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12.マーキング
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今年は猛暑が続き、連日熱中症警戒アラートが発表されている。
幼い頃、麦わら帽子に虫かご、そして虫あみを手に炎天下を走り回っていたのが信じられない。まぁ、あの頃よりもかなり平均気温が上昇しているが。
エアコンの涼しい風の下、京と雷太はカーペットの上で川の字に寝転がっていた。雷太は子犬ながら既にヘソ天でお昼寝中だ。昼食をしっかりと食べたので恵比寿さまのように立派な腹部が可愛らしい。
「お前、ここが自然界やったらもうアウトやぞ。お腹を出して寝たらもう食われるわ」
ぐうぐう寝息を立てる雷太の腹を撫でるが、熟睡中で無反応だ。雷太はすっかり京に慣れたらしい。警戒心は皆無。飼い主に捨てられても強く生きようとする雷太の姿に一人感動して悶える京だった。雷太のおかげで京はすっかりパグの虜になっていた。
「ん? 何やこれ?」
寝ている雷太のぽっこりお腹に赤い発疹を確認する。更に顔に刻まれた皺や耳を調べる。皺や耳には赤みも発疹も見当たらない。
インターネットで調べてみたが、パグという犬種は夏に弱いらしい。俗にいう、ぺちゃ犬は皮脂も多い為、痒みがなどの皮膚症状を患いやすい犬種だ。更に夏はダニも多い。
雷太の臍を中心に点在する赤い点々はダニかも知れないと、京は注意深く観察した。
「ダニ、かな……夏場やし、雷太もおるし」
京は雷太と一緒いることが多い。当然同じように噛まれている可能性がある。京は確認のために脱衣所へと向かった。
風呂場の鏡で腹や背中、太腿の裏などを確認する。
すると、全く痒みはなかったが、数点赤みがあった。寝ながら掻いたのか、少し鬱血しているようだ。肌が白いこともあって、少し触れるだけで微細な内出血斑が出やすい肌。キスマークみたいで恥ずかしい。
京は慌てて家中の布製品を洗濯機に放り込み、掃除を始めた。暑い夏はただでさえダニの繁殖期だ。更に、数日前まではエアコンが故障し、蒸し風呂で生活をしてたのだから当然と言えば当然だった。
ダニ対策作戦の合間に仕事をこなし、あっという間に日が暮れてしまった。
寝ていた雷太は目を覚ますと、うにゃぁという声と共に背伸びをしていた。
「おーい、起きたか。気持ち良かっ──えぇ⁉︎ あっかーんッ! 待て待て待てッ!」
慌てて駆け寄り抱き上げたが、間に合わなかった。雷太の小さなチンから黄金水が放流された。下手に慌てて抱き上げてしまったので、フローリングだけではなく、京の服にたぷり掛かってしまった。味噌汁をこぼしてしまった時以来のぬるい感覚。何とも言えない不快感だ。
肩を落とした京を慰めるように雷太が尾を振る。
「飯の前に、風呂行こ……お前も綺麗に洗ったるわな」
脱衣所に行き、服を脱ぎ雷太と一緒に洗い場に座った。男同士、裸の付き合いだ。雷太の初風呂だ。雷太は京がすっぽんぽんなのが気になるらしく、ぐるぐると周回し、興奮状態だ。
「呑気なやつやなー。はいはい、お座りっ!」
シャワーの水温を確認しつつ、雷太を洗い始めた。洗い終わると水を恐れることなく京の股の間に座り込む。衛生的にまずい気がして雷太を押しやるが、興味があるのか、雷太が京のムスコや尻の匂いを嗅ごうとする。
ふんがふんが、ふんがふんが。
ちゃんと洗ったから綺麗だぞ、と言い聞かせても雷太の勢いは止まらない。完全にトリュフを探す豚の鼻息だ。雷太よりもブータと名付けた方が良かったか、と思うほどだ。
ちょうど洗髪中で手が離せないのをいいことに雷太が京の下半身を執拗に狙う。
「ン、やめっ──そ、そこはあかんって! チンチンなんか……あぁ、もうぅ」
ふんがふんが。
「けつ、綺麗にしたから大丈夫、お気持ちだけで──ちょ、あほ、んあっ、近づくなって! あぁ、水滴舐めんなって、雷太!」
クンクン、ふんがふんが。
ガードが緩くなった前部分へすかさず雷太が突進する。
萎んだ陰茎に鼻を押し付け、更に下生えや鼠径部をふんがふんが、と鼻息を荒くしながら検分される。犬はお尻の匂いを嗅ぎ合い情報を交換するらしい。だが、衛生上良くない。ムスコの危機だ。
押しのけようとするが、さすがパグ、筋肉質な犬であり、オフェンスが強い。
「い、一緒のん、ついてるだけやろ、チンチン……ちょ、ん、臍は弱いねん! もうっ、このエロ親父っ!」
バンッ‼︎
突然風呂の扉が開かれた。
目の周りの泡を拭って顔を上げると、鬼のような顔をしたゼロが立っていた。
幻覚かも知れないが、全身から煙が立ち昇っているように見える。拳を握り締めているせいか、シャツの袖から見える逞しい腕もはち切れそうだ。
言葉はないが、ゼロの視線が痛い。
「えーっと、おかえり」
「何をしている」
「何? え、何をって……雷太におしっこ掛けられたから風呂に入ってんねんけど」
ゼロはじろっと雷太へ視線を移すが、愛犬を見つめる視線ではない。あれは、視線で人一人殺めそうだ。雷太は殺気を感じたのか、胡座をかいた京の上に可愛くお座りをした。お利口さんだ。
