絶対に笑える作者の日常・爆笑した話集

湯川仁美

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⑱保健室の面白訪問児童③ トイレダイブ

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4時間目の開始を知らせるチャイムが鳴った頃。

今日は平和だな~。
休み時間にちょこちょこ、運動場で遊んでてこけてやってきた擦り傷の子はいたけど、大きな怪我はない。
「湯川先生」
後2.3分ほどでチャイムが鳴り4時間目が始まりそうな時だった。
「はぁい。どうしたの~?」
保健室に6年3組の中島はやってきた。
「あの・・・。パ、パ、パンツ貸してください!」
「もちろんいいわよ」
顔を赤くして、はっきり要件を言う中島は新学期を知らせる始業式では、学年代表として作文を読んだ活発な男の子だ。
今年の夏の運動会では、応援団長になんだろうな~っと思うような中島は運動神経抜群の子。
トイレの失敗?
食中毒?下痢かしら?
高学年のお漏らしは、年に一度はある。
高校で働く保健室の先生曰く、1年に1度はあるらしい。
これぞ、保健室の知られざるレンタルパンツの実態。
「男の先生、呼ぼうか?お尻、洗う?」
「いや。違う・・・」
「違う?」
お尻を洗わなくていいといういうことは、お漏らしではないのかしらね?
よもやよもや、もしやもしや、パンツを履き忘れて登校してきたっとかいうようなドジっ子、うっかりさんではないでしょうし。
そんなことを思いながら、保健室のお洋服を入れてある棚からパンツを取り出す。
少し前までどこの保健室もパンツは保健室においてあるパンツを貸して、お家で洗って持ってきてもらっていたが。
最近は衛生面を考慮して、新品交換制。

そう・・・。
貸したパンツが洗濯されず、戻ってきたり。
なぜか、汚れていたり。
一番の驚愕は、ボロボロの使用感たっぷりの他のパンツが戻ってきたこと。

そういう大人の事情ならぬ。
保健室の事情を考慮して新品交換制。
新しいのあげるから、新しいパンツ返してねっという制度が導入。

「トイレに落ちた」
「ん?」
「いや、急いでて。思い切りトイレに駆け込んだら、便座が全部上がってて。座ったら、尻から便器に落ちた」
「あらま・・・。災難だったね」
「そんで、パンツぬれた」
「かわいそうに。はい。これ履いておいで。濡れたパンツはこのビニール袋に入れておいてね」
信じられないことが起こるのが小学校。
ふふふ。
どんくさっ。
くすくす心の中で笑うのをこらえながら、誰もいないベットの方に中島を行かせてカーテンを閉める。

「湯川先生。さっき、クラスの子から。衝撃的な事を聞いたんですけど」
やって来たのは6年3組の中島の担任の浅井先生。
「浅井先生、いらっしゃい。心傷ついてるから”よしよし”してあげて下さい。笑うなんて酷いわ」
浅井先生、私も心の中では笑っていますよ。でもね。だけどね。本人は傷ついているんです。

今日も飽きない一日だわ。

そんなことを思いつつ、梨乃は着替え終えた中島を見る。
「お尻、青くなってる?痛くない?」
「・・。痛い」
「見なくて平気かな?浅井先生は男の先生だから見てもらう?」
「いらない」
「そう。痛くなって我慢できなくなったら教えてね。お家の人にはお電話しとくね」
「・・・親に笑われそう」
「大丈夫。湯川先生が、上手に伝えておくわ。じゃあ、教室戻って授業受けておいで」
「はい」
少し照れたように彼を見送る。
「えっと、保護者に電話は・・・」
「かけておきますね」
担任の授業の始まるチャイムの音と同時に、担任は授業をしなければっと電話を掛けてほしそうな声だし。
仁美はお任せくださいっとにっこり笑うと、職員室に行く。
職員室のカギのかかる棚から“学校と家庭の連絡票“の”6年3組“を取り出し、“あいうえお“順に子供の保護者の連絡が書かれてなかから中島を探した。
「あ、こんにちは。私、七色小学校、保健室の田代と申します。中島君のお父さまのお電話でお間違いないでしょうか?」
「はい」
電話口の父親は低い声で返事をする。
「先ほど、中島君が大急ぎでトイレに行き。様式便座の便座が上がっていて、お尻からトイレにインしてしまいまして」

「はぁぁぁぁぁ!!!!」

「驚きますよね」
凄く良い言い反応。
そりゃ、仕事中に小学校から電話がかかってきて。
子供がトイレを急いで、便器の中にお尻から突っ込むなんて思わないでしょう。

「お尻が少し痛いらしく、思春期のお子さんなので。お尻は痛いけれども、教師の確認は拒み。今のところ、酷く痛がる様子もないですし。普段通りに歩いて、椅子にも座れるようなのでご家庭でもお尻の確認をお願いします」
お母さんよりも、お尻の確認は性教育を配慮すればお父さんだろう。
「わ、わかりました。俺の息子、ドジだったのか?」

「成績優秀でムードメーカーだけにお父様も驚かれますよね。パンツが濡れてしまって、新しい160センチのパンツを貸し出しましたので、新品の160センチのパンツを・・・そうですね。2週間以内にお持ちいただけますと助かります」
「分かりました。ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ。では、失礼いたします」
職員室の電話を切ると、電話を聞いていた教頭は肩を震わせ笑っている。
「失礼ですよ」
「・・・ごめん、ごめん。いや。面白い。奇想天外すぎて、面白い」
「小学校はこれだから、飽きませんね」
田代はそういうと、保健室に再び戻った。
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