この異世界住人が卑猥すぎて魔王討伐が進まない……

第58話この異世界で4人は戦う！

　『スノードロップ』が劣勢に転じた途端、これまで余裕の表情を見せていたアウリーの顔が苛立ちに変わった。
「使えん奴らめ」
　舌打ちしてステッキを構える。
「ウオォォォォッ。ファイア・ソォォォォド！」
「バカの一つ覚えがっ」
　レイドの一撃をアウリーがステッキではじき返す。
「うおっ」
　吹き飛ばされたレイドが地面を回転し受け身を取りながら起き上がった。
「レイド殿、前に出過ぎだ」
「す、すまねぇ……」
　アイゼンに注意されたレイドが頭をかく。
「マスター、大声で技の名前を叫ぶのはやめてください。恥ずかしい」
「うるせぇ、ほっとけ！」
　レオンのツッコミにレイドが顔を赤くして大声を出す。
「中途半端な魔術攻撃は逆にカウンターを喰らっちまうな」
　レイモンドが眉間にしわを寄せた。
「ならばこれしかあるまい。私が前に出る」
　アイゼンがアウリーに剣を向ける。
「俺も行きますよ。スキル一つ以外、使える魔術も持ってないんで」
　レオンがダガーナイフを両手に構える。
「剣術で魔術師に勝とうなど片腹痛いわっ」
　アウリーがステッキを振り下ろすと、槍の形状に変化した氷柱が無数に襲い掛かかった。
　レイドとレイモンドが剣で氷柱をたたき割る。
「行けっ、ソフィ」
「だから、その名で呼ぶなと言っておるだろうが！」
　アイゼンが一瞬で間合いを詰め、アウリーの脇腹を切り裂く。
　さらに、アウリーの後ろから音もたてずに現れたレオンが首を搔き切った。
「無駄なことを。本当にお前たちは滑稽だな」
　斬られたはずのアウリーは苦悶の表情一つ見せずに薄ら笑いを浮かべた。

　なんだよ、あれ？　避けた傷口が真黒くなって血の一滴も出ていない……。

　その異様な光景に、俺はゴクリと喉を鳴らしてつばを飲み込んだ。
「闇の上位魔術か？　お前の出来損ないの弟子も似たような魔術を使っていたぞ」
「血が流れるまで切り刻めばよい話です」
「レオン殿、しばし時間を稼いでもらえるか？」
「了解しました」
　答えると同時にレオンの姿が消え、再びアウリーの後ろをとった。ダガーナイフの攻撃を高速で繰り出し、アウリーの背中を切り裂いていく。アウリーは態勢を崩しながらもステッキを振り上げた。頭上から迫る氷柱の槍をかわしながら、レオンがアウリーの首を斬った。続けざまに正面から両腕を斬り飛ばし、後方へ飛びのく。

　う、嘘だろ……あいつホントに人間かよ。

　俺は自分の目を疑った。アウリーの切断された腕と頭が宙に浮いている。頭を切り離されたアウリーが気味の悪い笑みを浮かべた。やがて両腕と頭は体にくっつき、元通りの姿となった。
「フィフス・ブレイク！」
　後方で控えていたアイゼンが声を発すると同時に、空気が振動した。アイゼンの全身からオーラが立ち上る。
「準備は整ったみたいですね」
「ああ、次は私のターンだ」
　アイゼンがレオンの目を見て頷いた。