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第44話アイゼン団長にも苦手なものがあるらしい……
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上空から下を見渡す。
騎士団が野営している一帯は明かりが灯されているため確認することが出来るが、そこから離れると辺りは夜の闇に覆われてほとんど何も見えない。王都への通信を妨害してきた者は、この闇の中にひっそりと身を潜めているのだろうか?
それなら、昼間くらい明るくしてやればいい!
両手の平に火を灯す。2つの炎を徐々に膨らませ巨大な球体を形成し、北側と南側の上空に配置した。疑似太陽の完成だ。
「おーい、ユージ! 眩しすぎて周りが見えない。それに暑くて干からびそうだ!」
下からレイモンドの声が聞こえた。
「あっ、すみませーん」
炎の位置を再調整する。
下を見るとレイモンドが握りこぶしの親指を立てOKサインを送っていた。
昼間の明るさを再現したおかげで兵士たちの機動力も格段と上昇し、俺も辺り一帯をはっきり見渡すことができた。
騎士団の野営地周辺は開けた土地で、人が隠れられそうな場所は見当たらない。川の上流は丘陵地帯が広がっているがやはりここも見渡し良く、人が潜伏できるはずもない。
まさかゴブリンの根城の森に隠れてるなんてないよな?
通信を妨害する魔術ってどれくらいが射程距離なんだ?
そうだ、戻ってアイゼンに聞いて来よう。
「アイゼンさーん。通信妨害する魔術の射程距離ってどれくらいです?」
急下降して浮いたままアイゼンに質問する。
「まったく君は、どこまでデタラメなヤツなんだ。空を飛行し太陽を作り、今度は一体何を見せてくれるんだ?」
アイゼンが苦笑いしながらため息をつく。
「あははは。誉め言葉として受け取っておきます。上から見てきたんですけど、この辺一帯、人が隠れられる場所ってないんですよね。それで、射程距離が気になって」
「通信に干渉できるのは半径500メートルが限界だ」
アイゼンの言う通りなら妨害してきたヤツは一体どこに身を潜めているんだ?
透明化のスキルで隠れてるとか?
野営地の半径500メートル以内で人が隠れられる場所は……。
「わかった! ちょっとレイモンドさんのとこまで行ってきます!」
「お、おいっ。だから勝手に動くなと言っているだろ」
「あ、じゃあアイゼンさんも一緒に行きましょ」
アイゼンの手を取りゆっくりと上昇する。
「ひゃっ! ま、待ってくれ。た、高いところは苦手なんだ……」
「これならどうです? 安定感あるから怖くないですよ」
両手でアイゼンの体を抱き上げる。
「う、うむ。先ほどよりは平気だ。しかし、絶対に変なところは触るなよ」
アイゼンが顔を赤くしながら眉を吊り上げた。
「ほら、もう到着ですよ」
着地した俺はアイゼンを優しく降ろした。
お姫様抱っこで登場した騎士団長を前に、レイモンドと兵士たちが必死で笑いをこらえている。
「こ、コホン。状況は?」
「怪しい人影はまったく見当たりません」
わざとらしい咳払いをして尋ねるアイゼンに、レイモンドが報告する。
「すみません、レイモンドさん。今ここに兵士の皆さん全員を集めてもらえませんか?」
「それはどういうことだ?」
「俺の推測ですが、犯人は兵士に成りすまして元から野営地に潜伏してたんじゃないかと」
兵士たちの間でどよめきが起こる。
「つまり、この騒ぎに乗じて逃亡を図るつもりか」
アイゼンが冷静な声でつぶやく。
レイモンドが部下に指示を出しているところへ、一人の兵士が息を荒げて走って来た。
「は、ハリスが急に後ろから……小隊のみんな斬られて」
「落ち着け。方角は?」
パニックに陥っている兵士の肩を掴み、レイモンドが強い口調で尋ねる。
「ちょっと待て」
様子をジッと見ていたアイゼンが怯える兵士に歩み寄った。
騎士団が野営している一帯は明かりが灯されているため確認することが出来るが、そこから離れると辺りは夜の闇に覆われてほとんど何も見えない。王都への通信を妨害してきた者は、この闇の中にひっそりと身を潜めているのだろうか?
