の呼び方でお呼びしても差し支えないでしょうか?」
「あぁ」
思っていたのとは、随分違う展開だが・・・。
本当は照れながら言われたかったのだが。
旦那様。
ついに、“公爵”という地位名称で呼ばれなくなる。
恵麻と名前で呼んだから、旦那様になったのか。それとも、文字通り俺が頼んだから旦那様になったのかは分からないが。
分からないが、嬉しい。
龍迫は心の中で、公爵から、旦那に呼び方が変わりガッツポーズを行った。
恵麻はいつも通り6時に起きると、さっと着替えを済ませて6時5分に部屋を出た。
「きゃっ。あ、おはようございます」
扉を明開けると、部屋の前に立っていた人物に小さな悲鳴をあげる。
そう、龍迫は午前5時半から恵麻の部屋の前に立っていた。
スラックスにカッターシャツと言うラフな格好で、欠伸をしながら。
ずぅーっと立っていた。
まさか、龍迫が立っているとは思わず悲鳴を上げると反射的に挨拶をする。
「おはよう」
大欠伸をする龍迫に恵麻は苦笑する。
「朝が早いのですね」
隣の部屋で生活をいつまでかは知らないが、しても良いと言ったのだ。
話しかけてもいいのかな?っと思いつつ声を掛ける。
「あぁ!」
ふぁ~っと大欠伸をしながら、答える龍迫は優しい表情をしており。
なんだか、凄く嬉しそうだった。
「えっと、ご用ですか?」
「用はない」
素っ気なく答える龍迫は口元が緩み、笑っているようだった。
「・・・どうなさいましたか?」
なぜ笑っているのだろうか。
なぜ機嫌がここまで良いのだろうか。
昨日。謝られたし、私は話す事が許されたということなのだろうか?
それとも、夜会は不参加となったが疑似夫婦を望んでいるのだろうか?
公爵の意図が分からない。
ドアの前に立っていたという事は、何かしら私に用があるのだろうと思い聞くが、用はないという。
「恵麻と時間を共有させてもらいたい」
私と時間を共有。
何を言っているのだろう?
私はこれから、洗濯をするのだけど?
「好きな所に行き、好きなようにしろ。俺は付いて行く」
好きな所にいって、好きなようにしろって。
この人は私を10億円で能津家から買ったのに面白いわ。
これをしろだの、あれをしろだの、こう振舞えだの言わないのね。
「ふふふっ」
思わず笑う恵麻に龍迫は、バツが悪そうに頭をポリポリ掻く。
「お洗濯をします。えっと、一緒に来ていただけますか?」
「あぁ」
公爵様が。屋敷の主が洗濯場に早朝に行く・・・。
前代未聞だわ。
恵麻は絶対に洗濯場に行ったら、メイド達は慌てふためくでしょうね。
なんだか、いたずらをしにいくようだわ。
クスクス笑いながら、恵麻は洗濯場に着くと息を吸い込んだ。
「皆さん。おはようございます」
「恵麻様・・・・。きゃぁー!!!!!ご主人様が出たー!!!」
「うわっっっ。ご主人様が恵麻様と歩いてる!!!」
まるで幽霊でも見たかのようにその場の恵麻以外の全員が声を上げる。
「あはははは」
メイド達の予想通りの反応に恵麻はお腹を抱えて笑い出した。
明るく楽し気に笑う恵麻に龍迫は少しバツが悪そうにするが、メイド達が屋敷の主の登場に叫ぶという大変失礼な態度であるが何も言わずたたずむ。
摩訶不思議な状態。
「洗濯が終わり次第、声をかけますので。仮眠をとられてください」
恵麻を見つめる龍迫の視界にはメイドが入る。
龍迫に見られていることもあり、彼女達は緊張状態の中、メイドはぎこちなく洗濯を行いスピードがいつもの半分以下。
そして、龍迫は欠伸を連発。
恵麻はメイドも龍迫も誰も徳をしないと声をかけるのだが。
「いい。お前を見とく」
龍迫は欠伸を噛み殺して却下。
それだけ眠たそうに大あくびをしながら、見とくと言われても気まずいし。
今から手洗いするもの中には、下着も含まれており。
どちらかと言えば、見られているとやや困るが。
この公爵様は下着を見たいとか、そういう横島な感情はなく。
文字通り私を見ているのだろう。
「面白いですか?」
「面白くはないが、感心はしている。手際が良いな」
メイド達のスピードはいつもの半分以下だが、恵麻のスピードは変わらない。
「慣れていますから」
「俺もやってみるか」
昨日は、ヘリコプターが突っ込んだ損害賠償請求書だの。
恵麻が建築を大学で学んでいたために大至急で作ってくれた新しい見張り塔兼護衛の詰所の案を見ていてほとんど眠っていない。
龍迫は立ったままだと眠ってしまいそうだった。
「公爵様がお洗濯ですか?貴族はお洗濯などされませんよ?前代未聞ですよ?」
「やる。それに、お前も公爵夫人だろう」
