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第43話この異世界でおさわりは……

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「ユゥゥゥゥゥジッ! この変態!」
 恐ろしい顔をしたクレアがテントに駆け込んできた。
「ひいっ。ごめんなさい。命だけはお助けをっ」
 反射的にレイモンドの後ろに隠れる。
「またアイゼンに、やらしいことしようとしてたでしょ!」
「大丈夫だクレア。ユージも反省しているから許してやってくれ」
 アイゼンが止めに入り、なだめるようにクレアの肩を優しく叩く。

 この二人、いつの間に仲良くなったんだ?

「いくら記憶喪失だからって、いいことと悪いことの分別くらいはつくでしょっ」
 クレアが悪さをした子供を叱る母親のような口調で怒った。
 どうやらこの異世界でも女性の体に触れることはタブーらしい。
 フェラやパイズリ、中出しまでよくて、おさわり禁止とは不思議な価値観である。ただ単純に貞操観念が異様に低い世界なのだと勘違いしていたが、この異世界には明快な性的常識が存在しているのだろう。
「本当にすみませんでした。もう二度としません」
「そんなに胸が触りたかったなら、私に言いなさいよね」
「クレアのおっぱいかぁ……」
「今アイゼンの胸と見比べてため息ついたでしょっ!」
 クレアが俺の頬を力いっぱいつねった。
「イテテテッ」
 悲鳴を上げる俺を見て、アイゼンとレイモンドが声を上げて笑い出した。
「ねえ、アイゼン。ユージの疑いは晴れたのよね。王都に連行したりしないわよね?」
「その件だがこれから陛下に連絡を取り、ユージが事件に関与していないことを伝えるつもりだ。陛下にご納得いただければ、王都への連行は取り消しだ」
「よかった……」
 クレアが胸に手を当て、ため息をつく。
 国民的英雄であるアイゼンの話なら、きっと国王も耳を傾けてくれるはず。そもそも、モンスター襲撃事件や俺の調査指令を受けるほど、アイゼンは国王から信頼されているのだ。彼女の説得にも応じてくれるはずだ。
「私は連絡用水晶で陛下に報告をしてくる」
「あ、俺もあいさつしといた方がいいですか?」
「ユージが出ると余計にややこしくなる。おとなしくしていろ」
 アイゼンは釘をさすように言うと、テントをあとにした。
「まあ安心しろ。団長は陛下からの信頼も厚い」
 レイモンドが俺の背中をバンバン叩く。
「よかったわね。これでまた一緒にリランに帰れるね」
 クレアが嬉しそうに言った。

 俺が想定していた筋書きとはかなり違ったけど、早く疑いが晴れて本当に良かった。俺がモンスターを引き寄せているわけじゃないことも分かって一安心だ。すぐリランに帰ることも出来るけど、村のことも心配だから、予定通りもう少しキューべ村に滞在させてもらおう。

「レイモンド! 魔術妨害だっ。周囲に不審な者がいないか警戒に当たれ。指揮は任せる!」
 慌てた様子で戻ってきたアイゼンがレイモンドに命じる
「はっ!」
 レイモンドは穏やかな表情から一変し、アイゼンに敬礼すると厳しい顔でテントを出て行った。
「何か問題ですか?」
「王都への連絡を何者かに妨害された。そうとうな魔術の使い手、おそらくランクはSR以上」
 俺の質問にアイゼンが早口で答える。
「じゃあ、探すの手伝います。こういうの俺、けっこう向いてると思うんで」
「お、おいっ。ユージ、君はここで待機して――」
 アイゼンの制止を聞き終える前に、俺はテントから飛び出して空中に舞い上がった。
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