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第39話この異世界で騎士と戦う
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衝撃波で押されたことによって、俺とアイゼンの間合いはさらに遠くなっている。これは俺にとってメリットだ。アイゼンの口ぶりからして、今のスキルは覇気と呼ばれるものなのだろう。覇気はかなり強力な威力だが、おそらく攻撃範囲は狭く中距離攻撃の類と推測できる。アイゼンの剣と覇気の間合いにさえ入らなければ、遠距離攻撃でも十分な破壊力を有する俺に利があるはず。
今度はもう少し威力を上げて風の魔術を――。
俺が攻撃に移ろうと意識を切り替えた瞬間、アイゼンが音もたてずに真横を走り抜けていた。
突如、横腹が激痛に襲われる。
「イッテェェェッ」
横腹を両手で押さえてその場にしゃがみこむ。
俺、斬られたのか?
もしかして、死んじゃう?
恐怖で冷汗が滴り落ちてくる。横腹を押さえていた手を恐る恐る離してみる。両手には一滴の血もついておらず、横腹からも出血は見られない。もちろんブレザーも破れていない。
ふぅ……ガーゴイルのボディをイメージした防御度強化で助かった。斬られなかったとはいえ、このダメージはやっかい過ぎるだろ。しかも、あの移動速度じゃ間合いなんて関係ねぇし……。
「ユージ!」
「勇者様!」
クレアとマリアが駆け寄り、今にも泣きだしそうな目で俺の顔を覗き込む。
「ちょっと二人とも、出てきたら危ないって。俺は大丈夫だから」
「うそっ、傷口を見せて! 早く止血しないと」
クレアが俺のズボンからシャツの裾を引っ張り出し、横腹を確認する。
「えっ。傷が無い」
二人が目を大きくして驚く。
「クレアさんは俺が斬られて、死んでほしかったんじゃないの?」
「そ、それは。君ってたまに意地悪よね」
クレアがプイッと顔を横にそむけた。
「勇者様がご無事でよかった……」
ホッとしたのか、マリアが目に涙を浮かべながら微笑んだ。
マリアの頭をそっと撫でて立ち上がる。
「二人とも、俺がカッコよく勝利するとこ見といてくれよ」
「ユージのくせに、生意気」
「はい、勇者様」
クレアとマリアが俺のそばから離れた。
アイゼンが剣の刃と俺を見比べ首をかしげる。
「私は君を斬ったはずだが」
「残念だけど、アイゼンさんの力じゃ俺を斬れないですよ」
さっきまで痛かった横腹を大げさに叩いてアピールする。
「物理攻撃無効化スキルまで持っているとは、大したものだ」
いやいや。そんなスキル持ってねぇし。ガーゴイルをパクっただけだし……。
「もう十分に俺の実力を分かっていただけたのでは? 俺は正直アイゼン団長に勝てる気全くしません。ですが、あなたの攻撃が効かない以上、負ける気もしません。こんな不毛な戦い、そろそろ止めにしません?」
「ふっ……ふふふふ」
「!?」
想定外にもアイゼンは急に笑い始めた。
冷静で感情を表に出さないタイプと思っていただけに、声を出して笑う彼女がやけに不気味に感じた。
今度はもう少し威力を上げて風の魔術を――。
俺が攻撃に移ろうと意識を切り替えた瞬間、アイゼンが音もたてずに真横を走り抜けていた。
突如、横腹が激痛に襲われる。
「イッテェェェッ」
横腹を両手で押さえてその場にしゃがみこむ。
俺、斬られたのか?
もしかして、死んじゃう?
恐怖で冷汗が滴り落ちてくる。横腹を押さえていた手を恐る恐る離してみる。両手には一滴の血もついておらず、横腹からも出血は見られない。もちろんブレザーも破れていない。
ふぅ……ガーゴイルのボディをイメージした防御度強化で助かった。斬られなかったとはいえ、このダメージはやっかい過ぎるだろ。しかも、あの移動速度じゃ間合いなんて関係ねぇし……。
「ユージ!」
「勇者様!」
クレアとマリアが駆け寄り、今にも泣きだしそうな目で俺の顔を覗き込む。
「ちょっと二人とも、出てきたら危ないって。俺は大丈夫だから」
「うそっ、傷口を見せて! 早く止血しないと」
クレアが俺のズボンからシャツの裾を引っ張り出し、横腹を確認する。
「えっ。傷が無い」
二人が目を大きくして驚く。
「クレアさんは俺が斬られて、死んでほしかったんじゃないの?」
「そ、それは。君ってたまに意地悪よね」
クレアがプイッと顔を横にそむけた。
「勇者様がご無事でよかった……」
ホッとしたのか、マリアが目に涙を浮かべながら微笑んだ。
マリアの頭をそっと撫でて立ち上がる。
「二人とも、俺がカッコよく勝利するとこ見といてくれよ」
「ユージのくせに、生意気」
「はい、勇者様」
クレアとマリアが俺のそばから離れた。
アイゼンが剣の刃と俺を見比べ首をかしげる。
「私は君を斬ったはずだが」
「残念だけど、アイゼンさんの力じゃ俺を斬れないですよ」
さっきまで痛かった横腹を大げさに叩いてアピールする。
「物理攻撃無効化スキルまで持っているとは、大したものだ」
いやいや。そんなスキル持ってねぇし。ガーゴイルをパクっただけだし……。
「もう十分に俺の実力を分かっていただけたのでは? 俺は正直アイゼン団長に勝てる気全くしません。ですが、あなたの攻撃が効かない以上、負ける気もしません。こんな不毛な戦い、そろそろ止めにしません?」
「ふっ……ふふふふ」
「!?」
想定外にもアイゼンは急に笑い始めた。
冷静で感情を表に出さないタイプと思っていただけに、声を出して笑う彼女がやけに不気味に感じた。
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