ただ女の子が自慰をするだけ

まー

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「自分はどうしてこんなにもどうしようもなく矮小で無力な存在なのだろうか」
 私は今、身体と精神を落ち着けるため、天井を見上げながらそんなことを考えている。まあ、落ち着けたところで三十分ほど後には対極の位置に自分がいそうだが。
 そう思いつつ、自嘲しながら髪を洗う。本当に自重すべきはこの後行う行為の方だが、そんなことは今はどうでも良くなりつつあった。
 やはり髪を洗うという行為はとてもすっきりするし、汚れと共に無駄な思考や罪悪感を洗い流してくれる素晴らしいものだ。考えた方に私からの誉め言葉と惜しみない拍手を与えたい。もっとも、私ごとき一般庶民の称賛の声など彼らは聞き飽きているだろうし、迷惑なだけだと思うが。
「…………うん?」
 湯船に浸かり、髪を洗い終わって冷静になった私の頭脳は私が犯した間違いに気付いた。いや、間違いといえば今日の私は間違いだらけなのだが、この間違いはそれら並み、あるいはそれ以上の間違いだ。
「ローション買ってくるの忘れた」
 読者の皆様は「何だそんなことか」とでも思っているのだろうが、私にとっては地球滅亡や、親にエロ本を見付けられたこと以上に由々しきことなのだ。私はこれまで、少なくとも自慰をするときは己の指と局部に直接接触させて使うもの、具体的には乳首やクリ用のローターや電動マッサージ機などしか使ったことがない、いわば玩具挿入処女なのだ。ただでさえ、経験者であっても自分の愛液や涎を使うのに初心者が何も無しで挿入してしまったら、最悪死んでしまうかもしれない。そして翌日の新聞やニュースなんかで『アダルトグッズを挿入した状態で少女死亡。快楽殺人鬼の仕業か』なんて記事で私の醜態を散々晒しまくることだろう。それはそれで興奮しなくもないが、周囲に迷惑が掛かってしまうのでやめておこう。『周囲に迷惑を掛けず、良い自慰を』が私のモットーだ。
「しかし、本当に困ったものだ」
 ローションが無いとなると小麦粉か片栗粉と一緒に使うしかないのだが…。できるころには興冷めして湯冷めしていることだろう。
 困った私は再び湯船に浸かり、星空が描かれている天井を見上げる。とある物語の影響で自分で設計して造ってみたものだが、我ながら良い完成度だと思う。しかも防カビ塗料を使ってあるのでお風呂場にはピッタリだ。いつもはそこに存在しているだけのただの色だが、こういう困った時に私に手、ならぬ光をくれるのだ。……本当は湯船も物語通り檜で作りたかったが、家を買って、天井を改築しただけでお金が足りなくなってしまったため作れなかったことは言わないでおこう。
 ふと横に目をやると、今使ったシャンプーリンス、そしてあと数十秒したら使うボディーソープが置いてある種が……ん?ボディーソープ?
「そうだ。ボディーソープを使おう」
 京都行くみたいに言うな。
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