そう言われれば、止める理由もなくなる。
自信満々に龍迫が洗濯物を触った瞬間だった。
「腕まくりをなさって~。あらあら、濡れてしまいましたね」
龍迫の腕を恵麻は掴むが、時既に遅し。
龍迫は何かと動作が早く、しっかりシーツを掴んだ手から袖に泡が染み。
一瞬のうちに龍迫の両腕が泡まみれになっていた。
そして、あろうことか・・・。
―――ビリビリ。ビリリリリリリリリリ。
「ぎゃー!12万円のシャツが!」
高級なシャツが思いっきり引っ張り、真剣に洗おうとした龍迫の腕力によって引き裂かれた。
メイドの悲鳴と共に・・・。
「あははははははははは。引き裂いた!えっ。あはははは」
恵麻はそんな様子に大笑いをする。
まさか、高価なシャツを引き裂くとは思っていなかった。
「粗悪品か?」
「違います。ご主人様の力加減が絶妙過ぎたのです」
「そうか」
恵麻はシャツを見ると、それは恵麻のシャツなのだが。
「あははははは。もう、奇想天外」
「そんなに面白いか?」
「面白いですよ。閻魔大王と呼ばれる公爵様が私の起床を待っていたと思えば、洗濯についてきて、洗濯したら高価なシャツを悪気無しで引きちぎったんですから」
「恵麻が笑ってくれたなら。・・・やった甲斐はあった」
「あはははははは」
明るくお腹を抱えて笑い出す恵麻にメイド達もつられて笑いだす。
「恵麻様はいつも、ゲラでございますね」
「本当に恵麻様は大抵の事はお笑いになるんだから」
「ご自身のお気に入りのシャツが1枚消えたのに。大笑いすると思っていましたが、本当に大笑いしてる」
数十万の妻のシャツを夫が素手で引き裂き、シャツの持ち主である妻が笑う。
そんな様子にメイド達は気軽にここは怒るところですよと突っ込むのだが・・・。
じっと、龍迫にメイド達は見られその場に土下座をする。
「ご主人様。申し訳ありません」
「お詫び申し上げます」
地獄の番人と言われるほど、雑談などの無駄を嫌い。
今の発言を不遜と判断し、クビを切られかねない屋敷の主人にメイド達は一同に頭を下げる。
有栖川公爵家のメイドの給料は他の屋敷よりも断然高かったので首にされるのは困るのだ。
「大丈夫よ。皆んさん、公爵様は怒ってはいないわ。公爵様、何を考えているの?」
普通ならば、ここでは。“何を怒っているの”と聞かれることが多いが。
恵麻はそんな事は聞かない。
「俺が悪いのだが・・・。俺よりもメイド達の方。“恵麻”。の事を色々知っているのだなと思って、嫉妬した」
龍迫は言うと、メイド達は顔を見合わせる。
“恵麻”初めて、龍迫が恵麻の事を”お前“”あいつ“ではなく名前で呼んだ。
そして・・・。
“嫉妬した”
恵麻を堂々と、確実に口説いているのだが。
しかしっ!
「この屋敷に来て1っか月。本当に皆さん、良くしているもの」
恵麻は今朝から名前を名前を呼ばれだしたことも、嫉妬と分かりやすく言語化をしたにも関わらず会話を続け。
龍迫は気が付いてもらえない事に表情は曇る。
しかし、こんなことでくじける龍迫ではない。
何度も言うが、初日に悪態をついた龍迫が100%悪い。
折角話しかけれるまでの関係に回復したのだ。
こんな所で立ち止まらない。
―――恵麻の心が欲しい。
「恵麻」
もう一度名前を呼ぼう。
「なんですか?」
しかし、恵麻は今まで名前で呼ばれていなかったことも気がついていないかのように普通に龍迫に答える。
「・・・領地の視察に一緒に行ってくれないか?」
「喜んで」
にっこり微笑む恵麻は可愛い。
もう一度名前を呼ぼう。
「恵麻」
「なんですか?」
はやり、恵麻は龍迫が名前を呼びだしたことに気がつかない。
「・・・俺達は世間的に夫婦だ」
「はい。存じ上げております」
「“公爵”ではない呼び方をして欲しい」
ここまできたら、露骨にいうしかないと龍迫は踏み出すのだが。
「分かりました。では。・・・そうですね。視察という事は、街にでるという事。領民は私たちを夫婦という認識ですので・・・。旦那様っと一般的な妻の呼び方でお呼びしても差し支えないでしょうか?」
「あぁ」
思っていたのとは、随分違う展開だが・・・。
本当は照れながら言われたかったのだが。
旦那様。
ついに、“公爵”という地位名称で呼ばれなくなる。
恵麻と名前で呼んだから、旦那様になったのか。それとも、文字通り俺が頼んだから旦那様になったのかは分からないが。
分からないが、嬉しい。
龍迫は心の中で、公爵から、旦那に呼び方が変わりガッツポーズを行った。
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