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第42話アイゼン騎士団長はやはり怒っている……
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ちょうど俺がこの異世界に転移してきた日、王都から最も近い都市べルンに突如一体のミノタウロスが出現したという。その個体は通常のミノタウロスより一回りも大きく、燃えるような紅の瞳をしていた。町の中心街で暴れ出したミノタウロスに対して、ぺルンを本拠地とする大手ギルド『ホワイトファング』を筆頭に、町中の冒険者たち総勢700名が討伐に当たった。ランクSRのメンバーを数多く有する『ホワイトファング』であったが、ミノタウロスの圧倒的な強さを前に冒険者たちはなすすべもなく敗北。他ギルドもほぼ壊滅状態にまで追い込まれる事態となった。
都市ぺルンの被害は甚大で、100棟以上の家屋が全壊、200棟以上が半壊した。一般市民の死傷者が70名、冒険者の死傷者が500名という被害の大きさに、王都をはじめ近隣都市は大きなショックを受けた。そして、再びミノタウロスが襲撃してくるのではないかという恐怖にかられた。
国王は事件調査をアイゼン騎士団長に命じ、現在に至ると言う。
「ミノタウロスの襲撃翌日に、今度はリランでガーゴイル襲撃事件が起こった。そこで伝説の勇者さまの登場だ」
なるほど、立て続けにモンスターの襲撃が起こっていたのか。都市ベルンと俺が転移してきた町リランは遠く離れてる。どうやら俺がモンスターを引き寄せているわけではなさそうだな。
「都合よく現れた俺が容疑者となったいきさつは分かりました」
俺が苦笑いしながら言うと「すまなかったな」とばつの悪そうな顔でレイモンド謝った。
「ところで、突然ミノタウロスが現れたって言いましたけど、詳しく教えてもらえますか?」
「ああ。ベルンの目撃者から聞いた話だと、空に突然黒い円形が見えて、そこからミノタウロスが出てきたそうだ。消える時もその黒い円の中へ吸い込まれていったらしい。おそらく転移魔術の類だろう」
空に出現した黒い円形……ガーゴイルのときと同じだ! 白髪の男もあそこから現れてガーゴイルと一緒に姿を消した。白髪の男がミノタウロスにベルンを襲わせたのか?
「目を覚ましたら報告しろと言ったはずだが?」
テントに入って来たアイゼンがレイモンドに注意する。
「申し訳ありません。ですが、私の進言した通りユージは逃げませんでしたよ」
「ふん、賭けはお前の勝ちだ。約束通り王都に帰ったら一杯おごるとしよう」
アイゼンが少し悔しそうに言うと、レイモンドが俺に向かってウインクした。
「えっと、なんの話です?」
「レイモンドはお前が逃げ出さないことに賭けたのだ。だから、あえて魔力封じの拘束具ではなくロープで手足を縛ったというわけさ」
「ん? そっか! 魔術でロープを斬れば逃げられたんだ!」
「ハハハハッ! これですよ。彼がモンスター襲撃事件の黒幕なわけないじゃないですか。プフフフフ」
レイモンドが涙を目に溜めて大笑いする。
アイゼンが額に手を当て、あきれ果てた様子で首を横にふる。
「君は一体なんなんだ? ズリキチな上に本物の大マヌケじゃないか! あれほどの実力があるというのに……」
「なんか色々すみません。事故とはいえ団長さんのおっぱいも触ってしまって……」
「なるほど、あれは事故とな。言い残すことはそれだけか?」
アイゼンが剣を俺の首に突きつける。
「ウソです! 我慢できなくなっておっぱい揉んじゃいました! ごめんなさい、すみません」
アイゼンはため息をつくと、手足を拘束したロープを切ってくれた。
「あ、ありがとうございます団長さん」
「許したわけではないからな」
アイゼンが豊満な胸の膨らみを両腕で隠すようにしながら俺をにらむ。
「本当にすみませんでした。反省してます」
「あと……団長でなくアイゼンでよい」
アイゼンが頬をうっすら赤くさせながら小さくつぶやいた。
都市ぺルンの被害は甚大で、100棟以上の家屋が全壊、200棟以上が半壊した。一般市民の死傷者が70名、冒険者の死傷者が500名という被害の大きさに、王都をはじめ近隣都市は大きなショックを受けた。そして、再びミノタウロスが襲撃してくるのではないかという恐怖にかられた。
国王は事件調査をアイゼン騎士団長に命じ、現在に至ると言う。
「ミノタウロスの襲撃翌日に、今度はリランでガーゴイル襲撃事件が起こった。そこで伝説の勇者さまの登場だ」
なるほど、立て続けにモンスターの襲撃が起こっていたのか。都市ベルンと俺が転移してきた町リランは遠く離れてる。どうやら俺がモンスターを引き寄せているわけではなさそうだな。
「都合よく現れた俺が容疑者となったいきさつは分かりました」
俺が苦笑いしながら言うと「すまなかったな」とばつの悪そうな顔でレイモンド謝った。
「ところで、突然ミノタウロスが現れたって言いましたけど、詳しく教えてもらえますか?」
「ああ。ベルンの目撃者から聞いた話だと、空に突然黒い円形が見えて、そこからミノタウロスが出てきたそうだ。消える時もその黒い円の中へ吸い込まれていったらしい。おそらく転移魔術の類だろう」
空に出現した黒い円形……ガーゴイルのときと同じだ! 白髪の男もあそこから現れてガーゴイルと一緒に姿を消した。白髪の男がミノタウロスにベルンを襲わせたのか?
「目を覚ましたら報告しろと言ったはずだが?」
テントに入って来たアイゼンがレイモンドに注意する。
「申し訳ありません。ですが、私の進言した通りユージは逃げませんでしたよ」
「ふん、賭けはお前の勝ちだ。約束通り王都に帰ったら一杯おごるとしよう」
アイゼンが少し悔しそうに言うと、レイモンドが俺に向かってウインクした。
「えっと、なんの話です?」
「レイモンドはお前が逃げ出さないことに賭けたのだ。だから、あえて魔力封じの拘束具ではなくロープで手足を縛ったというわけさ」
「ん? そっか! 魔術でロープを斬れば逃げられたんだ!」
「ハハハハッ! これですよ。彼がモンスター襲撃事件の黒幕なわけないじゃないですか。プフフフフ」
レイモンドが涙を目に溜めて大笑いする。
アイゼンが額に手を当て、あきれ果てた様子で首を横にふる。
「君は一体なんなんだ? ズリキチな上に本物の大マヌケじゃないか! あれほどの実力があるというのに……」
「なんか色々すみません。事故とはいえ団長さんのおっぱいも触ってしまって……」
「なるほど、あれは事故とな。言い残すことはそれだけか?」
アイゼンが剣を俺の首に突きつける。
「ウソです! 我慢できなくなっておっぱい揉んじゃいました! ごめんなさい、すみません」
アイゼンはため息をつくと、手足を拘束したロープを切ってくれた。
「あ、ありがとうございます団長さん」
「許したわけではないからな」
アイゼンが豊満な胸の膨らみを両腕で隠すようにしながら俺をにらむ。
「本当にすみませんでした。反省してます」
「あと……団長でなくアイゼンでよい」
アイゼンが頬をうっすら赤くさせながら小さくつぶやいた。
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