この異世界住人が卑猥すぎて魔王討伐が進まない……

第86話渦巻く陰謀と新たな敵⑦

　俺は再びスキルを使い、今度はディアナの両腕両足を拘束したまま上空へ移動した。
　風の魔術で疾風を起こして攻撃する。
「レアスキル・硬気」
　ディアナが気だるそうにつぶやくと、疾風が一瞬でかき消された。
　
　やっぱ、この程度の魔術じゃびくともしないか……

「ホーリィライト・シュヴェルトッ！」
　イメージした大剣に光属性の魔術を込めて叩き込む。
「ちっ」
　ディアナが舌打ちしながら右腕の拘束をふりほどき、片手で俺の攻撃を受け止めた。

　これも止めるのかよ！
　しかも片手……。

「痛ってぇな！　コラッ」
　ディアナが俺の攻撃を跳ね返し、大きく息を吸い込んだ。
　離れた俺に向かって、右手拳の正拳突きを繰り出す。
　突然腹部に大型ハンマーを打ち込まれたような激痛が走った。
　
　中距離、遠距離攻撃を警戒はしてたけど、片手一本でこの攻撃力はやばいな……。

　大ダメージを受けたせいで意識が途切れ、スキルの拘束が解除された。ディアナが地上に落下していく。

「レアスキル・柔気っ」
　ディアナの声と同時に落下速度は低下し、彼女の体はふわりと軽くなりゆっくり地面に着地した。

　この気のスキルシリーズ、すごく嫌な予感がする……。

「レアスキル・覇気！」
　上空の俺めがけて衝撃波が襲い掛かる。
　アイゼンの時よりもさらに強い衝撃が走り、反射的に展開したシールドが粉々に砕け散った。

「んぐっ。アクア・プファイル！」
　体勢を崩しながら、魔力を最小限に抑えてディアナに数百本の水の矢を打ち込んだ。
「うざっ。服とか髪とか濡れてんですけどー。マジ迷惑。意味不明な攻撃すんなっつーの」
　ディアナの硬気によって魔術が相殺され、形状を保てなくなった矢が彼女を水浸しにする。

　かかった！
　水属性から氷属性へ変換。
　大剣をイメージ。
　
「からのぉ、ゲフリーレン・シュヴェルトッ！」
「くっ……」

　水浸しのディアナの体が凍り付いていく。
　彼女のスキルで水の矢が破壊されるたび、氷の大きさはどんどん肥大していった。
　やがてディアナは、巨大な氷の剣の中へ完全に閉じ込められた。

「ふぅ……捕縛成功。念のためにシールドで囲んどこ」
　氷の大剣を包み込む形でシールドを展開させた。

「ディアナッ！」
　後ろから女性の声が聞こえた。
　振り返ると、俺は『ゴールドコイン』に包囲されていた。
「すまねぇな、ユージ。あんまし時間稼いでやれなくてよ」
「ギリギリ間に合ったみたいですね。さすがはユージさんです」
「レイドさん、レオンさん、ありがとうございました。みんなもありがとう」
　追い詰められた『ドラゴンブレス』のみんなが、俺を守るように陣形を組んでいた。
　レイドやレオン、ギルメン全員がボロボロに負傷している。
　それでも戦う気力は全く衰えていなかった。
　俺は頼もしい仲間に、心の底から感謝した。

「おたくのギルマスさん、このままだと死んじゃいますけど、どうします？」
「もったいぶらずに条件言ったら？」

　さっきディアナの名前を叫んだ女性が前に出てきた。
　思わず彼女の巨乳に目が釘付けとなる。
　Ｙ字型の見事な谷間が美しい。
　Ｈカップのレベッカと同じくらいの大きさだ。
　
　ディアナと同じタイプの白ギャル美人お姉さんだが、この子は話が通じそうだ。