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51.欲情①

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 部屋は俺たちの輻射熱でじっくりと室温を上げている。
 ベッドで重なる二つの影が重なり、やがて一つの塊となり動く。

「ちょ、まっ……」
「待てない」

 ゼロは俺の身体に覆い被さり、至る所に唇を落とす。
 あれから吸い寄せられるようにキスをし、そのままベッドへともつれこんだ。もちろん、雷太の教育のために、ゲージを移動させ、タオルで目隠しをした。 
 
 大きなゼロの身体はあの晩みたいに熱かった。
 じんわりと汗を掻きながら、俺の胸や腰元を弄る手も燃えそうだ。舌と舌をねっとりと絡ませ、歯列の撫で、上顎をくすぐるゼロの熱くて大きな舌に翻弄される。唾液がだらしなく下顎を伝垂れる。それすらもゼロが下で掬い上げてしまう。
 圧倒的な経験値の差だ。
 面白くなくて、つい、ゼロの尖った鼻先を甘噛みする。

「お前、キス慣れすぎちゃう?」
「嫉妬か……」

 あむっと口唇を噛まれ、先程の性急さが嘘のように唇を合わせるように沈めた。緩急をつけられ、ただ唇を重ねているだけなのに、腰に重い感覚が下り、髪の毛が逆立つ感覚がした。

「ンむ……」

 思わず甘えたような嬌声を発してしまった。
 恥ずかしくて、目を開けられない。

「可愛い」
「……可愛く、ない」
「すごく可愛い」
「男、やで?」

 ゼロは耳朶に唇を寄せ、凹凸を確かめるように柔らかく食んだ。ゼロの唇が、手が触れた部分が伝染するように熱を帯びていく。
 胸の頂をかすめ、あばら骨に沿って撫でて、快楽に悶えて反る貧相な俺の腰を細さを愛でるように上下させる。

「い、ん……っン……あ」

 敏感になった身体を震わせ、上擦った声をあげる俺を、ゼロがじっと見ていた。
 狙いを定めたような獣の瞳。瞳孔が開き、その一挙一動、開きっぱなしの口から漏れる吐息や悦楽に染まった声も、何もかも読まれている気がして恥ずかしい。

「男でも女でもどっちでも良い。京は京だ」

 ゼロはどうしてこんなにも俺が欲しい言葉をくれるのだろう。
 本当に。嬉しい。

 腰元を弄っていたゼロの指先が、氷のリンクを滑るように滑り、俺の下半身へ向かった。絶え間ない快感を与えられ、俺のムスコは痛いほど張り詰めていた。布を持ち上げ、触れて欲しいと訴えている。

「おねだりが、上手い」
「あほぅ、意地悪や……ン、あ」

 揶揄うゼロを睨みつけるが、ゼロの手がズボンの中へ入っていき、直接陰茎を撫でられたことで意識が飛んだ。
 ゼロの大きな手が俺を包み、裏筋をつつつ、となぞる。柔らかい愛撫がもどかしくて、苦しくて、腰が浮く。咄嗟にゼロの腕を掴んで喘ぐ。
 欲しい。もっと、欲しい。

「あ、ふぅ……ンあ、ぜ、ゼロぉ」
「気持ち良いか」
「あ、ああ、う、……っん、先っぽ、が……ひっ」

 快感に酔う。だらしがないとか、恥じらいも何もかもどうだって良かった。ゼロの指先が亀頭を撫で回し、陰茎を扱く。ぐちゃぐちゃと音を出し、聴覚からも快感を高められていく。

 気が付けば、俺はベッドの上で、シャツを胸元まで捲り上げて、下半身を丸出しにして喘いでいた。下着とズボンは足首に引っかかり、情けない有様だった。ゼロに触って欲しくて、脚を開いていた。
 喘ぎ声を飲み込むようにゼロの荒々しい口付けが続いていた。口内を凌辱し、離れていくたびに愛おしくて、雛のように舌を出しすがってしまう。ぽっかりと空いてしまったように、寂しい。
 ゼロの首の後ろに腕を回し、引き寄せようとする俺を見て、ゼロが困ったように笑った。

「困った……なんで、そんなに──、んっ」
「黙ってて、もう、ええから……」

 ゼロの唇を奪い、お返しとばかりにゼロの鍛えられた身体に触れる。服の上だけじゃ物足りなくて、もっと溶けるほどの熱を欲して裾から手を突っ込んだ。余分なものがない、硬い腹筋と胸板に心臓が跳ねる。
 欲のままに服を捲り上げゼロの肌にしゃぶりついた。石鹸と汗の匂いが混じり合った、ゼロの体臭が鼻から脳に突き上げる。媚薬のような芳しい香りに眩暈がする。
 ほしい。もっと、もっと──。
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