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第77話キューベ村復興作戦⑥
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「大変お恥ずかしい話ですが、国への上納金を納めるのが精いっぱいでして、勇者様への奉納金を用意できませんでした」
「俺、お金なんていりませんよ。今日は伯爵に直接お礼が言いたくて来ただけなんです。頭を上げてください」
「な、なんと。勇者様は本当に噂通りのお人柄なのですね。わたくし、感服いたしました」
ゲーテ伯爵が目に涙を浮かべる。
「その、さしつかえなければ話聞かせてくれませんか? さっき村も見てきたんですけど……」
「実は、あそこはエイべ村というのですが三年前から凶作が続いておりまして……」
ゲーテ伯爵は重々しい声で村のことから語り始めた。
エイべ村は麦農家の集落で、三年前から続く凶作により村人たちの暮らしは困窮を極めていった。
領土内には、他にも同じ状況におかれた村があり、ゲーテ伯爵は村人たちの税を免除するだけでなく食糧支援まで行っていた。
ところが、三年の間に国への上納金額が大幅に上がり、伯爵は村人の生活を守るために、屋敷内の物をすべて売却したうえ使用人の解雇も余儀なくされた。
ゲーテ伯爵の息子は苦しむ村人や父のため、上納金の免除を訴えるため国王に謁見したが、王都からの帰りに事故で亡くなってしまった。息子の妻も三年前から体調を崩しており、夫の後を追うように亡くなった。息子夫婦の一人娘も、母親と同じ症状でほぼ寝たきりの生活が続いている。
「残されたフィーニが不憫でなりません。国王陛下が派遣してくださった魔術師や薬剤師にも診察していただいたのですが、病状は悪化する一方でして……」
ゲーテ伯爵が涙をボロボロ流した。
伯爵の話では、王室付きの魔術師のヒーリングも効かず、王室専属薬剤師の薬も効果が見られなかったという。
「それなら俺の知り合いにうってつけの人がいますよ。ヒーリングも調薬もこなす凄腕の元冒険者です。彼女なら何か分かるかも。すぐ連れてきますから待っていてください」
「ゆ、勇者様。そこは窓――」
俺は大きな窓を開けて、空へ飛び立った。
「俺、お金なんていりませんよ。今日は伯爵に直接お礼が言いたくて来ただけなんです。頭を上げてください」
「な、なんと。勇者様は本当に噂通りのお人柄なのですね。わたくし、感服いたしました」
ゲーテ伯爵が目に涙を浮かべる。
「その、さしつかえなければ話聞かせてくれませんか? さっき村も見てきたんですけど……」
「実は、あそこはエイべ村というのですが三年前から凶作が続いておりまして……」
ゲーテ伯爵は重々しい声で村のことから語り始めた。
エイべ村は麦農家の集落で、三年前から続く凶作により村人たちの暮らしは困窮を極めていった。
領土内には、他にも同じ状況におかれた村があり、ゲーテ伯爵は村人たちの税を免除するだけでなく食糧支援まで行っていた。
ところが、三年の間に国への上納金額が大幅に上がり、伯爵は村人の生活を守るために、屋敷内の物をすべて売却したうえ使用人の解雇も余儀なくされた。
ゲーテ伯爵の息子は苦しむ村人や父のため、上納金の免除を訴えるため国王に謁見したが、王都からの帰りに事故で亡くなってしまった。息子の妻も三年前から体調を崩しており、夫の後を追うように亡くなった。息子夫婦の一人娘も、母親と同じ症状でほぼ寝たきりの生活が続いている。
「残されたフィーニが不憫でなりません。国王陛下が派遣してくださった魔術師や薬剤師にも診察していただいたのですが、病状は悪化する一方でして……」
ゲーテ伯爵が涙をボロボロ流した。
伯爵の話では、王室付きの魔術師のヒーリングも効かず、王室専属薬剤師の薬も効果が見られなかったという。
「それなら俺の知り合いにうってつけの人がいますよ。ヒーリングも調薬もこなす凄腕の元冒険者です。彼女なら何か分かるかも。すぐ連れてきますから待っていてください」
「ゆ、勇者様。そこは窓――」
俺は大きな窓を開けて、空へ飛び立った。
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