それなら、昼間くらい明るくしてやればいい!
両手の平に火を灯す。2つの炎を徐々に膨らませ巨大な球体を形成し、北側と南側の上空に配置した。疑似太陽の完成だ。
「おーい、ユージ! 眩しすぎて周りが見えない。それに暑くて干からびそうだ!」
下からレイモンドの声が聞こえた。
「あっ、すみませーん」
炎の位置を再調整する。
下を見るとレイモンドが握りこぶしの親指を立てOKサインを送っていた。
昼間の明るさを再現したおかげで兵士たちの機動力も格段と上昇し、俺も辺り一帯をはっきり見渡すことができた。
騎士団の野営地周辺は開けた土地で、人が隠れられそうな場所は見当たらない。川の上流は丘陵地帯が広がっているがやはりここも見渡し良く、人が潜伏できるはずもない。
まさかゴブリンの根城の森に隠れてるなんてないよな?
通信を妨害する魔術ってどれくらいが射程距離なんだ?
そうだ、戻ってアイゼンに聞いて来よう。
「アイゼンさーん。通信妨害する魔術の射程距離ってどれくらいです?」
急下降して浮いたままアイゼンに質問する。
「まったく君は、どこまでデタラメなヤツなんだ。空を飛行し太陽を作り、今度は一体何を見せてくれるんだ?」
アイゼンが苦笑いしながらため息をつく。
「あははは。誉め言葉として受け取っておきます。上から見てきたんですけど、この辺一帯、人が隠れられる場所ってないんですよね。それで、射程距離が気になって」
「通信に干渉できるのは半径500メートルが限界だ」
アイゼンの言う通りなら妨害してきたヤツは一体どこに身を潜めているんだ?
透明化のスキルで隠れてるとか?
野営地の半径500メートル以内で人が隠れられる場所は……。
「わかった! ちょっとレイモンドさんのとこまで行ってきます!」
「お、おいっ。だから勝手に動くなと言っているだろ」
「あ、じゃあアイゼンさんも一緒に行きましょ」
アイゼンの手を取りゆっくりと上昇する。
「ひゃっ! ま、待ってくれ。た、高いところは苦手なんだ……」
「これならどうです? 安定感あるから怖くないですよ」
両手でアイゼンの体を抱き上げる。
「う、うむ。先ほどよりは平気だ。しかし、絶対に変なところは触るなよ」
アイゼンが顔を赤くしながら眉を吊り上げた。
「ほら、もう到着ですよ」
着地した俺はアイゼンを優しく降ろした。
お姫様抱っこで登場した騎士団長を前に、レイモンドと兵士たちが必死で笑いをこらえている。
「こ、コホン。状況は?」
「怪しい人影はまったく見当たりません」
わざとらしい咳払いをして尋ねるアイゼンに、レイモンドが報告する。
「すみません、レイモンドさん。今ここに兵士の皆さん全員を集めてもらえませんか?」
「それはどういうことだ?」
「俺の推測ですが、犯人は兵士に成りすまして元から野営地に潜伏してたんじゃないかと」
兵士たちの間でどよめきが起こる。
「つまり、この騒ぎに乗じて逃亡を図るつもりか」
アイゼンが冷静な声でつぶやく。
レイモンドが部下に指示を出しているところへ、一人の兵士が息を荒げて走って来た。
「は、ハリスが急に後ろから……小隊のみんな斬られて」
「落ち着け。方角は?」
パニックに陥っている兵士の肩を掴み、レイモンドが強い口調で尋ねる。
「ちょっと待て」
様子をジッと見ていたアイゼンが怯える兵士に歩み寄った。
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