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44.ぴーちくぱーちく、ぴよぴよ

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「んーっと、ゼロのアレはデカイけどさぁ、泣かされてへんから。朝にぐいぐい押されて起こされるけど。問題ないし」
「はぁ⁉︎」

 京が無意識に小爆弾を投下する。マリナは刮目したり、瞠目したり忙しい。

「押される? それで挟んだり、包んだり、さすったり、揉んだり、してないと言うのですか⁉︎  あなた、ゼロさまのアレのサイズを知ってる風じゃないですか! 嘘つき!」
「いや。触ってへんって。……あ、疲れマラ確認はノーカンね。まぁ、諸事情っていうか、一緒に出す、仲間やからサイズ知ってるってか……何言ってんねん俺。まぁでも、マックスサイズは知らん! だから嘘ちゃう!」

 マリナの尋問に赤面しながらも真面目に答える京。律儀な性格が裏目に出る。
 ゼロは虚ろな目で見守っていた。壱也とスケは笑いそうになるのを必死で抑えるあまり、憐憫の表情を浮かべながらも小刻みに震えている。

「来る日も来る日もゼロさまの疲れマラを布越しに撫で回していたのですかッ! この売女!」
「女ちゃうもん! 男やし! 撫で回してへんし、押し当てられただけやし! 話聞けやこの女男ッ!」
「くっ……このぉ、どこがただのソフレです! 照国京、よくも! 淫売!」
「悪かったな! ゼロはアレも筋肉も鍛えられてバッキバキやぞ! 勃ち上がる角度もすごいんやからな! 見られへんで残念やな!」

 あまりの言われようにキレた京。腕を組みふんぞり返っている。
 自分のムスコ自慢ではない、友の、ソフレのムスコ自慢を大声でしているのだが……京は苛立っていてこの状況を理解できない。

「ゼロさまとこんなにも深い仲だとは……アレを熟知してるだなんて……」
「ってか、触れてない事ないから分からんかー。ごめんごめん。こんくらい、いや、こんぐらいやったかな? 角度はこう、スキージャンプのジャンプ台ぐらい? こんぐらいかなーそうやったかなー今度測っちゃおうかなー」
「てーるーくーにーけいー‼︎  貴様ぁぁ‼︎」

 おかんむりの京と嫉妬に狂うマリナの口合戦は止まらない。
 
 目の前で繰り広げられる自分のムスコ話にどうすればいいか分からないゼロ。
 いや、すまない、アレは特に鍛えていないんだが、角度って、腕ほど太くは、……とゼロも二人の言い合いに物言うが、見事に二人の声にかき消されていた。

「京さんの握り拳ぐらいあるって、ゼロさんやばいっすねー」
「裂けちゃうね」

 壱也とスケの呟きに、自然とゼロの身体の一部へと皆の視線が集まった。
 ゼロが気まずげに手で前部分を隠したが、より、皆の想像を駆り立てるものとなった。
 数秒後、スケは視線を遮るようにそっと壱也の目を覆った。
 
 ややあって、ゼロの下半身から視線を逸らしたマリナは鼻で笑い飛ばした。

「恋人にもなれないからって、言いくるめてソフレ、それを足掛かりにゼロさまを護衛に……卑怯な手を……」
「それに関しては、その、申し訳ないんやけど。でも、今回のことがなくても、俺はゼロとずっと仲良くしたかったし、ずっと雷太と三人で寝られたら良いって思ってる!」
「さ、三人で……なんと、ゼロさまは性欲まで覇者級……」

 マリナはポッと顔を赤らめ、ゼロの姿を流し見る。
 ゼロは機嫌が悪そうに大きく舌打ちした。さっきから針のむしろだ。もちろん身体の一部分のみに。
 
「何一人でぶつぶつ言ってんねん。とにかく、俺はゼロが好きやし、ゼロも俺と雷太を大事にしてくれてる。コイツは捨てられた雷太に愛情を注いでくれてるんや。損得とかやないし、家族やから。外野は黙っといてくれるか!」

 京の言葉を受け、ゼロは顔を両手で隠して俯いている。
 カレーライスをほお張っていた壱也とスケは互いに顔を見合わせた。

「これはゼロさんも泣く。すんげー告白……所沢さんたち、聞き逃しちゃったなぁ」
「プロポーズみたい」

 感動する壱也とスケはさておき、京とマリナは依然睨み合っていたが、マリナが耐えきれなくなり号泣し始めた。

「ひっく、僕だって……僕だって、ゼロさまのことが……っく」

 京は溜息を漏らすと、ゼロにマリナの拘束を取るようにお願いした。身の危険があるからと退けようとしたが、京の真剣な表情に折れて解放した。

「座ってろ、動いたら撃つ」
 
 泣きじゃくるマリナを無理やりダイニングテーブルの椅子に座らせると、ゼロはマリナの後頭部に銃口を当てた。
 ゼロの手には銃、壱也の手にはナイフ、そしてスケの手には切れ味鋭そうな日本刀が握られていた。早い。っていうか、日本刀どこから出したんやろう……うん、もう何も言うまい。みんな、普段から隠し持ってるんやね。

 京は熱々の白米を洋皿によそい、温め直したカレーをたっぷりとかけてマリナの目の前に置いた。

「食べたらええ。腹が減っているから余計にイラつくねん」
「…………」
「アンタが何者かは知らんけど、ゼロの良さを知ってくれてるんはよーく分かった。ゼロにとって俺は疫病神かもしれんけど、離れたくないねん。ゴメンな」

 マリナは乱暴にスプーンを握ると大盛りを口に放り込んだ。もぐもぐと咀嚼して片眉を上げた。

「…………」
「カレー辛いか? ○の王子さまじゃなくてゴメンな」

 京がぷぷっと悪戯っぽく笑うと、間髪入れずに壱也が瞠目した。

「ちょ、それ、京さん! 俺へのディスりじゃないっすかー! いや、俺は別に中辛、辛口でもいいんすよ? ただ、子供の頃の思い出の味って、大人になっても忘れらんないって言うか……」
「イチ、言い訳っぽいよ」

 壱也が顔を真っ赤にしている。
 壱也は頼まれてもないのに、○の王子さまは旨味がすごくて……とか、具が細かいのが好きなタイプで……とか、甘い味の中に深い辛さがあって、大人になってから食べて、その偉大さに気づく……と、熱心に京たちに説いた。
 たちまち部屋が笑い声に包まれた。
 マリナに笑顔はなかったが、カレーライスは残さず最後まで平らげた。
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