それを見て、ゼロは小さく舌打ちすると雷太を奪うように抱き上げた。
幼い頃、麦わら帽子に虫かご、そして虫あみを手に炎天下を走り回っていたのが信じられない。まぁ、あの頃よりもかなり平均気温が上昇しているが。
エアコンの涼しい風の下、京と雷太はカーペットの上で川の字に寝転がっていた。雷太は子犬ながら既にヘソ天でお昼寝中だ。昼食をしっかりと食べたので恵比寿さまのように立派な腹部が可愛らしい。
「お前、ここが自然界やったらもうアウトやぞ。お腹を出して寝たらもう食われるわ」
ぐうぐう寝息を立てる雷太の腹を撫でるが、熟睡中で無反応だ。雷太はすっかり京に慣れたらしい。警戒心は皆無。飼い主に捨てられても強く生きようとする雷太の姿に一人感動して悶える京だった。雷太のおかげで京はすっかりパグの虜になっていた。
「ん? 何やこれ?」
寝ている雷太のぽっこりお腹に赤い発疹を確認する。更に顔に刻まれた皺や耳を調べる。皺や耳には赤みも発疹も見当たらない。
インターネットで調べてみたが、パグという犬種は夏に弱いらしい。俗にいう、ぺちゃ犬は皮脂も多い為、痒みがなどの皮膚症状を患いやすい犬種だ。更に夏はダニも多い。
雷太の臍を中心に点在する赤い点々はダニかも知れないと、京は注意深く観察した。
「ダニ、かな……夏場やし、雷太もおるし」
京は雷太と一緒いることが多い。当然同じように噛まれている可能性がある。京は確認のために脱衣所へと向かった。
風呂場の鏡で腹や背中、太腿の裏などを確認する。
すると、全く痒みはなかったが、数点赤みがあった。寝ながら掻いたのか、少し鬱血しているようだ。肌が白いこともあって、少し触れるだけで微細な内出血斑が出やすい肌。キスマークみたいで恥ずかしい。
京は慌てて家中の布製品を洗濯機に放り込み、掃除を始めた。暑い夏はただでさえダニの繁殖期だ。更に、数日前まではエアコンが故障し、蒸し風呂で生活をしてたのだから当然と言えば当然だった。
ダニ対策作戦の合間に仕事をこなし、あっという間に日が暮れてしまった。
寝ていた雷太は目を覚ますと、うにゃぁという声と共に背伸びをしていた。
「おーい、起きたか。気持ち良かっ──えぇ⁉︎ あっかーんッ! 待て待て待てッ!」
慌てて駆け寄り抱き上げたが、間に合わなかった。雷太の小さなチンから黄金水が放流された。下手に慌てて抱き上げてしまったので、フローリングだけではなく、京の服にたぷり掛かってしまった。味噌汁をこぼしてしまった時以来のぬるい感覚。何とも言えない不快感だ。
肩を落とした京を慰めるように雷太が尾を振る。
「飯の前に、風呂行こ……お前も綺麗に洗ったるわな」
脱衣所に行き、服を脱ぎ雷太と一緒に洗い場に座った。男同士、裸の付き合いだ。雷太の初風呂だ。雷太は京がすっぽんぽんなのが気になるらしく、ぐるぐると周回し、興奮状態だ。
「呑気なやつやなー。はいはい、お座りっ!」
シャワーの水温を確認しつつ、雷太を洗い始めた。洗い終わると水を恐れることなく京の股の間に座り込む。衛生的にまずい気がして雷太を押しやるが、興味があるのか、雷太が京のムスコや尻の匂いを嗅ごうとする。
ふんがふんが、ふんがふんが。
ちゃんと洗ったから綺麗だぞ、と言い聞かせても雷太の勢いは止まらない。完全にトリュフを探す豚の鼻息だ。雷太よりもブータと名付けた方が良かったか、と思うほどだ。
ちょうど洗髪中で手が離せないのをいいことに雷太が京の下半身を執拗に狙う。
「ン、やめっ──そ、そこはあかんって! チンチンなんか……あぁ、もうぅ」
ふんがふんが。
「けつ、綺麗にしたから大丈夫、お気持ちだけで──ちょ、あほ、んあっ、近づくなって! あぁ、水滴舐めんなって、雷太!」
クンクン、ふんがふんが。
ガードが緩くなった前部分へすかさず雷太が突進する。
萎んだ陰茎に鼻を押し付け、更に下生えや鼠径部をふんがふんが、と鼻息を荒くしながら検分される。犬はお尻の匂いを嗅ぎ合い情報を交換するらしい。だが、衛生上良くない。ムスコの危機だ。
押しのけようとするが、さすがパグ、筋肉質な犬であり、オフェンスが強い。
「い、一緒のん、ついてるだけやろ、チンチン……ちょ、ん、臍は弱いねん! もうっ、このエロ親父っ!」
バンッ‼︎
突然風呂の扉が開かれた。
目の周りの泡を拭って顔を上げると、鬼のような顔をしたゼロが立っていた。
幻覚かも知れないが、全身から煙が立ち昇っているように見える。拳を握り締めているせいか、シャツの袖から見える逞しい腕もはち切れそうだ。
言葉はないが、ゼロの視線が痛い。
「えーっと、おかえり」
「何をしている」
「何? え、何をって……雷太におしっこ掛けられたから風呂に入ってんねんけど」
ゼロはじろっと雷太へ視線を移すが、愛犬を見つめる視線ではない。あれは、視線で人一人殺めそうだ。雷太は殺気を感じたのか、胡座をかいた京の上に可愛くお座りをした。お利口さんだ。
それを見て、ゼロは小さく舌打ちすると雷太を奪うように抱き上げた。
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