絶対に笑える作者の日常・爆笑した話集

㉜夏休み前の保健室

「先生も明日から休みなん？」

それは終業式前の２年生の子供の集団。
「普通に学校に出勤しているよ」
「何するの？」

「うーんっとね。お怪我をしたお友達の書類でしょ、２学期に保健室のお勉強に来る大学生ちゃんを迎える準備でしょう。掲示板の作り置きを作って。お布団も洗いたいなぁ～」

「大変じゃん！手伝ってあげよっか」
手伝ってあげよっかっか。
こういう上から視線の提案は子供らしくて気に入っている。
「あはは。気持ちだけありがとう～」
なんて会話をしながら終業式を終えると梨乃は保健室でほっと一息ついた。

「湯川先生ー！」
気を付くと下校前の子供がやって来る。
「はいはい。なんでしょ？」
その声に椅子から立ち上がり廊下から顔を見せる４年生の立花葵を見る。
「どうしたの？葵ちゃん」
「明日から名探偵コナンくんのインフィニティ―プール行くねん！」

インフィニティプールとは。
海側の水面を水平線と平行にしプールの縁を作らずinfinity（無限）に広がってるプールのこと。

「おぉ～。シンガポールのマリーナベイホテルのプールかな？落ちないようにね」
「え！やっぱり、あれ、落ちるん？」

「行って自分の目で見ておいで」
排水があり、人間が歩けるスペースがあるのだがネタバレをしたら楽しみが減ってしまう。
「先生も明日から夏休み？」
「普通に保健室いるよ」

「なんで！？何してるん！寝てるん？」
そうなんだよね。
保健室の先生なんてお茶飲んで暇潰してなんて思われているし、実際にそういう時もある。
寝てるんっか。これまた面白い。
「明日はお布団を干して、保健室の日記を書いて送って、お怪我した子の書類を直しに行ったりいろいろすることがあるのよ～」

「先生が私のお姉ちゃんになってくれるんやったら、パパとママが連れて行ってくれるよ！先生みたいな綺麗なお姉さんおったら嬉しい」

「気持ちだけありがとう」
ええんか？
ええんか？
パパとママは何歳だ？
３０代そこそこの梨乃は下手したら、ご両親の年齢を越している時もある。

９月になれば教育実習も始まる。
楽しみは尽きないわと思いながら一笑いすると１学期を終えた。